予定外の自習時間、新一はこっそりと持ち込んでいた小型のノートパソコンに携帯を繋いで気になっていた情報を収集していた。 幾つかのサイトを回って断片的な情報を寄せ集め、ざっと全体を見通してみる。 目を閉じて外部の音を遮断して待つこと暫し・・・ 「はん。成る程ね。」 にやりと得心のいった表情を見せると、バッテリーの切れ掛かっていたパソコンの電源を手早く落とし、携帯で高木刑事に連絡を取る。 2言3言で通話を切ると、うーんと大きく伸びをした。 巡らせた視線の先で蘭が机に突っ伏して寝ているのが目に入る。 規則正しく上下する背中と腕の中に伏せられた顔。 こちらにわずかに向けられているおかげで長い睫毛とすっと通った鼻梁、桜色のふっくらとした唇を見ることが出来た。 何もつけてねー筈なのに、なんであんなに綺麗なピンク色なんだろう?? 常々疑問に思っていたのだ。 口紅どころか色付きリップを付けている訳ではない筈なのに花びらのように淡いピンク色の唇。 濡れたように光っていつも視線が吸い寄せられてしまう。 ・・・おっかしいな。 蘭は少しだけ唇を開いてあどけない表情でぐっすり眠っている。 今はあどけなく感じる蘭も時々どきっとする程色っぽくなってきて、最近振り回されてばかりだ。 本人に自覚が無いのが相当イタイ・・・ 俺ってば本当に蘭にめろめろなんだなぁ・・・・ 今も眠る蘭から目が逸らせない。 次第に頭の中は蘭のことしか考えられなくなって来て、突如視界が真っ白になった。 「工藤。いい加減気が付けよ。」 目の前の白い紙に漸く気が付いて、新一はバツ悪げに視界を突如遮った紙を目の前に突き出した悪友を見上げた。 そして、少し驚く。 何時の間にかクラス中の人間が新一の方を注目していたのだ。 「何だよ?」 尋ねても帰ってくるのはくすくす笑いとにやにや笑いだけ。 隣の机のクラスメートが頬杖を突きながら教えてくれた。 「工藤君ったら蘭にずぅっと見惚れてたでしょ?クラス中でそんな工藤君をじっと見てたのにちっとも気が付かないんだもの。おかしいったらなかったわ。」 「いや、本当。みんなが次第に静かになって穴が空くほどお前のこと見てんのに全然気がつかねーんだよな。新一。お前って恥かしい奴。」 悪友の一人が混ぜっ返した段階で新一は漸く事の次第に気が付いた。 いつから見られてた・・・? さっぱり分からない。 頬に赤みがさす。 っつーか、この場から何とかして逃げ出してぇ! 穴があったら入りたいとはこの事だろう。 「工藤って毛利のこととなると本当一点集中型だな。周りの雑音も風景も入ってねーだろ?」 「その集中力で事件を解いちゃうのね!」 「いやぁ面白いもん見せてもらったわ。」 口々にご馳走様〜やら、いよ!奥さん思いの旦那!やら声を掛けながらクラスメートが再び自習へと戻って行く。 その場から動けず、一言も返せず、新一は固まったままそれらを見ていた。 明日から当分このネタでからかわれるだろう。 覚悟を決めて、新一は机に倒れ伏した。 |