キスの温度 Valentine Edition












アイツの唇は甘い。

どのくらい甘いかって?


ふふふふふ・・
アタシだけの秘密、誰にも教えない。

知ってるのはアタシだけ・・・って言いたいけど、残念ながら例外がいるのよね。

それが、この女。


「シンちゃ〜ん、キスしよう、キス〜〜〜」


「ミ、ミサトさん、飲み過ぎですよ。
絡まないでください」


「え〜〜〜、あの時は大人のキスしてあげたじゃな〜い」


「あ、あれは非常事態時の緊急措置みたいなものです!
アスカのいる時に、その話はやめてください!」


「冷たいのね・・ミサト、哀しい」


何が”ミサト哀しい”よ、このバカ!

いい歳して可愛いこぶるんじゃないわよ、気持ち悪いったらありゃしないわ。
いいえ、それ以前に見苦しいわよ!


あの時の話は、アタシもシンジから聞いたわ。

全てが狂ってたあの時・・アタシもアタシだったし、シンジも誰かの助けが必要だった。
そんな時に傍にいたのが、たまたまミサトだっただけよ。

そりゃ、今となっては嫉妬がないと言えば嘘になるわ。

シンジのファーストキスはアタシだけど、ディープキスの初めてはミサトなんだから。
悔しいのは悔しいわよ。

だけど今は、シンジの全てを独占するのはこのアタシ・・

惣流 アスカ ラングレー、ただ一人なの!

シンジの心も体も・・
魂までもがアタシの物なの。

ディープキスの一回が何よ。


「人の家きて絡むなんて最低よ、ミサト。
加持さんの浮気が今更なんだってのよ。
そんなこと承知の上で結婚したんでしょ?」


「そうだけど、ここまで酷いとは思わなかったわ。
結婚すれば落ち着くと思ってたし」


加持さんの浮気が発覚して大喧嘩。
家の中滅茶苦茶にした挙げ句、アタシ達のスイートホームに転がり込んできたミサト。

どうせすぐに仲直りするのに、何で喧嘩するかな・・

少しはアタシ達を見習って欲しいわ。


「見通しの甘さはミサトの十八番だしね・・・
そんな事はいいけど、アタシ達の生活を邪魔するのは止めて欲しいわ。
はっきり言って迷惑なの」


「元私の家なんだし、いいじゃない。
たまには、昔みたいに三人で食事ってのも楽しいわよ」


よくないわよ!
今日が何の日だか知ってんの、アンタ!
恋人達の大イベント、バレンタインデーなのよ!」



「な〜にが恋人達よ、同棲してて恋人もないもんだわ。
初々しさの欠片もないじゃない」


「籍はまだ入ってないから恋人同士でいいの!
せっかくの甘い夜を・・」


「あんた達は毎日甘い夜でしょ?
今日くらい休んだら?」


「ミサト達みたいにマンネリ化したカップルじゃないのよ、アタシ達。
それに若いから・・」


どう?ミサト。
シンジは毎日のようにアタシを求めてくるのよ。
たまにしか相手にしてもらえないアンタとは違うの。

愛されてるんだから、アタシ。


「ふ、ふん・・発情した獣みたい」


「その程度の皮肉しか言えないわけ?
歳は取りたくないものね、ミサト」


「ア、アスカ、ちょっと言い過ぎだよ」


「いいのよ、シンジ。
酔っぱらいにはこのくらいで丁度良いわ」


ホントに優しいんだからコイツ。
このままじゃ、今夜ミサトを泊めるなんて言いかねないわね。

冗談じゃないわよ。
そんな事絶対に


プルルルルルル


電話だわ、誰かしら。
ディスプレイの表示はと・・加持さん?

