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「青子っ!」
ご主人様が伸ばした腕を交わして青子ちゃんが身体を思いきり逸らす。
一歩下がった所に丁度有ったベッドに足を取られて青子ちゃんが後ろに倒れ込んだ。
おいらはその弾みですぽ〜んと投げ出される。
「あっ?!」
焦ったような青子ちゃんの声。
おいらは放り出された勢いのままご主人様の顔面に突っ込む。
勿論わざと。
突然の羽ばたきに気を取られたご主人様はそのままバランスを崩して青子ちゃんの上に折り重なるように倒れ込んだ。
「うわっ!」
「きゃん!」
やったあぁぁぁぁっっっ〜〜〜〜!!!
おいらに両手があったなら、きっと誰に憚る事無く万歳三唱をしていた事だろう。
ご主人様も青子ちゃんの顔も真っ赤だ。
二人で時が止まったみたいに互いの顔を見合わせて絶句している。
ご主人様の手は偶然とは言え青子ちゃんの形の良い二つの盛り上がりをタッチしている。
青子ちゃんはご主人様の細身とはいえしっかりと筋肉のついた体が上に乗っている所為でちょっと苦しそうだ。
「か・・かいとぉ・・・」
「あ・・・ごっ、ごめん!」
ギクシャクと起き上がろうとする所を駄目押しついでにおいらが勢いをつけて頭の上にどすんと飛び降りた。
反動で折角起き上がり掛けたご主人様の身体は再び青子ちゃんの華奢な身体の上にダイブ。
「きゃっ!」
「イテッ!」
再び二人は抱き合うようにベッドの中に。
おいらが出来ることはココまで。
後はご主人様の手腕に期待しなくっちゃね。
御膳立てをばっちり整えたんだから、頑張って貰わなくちゃ。
おいらはぱちんとウィンクをしてご主人様に合図した。
丁度おいらに怒ったような表情を向けたご主人様がおいらの企みに気が付いてあっという顔をする。
「『青子』・・・お前・・・」
「何・・・?」
「へ?青子・・・??・・・あっ!」
ご主人様はとうとう青子ちゃん本人の前で、おいらの事を名前で呼んだ。
今までひた隠しにしていたのに。
でも自分の名前が呼ばれたと思った青子ちゃんが返事をして、ご主人様は自分の失態に気が付いた様だった。
青子ちゃんは暫くご主人様とおいらの顔を振り子運動で見詰めていたけど、意外な部分で敏い彼女はおいらの名前=『青子』であるという事に気が付けたみたいだった。
固まったままのご主人様の下敷きのまま、おそるおそると言った感じで青子ちゃんがおいらに向かって名前を呼ぶ。
「・・・『青子』?」
「ぐるっぽぅ!!!!」
おいらは意気揚揚と返事をした。
ご主人様がもう駄目だって言う絶望的な表情を真っ赤な顔に上らせる。
「嘘ぉ・・・ハトさん、貴方『青子』っていうの?」
「ぐるっぽぅ!!」
「・・・快斗・・??」
覚悟を決めたのか、ご主人様が至近距離で青子ちゃんの大きな瞳を覗き込んだ。
その真剣な表情に青子ちゃんが戸惑いながら小さく名前を呼ぶ。
「快斗。」
おいらはご主人様の小さな声の告白を背中に聞きながら、そっとドアから退出した。
幾らなんでもで出歯亀はまずいだろう。
おいらは嬉しくてにやけてしまう顔を隠す事無くそのまま青子ちゃんの家の玄関で大人しくご主人様のお出でを待つことにした。
だからおいら、青子ちゃんの部屋で何があったのか、知らないんだ。
まぁ始終締まりの無いご主人様の顔を見れば大体想像つくけどな。
おいらは一段とご主人様に可愛がられるようになったし、なにより青子ちゃんが滅茶苦茶おいらのこと気に入ってくれて、それこそ始終暇さえあれば遊んでくれるようになった。
・・・時々ご主人様の刺すような痛い視線が気になるけど・・・
おいらは元気にやってるぜ!
また、機会があればご主人様と青子ちゃんの話、してやるからな!
それじゃ!
† END †
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