闇は月に恋焦がれ、月は貴方を愛してる 言い訳+α





エンディングですぅ〜。

結構長くなってしまいましたがなんとか予定通りの終末を迎える事が出来ました。

結局何が言いたかったのか?と言うと、シリアスバージョンの『始まり』です。

快斗=キッドの真実を青子が知っているって言うのは他の話でも書いたんですが、そっちは青子が知っていると言う事を快斗が知っているって言うバージョンでした。

全体的にポップな感じの話だったし。

でも今回は青子が知っていると言う事を快斗は知らないというバージョンです。

やっぱりシリアスですね。このパターンだと。

青子ちゃんが辛い目にあってばっかりだったのでなかなか筆が進みませんでした。

何にせよこうして終わらせる事が出来て良かったです。

ここまでお付き合い下さり有り難うございました。



























さてさて今回とても嬉しい事がありました。

それはこの小説にちょこっと続きがあるという事・・・

私が書いたのではありません。

いつもお世話になっているポチさんが書いて下さいましたvv

しかも、上手い具合に青子ちゃん救済編となっております♪

気になる方は下へ下へとずずずいっとどうぞvv





























THANKS!ポチ様!













「だいっ嫌いなんて言って、ごめんなさい!」

「青子・・・?」

叫ぶように言って頭を下げた青子に、快斗は呆然として問い返した。

青子は、顔を上げずに続ける。

「青子、青子ねっ、快斗のこと大好きなの!だから快斗、青子を嫌いにならないで!

もうだいっ嫌いなんていわないから、絶対言わないから、青子から離れていかないで!」 言いながら、いつのまにか顔を上げた青子は、快斗をすがるような目で必死に見つめてくる。

快斗は、繰り返し訴えられる言葉に、ようやく青子がどうしてそう言っているのかを理解した。





(・・・バレた、のか・・・。)



