Kissの温度 M Edition












あの日、私の半生は終わりを告げた。


父の背を追い・・父を死に至らしめた存在に復讐を誓った葛城 ミサトという女は
あの日に死んだ。


心に傷を負った少年を戦場に送り続けた私。

同居する少女が心を壊していく過程をも止められなかった・・

いえ、出来たのにしなかったのだ私は。


私は彼らを家族と公言しながら、その実何もしていなかった。
リツコの言っていたように、私は家族ごっこで自己満足してただけ。


出会った時から意識し合っているのは明らかだった少年と少女・・シンジ君とアスカ。

ユニゾンの特訓を機に二人の仲は急速に接近。
そのまま何もなければ、自然に付き合っていたかもしれない。

でもいつからか二人は口を利かなくなり、私はそんな空気にいたたまれなくなって
家を空けるようになった。

仕事を口実にして。


あの時、私が手をさしのべていれば最悪の事態は避けられていたはず。


『もう終わった事よミサト。
それにあれがなければ、アタシとシンジは分かり合えないままだったわ・・多分』


『僕が成長するためには必要な事だったんですよ』



心優しい彼らは、私を責めることもせずこう言ってくれる。
自分の都合のみで接していた私を、あの子達は許してくれた。

そして、人並みの幸せを手に入れようとしている私を祝福までしてくれる。

人を恨む事ではなく許す事で、あの子達はあの地獄に決着をつけたの・・
私には出来なかった事。

どっちが大人か分からないわね。


本当にどっちが大人か・・・










「聞いてよ、アスカ。
加持のバカったら、結婚式を目前にして浮気しやがったのよ。
ドタキャンしてやろうかしら」


「それを言いたいが為に、
今夜この日に!アタシ達の家に押し掛けたの?アンタは!!


あの子達が高校へ進学したのを機に、私はあの家を出て加持の家へ転がり込んだ。

それは私のささやかなプレゼント。
償いとも言っていい。

同居する若いカップルに付き合うほど私は野暮じゃないし、夜の秘め事にも気を遣ってるのが
分かったから。
それに、事の翌朝は気まずい雰囲気が家の中を覆っていたし。


でもアスカったら機嫌悪いわね。
愚痴くらい聞いてくれたっていいじゃない。
シンジ君の帰りが遅いから気が立ってるのかしら・・

今日はシンジ君、戦略講習だったわよね確か。


「たまにはいいじゃない。
いつもラブしてるんだから、たまには女同士で愚痴の言い合いもいいもんよ」


「悪いけど、アタシはシンジに対して愚痴なんて持ち合わせてないの。
加持さんと違って浮気なんかしないし」


「で、で、で、でも何かない?
付き合ってもう長いんだしさ・・・そうだ!夜の不満とか」


大した自信じゃない。

いくら若いと言ってもシンジ君だって男・・自ずと限界があるわ。
た、確かに浮気はしないだろうけど、そっちの方はあまり強そうに見えないしシンジ君。
ずっとアスカがリードしてるんだと思うわ。

ん?何よアスカ、その不適な笑いは・・


「ふっ、知らないってのは罪ね。
夜の生活については確かに不満らしきものはあるわ・・
ただし!
アタシを休ませてくれないって不満だけどね♪」


「う、嘘よ・・あなた達同棲始めてもう二年近く経つのに、まだそんなになんて・・」


「シンジを普通の男と一緒にしないで。
それより、今日は週末なのよ・・明日は休みなの!
今夜は盛り上がろうと思ってたのに!!


「だからたまには・・」


シュッ


「ただいま〜」


「あっ、シンジだ!
おかえりシンジ〜〜〜!!」



は、早いわね、目で追えなかったわ。

あの様子からするとお帰りのキスくらいするわね・・
ようし、覗いてやる。

それで今日は帰るわ。
やっぱり私は邪魔みたいだし・・




シンジ君たら・・・すっかり男らしくなって。
アスカもしっかり抱きついちゃって・・


幸せそうなキスね。


あの頃が嘘のよう。
生き延びて良かったわ・・こんな光景が見られるんだもの。

ちょっと長いキスだけど・・




え?

待ちなさいシンジ君、どうしてそこでアスカの服を脱がそうとするの!
まだそんな時間じゃ・・いいえそんな事より玄関で一体何を・・

あなたも少しは抵抗しなさいアスカ!
恥って物を知らないの!?
私が見てるのよ!!



ま、まさかアスカ、私に当てつけて・・・






シンジ君に抱かれるアスカの顔が、ふと私の方を見て微笑んだのは錯覚だったのだろうか。






もう二度と来ないわ、こんなとこ!!






 

 

 


管理人のコメント
 でらさんから、ミサトさんバージョンを頂きました。
 ミサトさんのKISSはありませんが。(笑)
 
 ミサトさん、相変わらず成長してません。
 そこがほほえましくも、愛らしかったりして。
 しかし、アスカさんも大胆です。
 ミサトさんが見ている前で。
 はっ、もしかして、○○ぷれい!?
 
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