ちゃんと迎えに来たじゃない。
何だかんだ言っても夫婦ね、


「はい」


<おう、アスカか。
今玄関前なんだが、そこにミサトいるだろ?>


「ええ、いますけど」


<迎えに来たんだが、声掛けづらくてな。
済まんが、アスカから俺が迎えに来たと言ってくれないか。
携帯も電源切ってあるみたいで、どうしようもないんだ>


「さて、どうしましょう・・この間の事もあるし」


アタシにコナかけた事、忘れてないわよ。
ホントに油断ならないんだから。
シンジったら一ヶ月くらい機嫌悪かったもん。

嫉妬してくれるのは嬉しいけど、何か疑われてるようで嫌だったわ。
アタシが浮気なんかするはずないのに。


<い、いや、あれは本当に済まなかった。俺もどうかしてたんだ。
シンジ君に殴られたのも仕方ない。
だが、あんな事は二度しないと誓う。
だから、頼むよ>


「そこまで言われれば仕方ないですね。
一つ貸しですよ」


<済まん、恩に着る>


今の内から、いろんな所に貸しを作っておくのもいいわ。
いずれ役に立つだろうから・・

で、問題はミサトね。


「ミサト、加持さんが迎えに来たわよ。今玄関前だって。
もう帰りなさい」


「いや!このくらいで許したら癖になるわ。
今夜はここに泊まる!」


ふざけんじゃないわよ、このうわばみ!ビア樽!年増!

バレンタインの甘い夜を邪魔するですって・・・
このアタシをなめないで欲しいわ。


「ねえ、シンちゃんもいいって言ってよ。
たまにはいいじゃな〜い」


「こ、今夜は勘弁して下さいよ。
それに、加持さんもわざわざ迎えに来てくれたんですから」


「あら、殴り倒した男を庇うの?
どういう事よ」


「あれとこれとは別です。
とにかく、今夜は帰って下さい・・我が家の平和のために」


良いこと言うわね、シンジ。
我が家の平和・・・か。

そうよ、ここはアタシとシンジの家。

元がミサトの家であろうと、今はアタシ達の家なの。
いずれ法的にも本当の家族になる、アタシ達の城。

ミサトはミサトの家に帰りなさい。
アンタの居場所はそこよ。


「あ〜あ、シンちゃんがそこまで言うんなら仕方ない。
帰るとしますか」


「仲直りのキスでもしてあげたら?
加持さん、喜ぶんじゃない?」


「はっ、いい歳してそんなこと出来るわけないでしょ。
お邪魔して悪かったわ、またね」


「もう、来なくていいわよ」


「ア、アスカ・・ミサトさんに悪いよ」


こんな女に気使うことないのに、シンジは・・
大体、二度とあんなとこには行きたくないとか言ってたのよ、ミサトは。

そこがアンタのいいとこでもあるんだけどさ。


と、出ていったわね。
どんな様子かな・・少し覗いてやろ。
インターホンのカメラは広角だったから、かなり見えるはずよね。



なんだ、うまくやってんじゃない。
ほっぺにキスしたりしてさ。

口では色々言ってるけど、一応愛してるわけね。


「のぞきは良くないな、アスカ」


「そういうシンジだって見てるじゃない」


「み、見えただけだよ」


「言い訳?
シンジらしくないわよ」


「僕だって言い訳の一つや二つ・・あっ!」


「ふふ、やっぱりシンジだわ」


「また僕を引っかけたな・・・そんな口は」


アンタの行動くらいお見通しよ。
これから何をするのかもね・・何年付き合ってると思ってるの?

でもアンタはそれでいいの。

アタシを・・・アタシだけをずっと見ていて。
そして、優しくキスして。

お願いよ、シンジ。


「やっぱり甘い・・シンジの唇」


「そう?アスカの方が甘いと思うけどな」


「じゃあ、確認のためにもう一回」


「一回でいいの?」


「お任せするわ」




この後何回キスしたかって?

ふふふふ・・
言ってもいいけど、腰抜かすわよアンタ達。

だから・・・


ヒ・ミ・ツ





 


管理人のコメント
 でらさんから、バレンタイン記念にKISSの温度を頂いてしまいました♪
 バレンタインのアイテム(チョコレート)は登場しませんが、何よりシンジくんとアスカさんの甘いキスを見せられるだけで、とろとろに溶けてしまいます。
 あうぅ。
 
 いや今回、何より引っかかった科白があります。
 >「見通しの甘さはミサトの十八番だしね・・・ 」
 元作戦本部長。
 見通しの甘さが十八番だったのですね。
 とほほ。
 
 なにはともあれ、バレンタイン記念、ありがとうございました♪
 
 この作品を読んでいただいたみなさま。
 のあなたの気持ちを、メールにしたためてみませんか?
 みなさまの感想こそ物書きの力の源です。

 でらさんのメールアドレスは dla@nifty.comです。

 さあ、じゃんじゃんメールを送ろう!

△INDEX