快斗がキッドだと。





どうして気づいたのか、わからないけれど。

いや、それ以上に、どうして青子がこんなふうに言うのかわからないけれど。

涙を浮べて快斗を見上げてくる目の前の少女が、とにかく愛しくて。



「ば・・・・ろ・・」



言おうとした言葉が、のどに詰まって上手く出てきてくれなかった。

こくりと一度のどを鳴らして、快斗は言い直す。

「バーロ・・・なんでおれが、オメーを嫌いになるんだよ・・・。」

搾り出すような言葉は、低くて、感情が上手く乗せられない。

なんだか言葉では伝えられない想いばかりが先走って、快斗は突き動かされるように青子を抱きしめていた。

「嫌いになんて、なるわけねーじゃん。」

ぎゅうっと、快斗は知らず知らずのうちに、力いっぱい青子を抱きしめる。

「嫌いになんか、なれるわけねーじゃんか。・・・オメー、なんもわかってねーのな。」

ポツリ、ポツリと呟くような言葉。

感情を抑えているわけではないのに、快斗は息が苦しくなる。

気持ちばかりが溢れてしまって、なのにその出口が狭すぎて、上手く処理できない。

こんなにも荒れ狂う、どうしようもないほどの想いを、どうやって伝えればいいというのだろうか。

「青子・・・。」

必死で何度も抱きしめなおすことで、なんとか自分を落ち着けようとするのに。

あとからあとから湧き出す愛しさは、勢いを増すだけで、快斗は途方にくれそうだった。



それでも、伝えたいことがあるから。

快斗は、抱きしめる腕に再度力をこめ、そっと青子の髪に頬を埋める。

柔らかいその黒髪は、シャンプーのいい香りがした。

ずっと、いたずらではなく、こうして触れてみたかった髪。

口付けて、腕の中に閉じ込めてみたかった。





「好きだ・・・。」

掠れそうな声で、青子に告げる。

びくりと腕の中の体が震えて、快斗の背中に回された手に力が入った。



「好きだ、青子。・・・好きだよ・・・。」



繰り返す言葉は、けれど何度重ねてもすべての想いを伝えられるようなものじゃない。

それでも、少しでもわかってほしくて、快斗は囁きつづける。



「青子が好きだよ。すっげー好きだ。」

「・・・快斗ぉ・・・」



涙まじりの声で快斗の名前を呼んだ青子を、少し身体を離して見つめれば、青子は涙に濡れた頬をそのままにまっすぐに快斗を見上げていた。

右手の親指で青子の涙を掬う快斗に、青子はくしゃりと顔をゆがめる。

「・・・怒ってないの・・・?」

尋ねられて、快斗は今まで見せたことがない程穏やかに、ふわりした笑顔を青子に向けた。

「大っ嫌いって言っちゃったの、怒ってないの?」

青子は繰り返し尋ねる。

「青子・・・何回も・・っ・・」

言いながら涙を溢れさせた青子の頬に、快斗は目を細めて手を伸ばしながら逆に尋ね返した。

「青子こそ、どうして怒ってないんだ?」

伸ばした手で、包み込むように青子の頬に触れる。



キッドが快斗だったこと。

ずっと父親と青子を苦しめていたこと。

嘘をついて、だましていたこと。



責められるべきことなら、快斗には数え切れないほどあるのに。



「・・・怒っていいんだぜ?・・・おれのこと、嫌いになってあたりまえなんだ。」

もし、本当に嫌われてしまったら・・・なんて、考える勇気もないけど。

それでも、そうなっても快斗は何も言えない。

それだけのことをしている自覚は、嫌というほどある。

「青子は、許さなくてもいいんだよ。おれのこと、憎んでもいいんだ・・・。」

途端、パシン!と、軽い音を立てて快斗の頬が鳴った。



「あ・・おこ・・・?」

打たれた頬に手をやることもせず、呆然と青子を見返した快斗を、青子は真っ赤に濡れた目で睨んだ。

「快斗のバカ!!!青子、好きだって言ったじゃない!今、快斗が大好きだって言ったのに!離れないでって、嫌いにならないでって言ったのに!」

「あお・・」

「信じないの?青子の気持ち、ちゃんと信じてくれないの?快斗は・・・快斗は、青子が快斗を嫌いになって、離れちゃっても平気なの!?」

「青子っ」

快斗は夢中で青子を抱き寄せる。

「なんでそんなこと言うのよぉー!」

ぎゅっと苦しいほどに包み込まれた腕の中で、それでも青子は叫んでいた。

「ごめん・・・ごめん、青子。」

快斗は、強く腕に抱きしめたままの青子の、肩に、頭に、確かめるように強く触れる。

「ごめん!」



怒っていいなんていうセリフは、なんて自己中心的なものなんだろうと、腕の中で泣きじゃくる青子に思い知らされて。

青子を落ち着かせようとして、ちゃんと本心を伝えたくて、快斗は一生懸命青子の髪をなでる。

「ごめん。」



嫌いになってもいい、なんて。

そんなの平気なわけないのに。

・・・ならないよ、という否定を期待したような言葉。

ただの自己満足に吐き気がする。



(青子・・・。)



許してくれて、受け入れてくれて、うれしかった。

好きだって言ってくれてうれしかった。

どうすれば伝わるのだろうか。

傷つけてしまった青子に、どうすれば・・・。



「青子・・・。」

腕の中、壊れてしまいそうなくらい、柔らかい青子。

どんなにこの存在を抱きしめることを望んでいたのか。

どれほど愛しいと思っているのか。

快斗は、繰り返し髪をなでていた手を止めて、ぎゅっともう一度青子を抱きしめた。



「・・・平気じゃ、ねーよ。」

ぼそり、と。

さすがに恥かしくて、快斗は隠すように青子の髪に頬を埋めて続けた。

「・・おれさ・・・・・・青子がいねーと、ダメなんだ。・・・・・・ずっと昔から、そうだった・・・。」

「快斗・・・?」

快斗を見上げようと身体を起こしかける青子を、ぎゅっと両腕に閉じ込めて。

快斗は、ゆっくりとひとつ呼吸をしてから、これ以上ないほど真剣に告げた。





「青子のこと、・・・すっげー・・―――・・・愛してるよ――――――・・・。」





頬どころか、耳も、いや、指先まで、全身真っ赤になっているんじゃないかと思うほど照れくさいけれど。

でも、本心だから。

どうか、ちゃんと青子に伝わりますように、と願う。



「・・快斗・・・。」



自分の名前を呼んでくれるだけで、そこから幸せが溢れていく。

快斗が幸せになれる以上に、青子を幸せにしてやりたい。



「快斗・・・。」



ぎゅっと、青子の腕が快斗の背中を抱きしめ返してきて。

ほっとした快斗は、頬の熱さをなんとか冷まして、少しだけ身体を離すと青子を覗き込んだ。

まっすぐに快斗の目を見つめてくる、大きな目がいとおしい。

快斗は、ふっと深い笑みを浮べると、青子の両頬に手を添えて、ゆっくりと口付けた。

「・・ん・・」

口付けながら、頬に添えていた手は再びぎゅっと青子を抱きしめる。

ただ触れるだけの、けれども長いキスをして、快斗はようやく唇を離した。

うっとりと目を開けた青子は、快斗と視線が合うなり、ぼぼっと赤くなる。

快斗は、柔らかく目を細めてそれを見つめると、

「・・・ありがとな。」

心の底から、そう告げた。

目を見開いた青子の目が、きょろんと動いて、笑みに変わる。

「うん!」

元気よくうなずいてくれた幼馴染が、あまりにもかわいくて。

快斗がもう一度キスをしようと、その腕に力をこめると、青子は照れくさそうにしながらも、今度は、綺麗な睫毛を静かに伏せた―――。







† FIN †

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