どらこさんの
KISSの温度「G」Edition 5th

 これはある男の物語でもある
 神との融合によって 新しい”癒し”の力を 得たと 思い込んだ 男の話
 そして 彼は 恐怖を撒き散らした
 
 
 
 無意味な程 重厚な扉
 彼女・・・葛城ミサトは 扉の前で 立ちすくんだ
 背中に走った 一瞬の悪寒
 呼び出された時に見せた部下・・・マヤの脅えた瞳
 そして これから合わなければならない 男との面会
「 はぁぁぁ・・・」
 彼女のため息が 扉に当たって散った
 しかし いつまでも ここに居る訳にもいかない
 気を引き締めると 扉のブザーを鳴らした
「 ・・・誰だ?」
 インターホンから流れる 低い男の声
 (呼び出したのは、アンタでしょ!)
 そんな怒りの声を感じさせずに、彼女は答える
「 葛城3佐です。御命令により、出頭しました・・・」
 そして 扉は ゆっくりと 開いた
 
 廊下と比べると、部屋の中は 薄暗い
 (これじゃ 目に悪いわね・・・)
 そんな事 思いながら ミサトは 部屋の中に入る
 目が 暗がりに馴れてくると、部屋の中央に 大きなデスクが 設置されているのが 見えた
 そして そのデスクの上で 両手を組んでいる 男
 彼女の上司
 国連非公開組織 ネルフ 総司令 碇 ゲンドウ
 にやりっ と口を歪ませると こう 言った
「 ・・・御苦労 」
 
 ミサトは、デスクの前で 非の打ち所のない ”敬礼”を 披露した
 すっ と伸びた 背筋
 右手は きちんと 額に揃え
 目は しっか と ゲンドウの顔 15センチ上方に 当てた
 しかし 一瞬の目の動き
 それによって 彼女は 部屋の壁ぎわに ずらりっと 並んだ 男達の影を捕らえた
 黒服に サングラス
 たくましい体つきの 男達 ( な、なんで 諜報部の奴等が・・・)
 しかし、ミサトも 鍛えられた軍人
 瞳に 動揺を表す事は なかった
 ・・・内心は 欺瞞に満ちているが
 
 諜報部と作戦部
 影の部隊と 日の当たる職場
 その間には やはり 対立関係が 存在する
 作戦部長たる自分が 呼び出される
 そして 自分を囲むような 配置の 諜報部
 ( 一体、どういうつもりよ?)
 内心で 歯ぎしりしながらも、彼女は彫刻の様に 立ち尽くした
 ゲンドウの言葉を 待ちながら・・・
 
「 ・・・ときに、葛城くん?」
 ゲンドウの口が 開いたのは たっぷり 2分過ぎてからの事だった
 重い空間の中 やっと 見せた進展に、ミサトは 飛びついた
「 はい、何でしょう?」
「 ・・・情報によると、君のアルコール摂取量は 増えているようだな・・・」
 ギクッ♪
 ミサトの心臓は 高らかに 鳴った
 ( くっ・・・こいつ等 告げ口したなぁ〜〜 )
 殺気を込めた瞳で、壁際の男達を睨んだ
 男達の顔は、暗がりと サングラスよって 判別できない
 無言で 並んでいた
「 ふむ。 作戦部長である 君が、酩酊するのは ネルフにとって 好ましい事ではない・・・特に 何時 使徒が 出現するのか わからない 今では・・・」
 ゲンドウの冷たい声だけが 流れた
「 これは 何とかしなければならない・・・」
 そして ゲンドウは 立ち上がった
「 ・・・それで 私が 何とか しよう・・・」
 ニヤリッと 唇を 歪めながら・・・
 
「 最近、私は ある 不思議な力に 目覚めてね・・・」
 ゆっくりと ゲンドウが 近づいてくる
 すると 諜報部の男達も 動きはじめた
 ・・・ミサトに向かって
「 ・・・癒しの力だ。どんな事で 癒す 不思議な 力・・・神の技・・・」
 歩を進める ゲンドウ
 ミサトは 急いで 敬礼を解くと、ゲンドウを避けようとした
 そんな ミサトに向かって、一斉に襲い掛かる 影
「 な、何よ! アンタ達!」
 ミサトの怒号にも、男達は 無反応だった
 たちまち、数人がかりで 羽交い締めされる
「 ちっ・・・」
 ミサトの歯ぎしり
 相手も 軍人だ
 戦う為に 訓練された 男達
 せめて 武器が あれば 撃退できるのだが、司令室には 持ち込み厳禁
 と、なると 後は 数の論理
 ミサトの体は、完全に拘束された
 しかし、ここで 彼女は 奇妙な事に 気づいた
 間近で 見た サングラスの男達
 何事にも 動じない 彼等が・・・
 ( ・・・脅えている。こいつ等 脅えてるんだ・・・)
 黒いサングラスの奥の瞳が、恐怖に震えていた
 その視線の先を探ると・・・デスクの影に 横たわっていた ある物体に 気づく
 ・・・男
 痙攣しながら 口から 泡を吹いている 男
 その顔には 見覚えがある
 ( あ、あれは・・・諜報部長! なんで、アイツが・・・)
 そんな ミサトの視線に 気づいたゲンドウが ゆっくりと 微笑んだ
「 ・・・彼かね? 彼も 最近 体の調子がよくないそうだ・・・だから、私が 癒してやったのだよ・・・ふっふっふっ」
 不気味な笑い声が 低く 流れた
「 すると、途端に 元気になってね・・・皆で 取り押さえなければ ならなかったのだ。今は 大人しくされているがな・・・」
 ゲンドウの妖しい笑みを向けられた諜報部員は、すぐに 顔を背けた
 そのあごが 少し 震えている
「 い、癒しの力って?」
 ミサトの声も かすれがちだ
「 ふっ、すぐにわかるよ・・・すぐにな・・・」
 ゲンドウの笑みが 一層 大きくなった
 そして しっかりと ミサトの頭を つかむ
「 ひっ!?」
 ミサトの短い悲鳴
 彼女が そして 見たのは
 ・・・赤い サングラス
 
 ・・・黒い あごヒゲ
 
 ・・・そして 艶々した ピンクの唇 だった
 
「 !%&$¥&&&###@@@@@@@@@@@@@ 」
 声にならない 悲鳴が 響く
 唇を覆う 不気味な感触
 ちくちくする ヒゲ
 ドアップの ゲンドウの 顔
 いっそ 失神できたら 楽だったろう
 しかし・・・彼女は 鍛えられた 軍人であった
 敵の前で、意識を失うなど 許されない事である
 そんな 彼女には 救いである 闇は 中々 訪れない
 そして 地獄は 続く
 
 
 
 
 
 
「 ・・・うっうっうっ・・・止めます。 もう、酒なんか 一滴たりとも 飲みません・・・」
 鳴咽を堪えながら、涙混じりの 声の ミサト
 ゲンドウは、そんな ミサトを 満足そうに見下ろした
 
「 ふっ・・・問題ない・・・」
 
 
 ゲンドウの 勘違いの ”癒し” は まだまだ 続く・・・(爆)
 
 
 

seiriyu@e.jan.ne.jp

なおのコメント(^ー^)/

 うっうっうっ。い、いやすぎる。(泣)
 ミサトさんかわいそう。現実から逃避することも出来ないなんて……(汗)
 
 話数を重なるごとに、強力になってゆく「G]!
 彼の行き着く先は……はっ!
 ま、まさか!
 そ、それだけは、いやだ〜〜〜!(爆)


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