夏祭り






◆暑い◆



「あ〜、暑い、茹だる、やってらんねー。」
「さっきから何なのよ、新一。ちゃんとクーラー効いてるでしょ?」
「窓の外の青芝の眩しさ見てると、暑いんだよ。体感よりも視覚に訴えられる方が何かクる。」
「じゃあ見なきゃ良いじゃない。」
「目に付くんだよ。うわ、陽炎立ってるぜ。嫌になるよな、暑くて。」
「動きもしないで優雅に読書してるくせに、何が『暑い』よ。」
「・・・」
「何よ、そのモノ言いたげな目は。」
「蘭。暑いから脱げ。」
「は?」
「だから、体感よりも視覚に訴えられた方がクるから。暑さは。」
「訳分からない事言わないで!」
「オメーも鈍い女だな。涼しそうな格好してるの見れば涼しく感じるって話だよ。」
「外で焼かれて来なさい!馬鹿!」




◆かき氷◆



「ガキだよな〜。」
「煩いよ、快斗。良いでしょ、好きなんだから。」
「高校生にもなってペンギンのかき氷機抱えてんのはオメーくらいだ。」
「夏はかき氷なの!冷たくって美味しくって最高じゃない。」
「はぁ〜ヤダヤダ。これだからお子様は。」
「快斗には絶対あげないんだから!今日はアイス載せるスペシャルバージョンなんだから!」
「オメー最悪!邪道!アイスなんか載せるな!水っぽくなってマズイだろーが!」
「青子が食べるんだから関係ないでしょ!ダッツのリッチミルクで、シロップは練乳なの!」
「馬鹿野郎!シロップは昔からいちごかメロンと相場が決まってんだよ!そんな事も知らねーのか!」
「練乳ったら練乳なの!ついでに缶詰のフルーツ載せるんだから!」
「んだよそのかき氷は!変なモン載せるな!俺は認めねーぞ!断固阻止!」
「人のやる事にいちいち文句付けないでよ。そっちの方がよっぽど子供じみてるじゃない・・・」




◆縁側◆



「ちょっと平次、もっとあっち寄ってぇな。あたしが寝転ぶスペースないやん。」
「お前女の癖に何言うてんねん。お行儀良ぅ向こうの部屋で座っとけ。」
「嫌や〜!この縁側が一番気持ちええねん。風がさぁって通って風鈴ちりちり言うて。」
「あ、こら、何すんねん!勝手に人の隣寝転ぶな!しかも俺の脚踏みよるな!」
「邪魔や、邪魔邪魔!ただでさえでかい図体なんやから、ちょっとは遠慮しぃや。」
「お前こそ少しはスカート気にせんか!一応生まれた時は女やったんやろ?」
「今でも充分女です〜。探偵なのにそんな簡単な事も分からへんの?だっさい男やね。」
「ああ?ちょお待て聞き捨てならん!お前の何処が女やねん!がさつやし乱暴やし女らしいとこ一つもあらへンや無いか!」
「ほなこれでどうや!」
「待て阿呆!背中に張り付くな!足絡ますな!胸くっ付けんな!あっついやんけ!」
「頬も紅く染めんなんて。平次ってほんま可愛気ないんやね。」




◆水遣り◆



「植木鉢の土、からからだよ〜。朝あんなにたっぷり水遣ったのに〜。」
「今日の最高気温知ってるか?」
「言わないで!聞いたら気が滅入るから。」
「入道雲とか掴めそうだもんな。オメー帽子ぐらい被って来いよ。」
「直ぐ終るから面倒じゃない?ええっとじょうろじょうろ・・・ああ、もうホースから直接で良いや。」
「溢れさすなよ〜。あっちの庭木にも遣った方が良いんじゃねーの?」
「はぁい、了解でっす。」
「・・・オメー、何気に水遣るの下手だな。全然霧状になってねーぞ?」
「さっきから頑張ってるんだけ、あ、ヤバ、きゃぁ!!!」
「うわっ!」
「・・・ええっと。ごめんね、快斗。」
「・・・びしょ濡れじゃねーかよ。ああもう。直ぐに乾くから許してやる。」
「ついでに快斗。」
「んだよ。」
「薄い色のズボン穿いてる時はそーいう柄物のパンツ止めた方が良いんじゃない?透けるよ?」
「オ、オメーが水ぶっ掛けた所為だろーが!!!」




◆扇風機◆



「ねぇ、新一。昔扇風機で遊んだの覚えてる?」
「ああ、あれだろ?エイリアンの真似して喋るヤツ。」
「そうそう!馬鹿の一つ覚えみたいに、扇風機の前に座って『ワレワレハ〜』ってやってたよね〜。」
「俺んちには扇風機ねーからな。一人でやった覚えはねーけど、オメーは絶対一人でも家でやってただろ?」
「うん、やってた。髪の毛が全部後ろに飛ばされておでこが全開になるのとか、風呂敷とか首に巻いてマントにして遊んだり、まぁ色々。」
「今考えると何が楽しいんだかって事やってるよな〜。」
「まぁそうだね。そうだ、新一羊羹食べる?」
「後でな。蘭、ちょっとこっち来い。」
「ん?なぁに?」
「良いからココ。んでそっち向け。」
「何なのよ〜・・・って、きゃぁぁぁ!」
「お〜、絶景。今日はピンクか〜。」
「この推理オタク〜!!!!こっちに扇風機向けないでよ!」
「風、独占出来て涼しいだろ?」




◆花火◆



「おっそい!」
「しゃーないやん。呼ばれてもうたんやから。」
「今日八時からって前から約束してたやん!もう9時や!あたし見たい番組あったのに、平次がぐずぐずしとるから!」
「じゃ、終わりにしたらええんや。一人でやっとったんやろ、花火。俺も風呂入りたいしな。」
「何言うてんの!花火の醍醐味、線香花火やらずして花火に終わりはないんよ!」
「線香花火、ね〜。一人で先やるなら、普通こっちやろ?」
「平次何も分かってへんね。線香花火は一人じゃなくて二人でやるもんや。」
「威張るなや。訳分からんから。ほな、折角やるんやから喧嘩するか?」
「あたし負けへんよ?」
「何か賭けるか?和葉。俺も負ける気せんから。」
「あたしが勝ったらこの後映画付きおうて。ホラーやから一人で見るの怖いんや。」
「分かった分かった。俺が勝ったら風呂付き合えや。」
「アホか〜〜!!!!」








END




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