緊急EARLYSUMMER企画 『改めて彼女に告白して下さい!』


case:黒羽快斗






はぁ? 何その企画。
つまんねー。
誰が考えてンの、そういうの。
才能無いんじゃねーの?
俺が別の企画考えてやろーか?
IQ200の天才様が。
・・・あ?
『今日はなにやら機嫌が悪い』って?
・・・悪かったなぁ!すーぐ態度に出ちまって!!
青子と喧嘩してんだよ。
今年に入って3桁越えてんだぜ?!
まったく有り得ねー数字だよ、あのアホ女め。
俺はまったく悪くねーよ。
これっぽっちも悪くねーな。
喧嘩の原因はアレだ。
ほら、夏服になったじゃん?
青子って意外にバカでさ、なぁんも考えてねーの。
年頃の女の子っていう感じで鏡に全身映して自分の格好をチェックとかも絶対してねーに違いねーと思うし。
・・・ほら、アレだ。
透けんだよ、色々。
普通考えて選ぶだろ?
なのにあのアホ子は目に付いたモンを手に取って着てっから、白い制服の生地にちらちらちらちら色とりどりのナンかが透けるんだよ。
しかも、周りの奇異の目に気付いていないっ!
鈍いにも程がある!
・・・あぁ?『奇異の目』は違うんじゃないかって?
あんな珍獣見る目は『奇異の目』で合ってんだろ・・・って、聞くなよ分かってるよ言わせるなよ!!!
はいはいはい、あいつを見る周りの目が『好奇の目』だって事分かってますよ、無意識に振り撒いちゃってるからな!あの鈍感お子様は!
何を振り撒いてるって、そりゃ・・・まぁ色々。
寄って来る男の数ったら、あの天下の名探偵の彼女の最強美少女に負けてねーっつーのが、面倒だぜ、くそっ。
一応彼氏って奴だし?
追い払う訳だよ、そういう有象無象を。
しっかしな〜。
追い付かない。
寄ってくる、追い払う、寄ってくる、蹴散らす、寄ってくる、威圧する、寄ってくる・・・
不毛なエンドレス繰り返す為に俺は居る訳じゃねーんだよ!
そりゃ喧嘩の一つもやりたくなるだろ。
人の苦労を小指の先ほども理解しねーんだぞ、あの女。
トンチンカンな切り返しできーきー言いやがるし。
しかもだな。
その後ろでまた青子の事を非っ常ーに暑苦しい野郎が超絶鬱陶しい視線で見てる訳だよ。
背後だからアホ子は気付いてねー訳。
イライラするだろ?
あんた分かるだろ、この俺の気持ちが。
面倒になったから一石二鳥を狙ったんだよ。
こう腰に手をやってな。
力任せに引っ張って、ブチュっと。
野郎の悲鳴が聞こえて俺は結構清々しい気分だったのに、アホ子が俺にビンタ張りやがって、そんな気分も台無し!
んで、喧嘩。
・・・もう良いだろ。
行った行った。
俺は忙しいの。
・・・はぁ?目的を達成するまではここを退かない?
あんた何時の時代の熱血野郎だよ。
第一あの何を言っても聞きません状態の怒れる大魔神に一体何を言えってんだよ。
甘い囁き?
無理だっつーの。
耳を両手で塞いで関係ないのに目まで塞いで、全身で拒否するから無ー理ーでーすー。
そりゃ俺だって何時までもこんなんじゃマズイとは思うけどさ。
普段なら一日経つとけろっとしてんだけど、今回何が腹に据えかねたのか朝になっても機嫌直ってねーし。
心当たりなんかねーよ。
あぁ?浮気したんじゃねーかって?
おい、オメー誰に向かって口利いてンだよ。
俺はあのじゃじゃ馬で手一杯で、他に目ぇ向けてる暇なんざこれっぽっちもねーよ! ・・・大声で主張する内容じゃなかったな。
クソ。
ともかく!
俺は今あんたらの企画に協力してる暇なんてねーの!
ん?この企画で仲直りすれば良いって?
あのな。
『改めて彼女に告白して下さい』なんていう企画でどうやって仲直りしろってんだよ。
第一。
・・・俺あいつにちゃんとした告白なんざした事ねーぞ。
切っ掛けだって、あんなんだったもんな〜。
・・・そこで待っても何も言わねーぞ。
どうしても聞きたきゃ青子の口から聞くんだな。
100%確信してるが、あいつが口を割る事はねーと思うけど。
そもそもこの企画で俺に何を言って欲しい訳?
俺、マジシャン志望だから中身の無い上っ面ばっかり綺麗で甘い言葉なんて言い慣れてる訳で、そんなのが聞きてーの?
へ?あっそ、そんなんでも良いのか。
「胸が無くても俺は大丈夫だ」とか?
「例え彼氏じゃなくて保父と間違われてもオメーと付き合いたい」とか?
「きゃんきゃんスピッツみたいな雄叫びが堪らない」とか、「そのモップ捌きに痺れました」とか。
いやいや、ちゃんと褒めてるぞ。
立派な告白だと思うけど。
は?
さっきから「好きだ」とか「愛してる」だとかの言葉が入ってないのが気に入らない?
だって相手青子だぜ。
笑っちゃうだろ、んな言葉。
笑わないから大丈夫だって?
何を根拠に言ってんだか。
はぁぁ?それが青子が怒ってる原因じゃないかって?
俺が何時までもガキ扱いするのが気に入らないから?
・・・ん〜。
真面目に考えてる。
だからちょっと待ってろって。
これ、誌面に載るんだろ?
顔見なくて済むからな。
いっちょ格好良いの考えてやるから、そこで暫し待ってろ。
はぁ、何で俺がこんな事・・・
よし。
ああもうこれで良い。
一回しか言わないからちゃんと書き留めろよって、そこ、待て!録音禁止!!
当ったり前だろー!音声なんか残せるかー!
まずあんた等両手全部上げろ。
何も持ってねーな。
俺の見える所に手を置いとけ。
俺の目が誤魔化せるとは努々思わない事だ。
録音はしないという誓いを破ったら・・・どうなるか分かってんだろ。
ふぅ。
メモ準備良いな。
ごほん。
告白だな、告白。
イメージ、イメージ・・・

「他の男に愛想振り撒いてねーで、俺にだけ笑って甘えてりゃ良いんだよ、バーカ。」

・・・?
!!!
げっ、あ、あ、青子ぉ?!
何でソコに居るんだよ!!!
あ、馬鹿、逃げるなっ!
っと、あっぶねー。
オメー弾丸みたいに逃げ出すから、ここで捕まえられなかったらまた全速力鬼ごっこになる所だぜ。
うっわ、オメー、顔真っ赤。
猿のケツみたいじゃん。
あ?せめて林檎か苺にしろって?
はっ、んな可愛、って、痛い痛い、痛ぇじゃんか!
抓るなって、分かったから、ギブギブっ!!
大人しくしとけって。
ちょっとこっちの用終らせてからたっぷり相手してやっから。
・・・さて、テメー等嵌めやがったな。
と、言いたい所だが、今は見ての通り取り込み中だから、後でゆっくり話し合おうぜ。
俺の許可なくして一文字たりとも誌面に載せる事は考えるなよ。
んじゃ、解散。
・・・俺達見世物じゃねーから、俺が笑顔の内に立ち去っておくのが利口だぜ?





end