ここはWindows版『薔薇ノ木ニ薔薇ノ花咲ク』のパロディページです。
やおいがどういうものかご存じない方、18歳未満の方は、さようなら。

Windows版『薔薇ノ木ニ薔薇ノ花咲ク』は[サイク・ロゼ]様制作の18禁ゲームです。
18歳未満の方と高校在籍中の方は所持、購入、プレイしてはいけません。

GAME、設定資料、小説、雑誌、公式サイトのSSのネタばれがあります。
未プレイの方、先入観を持ちたくない方はご覧にならないでください。

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『桜』

あまり人混みは好きじゃない、が。
満開の花の下。リーベと歩くのも、なかなかおつなものじゃないか?
楽しいのは自分だけかもしれないけれど。

「金子」
「何だ?」

彼の方へ振り向く。

「じっとしていろ」
「お、おい」

いきなり抱き寄せられて、じっとしていろも何もあったもんじゃない。

「はなせ!」
「動くな」
「人前で何をするか」
「ほら」

手のなかに一枚の花びら。

「これがお前の頭に」
「このために俺を呼び止めたのか?」
「そうだ」

驚いた俺が馬鹿みたいじゃないか。

「お前はそういうヤツだよ」
「どうかしたのか?」

ひらひら舞うは花か心か。




『キネマ』

上半身だけ起こして、ぼうっと窓を見る。

「眠れないのか?」
背にぬくもり。
「耳元で話すなと言ったろう」
右腕が胸元に滑り込んでくる。
「俺が眠らないのと、この手が何の関係があるんだ?」
左腕が――
「おい、よさんか」

首筋から少しも降りてこない感触に苛立つ。
「痕は付けるな」
「見えなければいいだろう」
肩先に痛みを感じた。

「お前……しつこいぞ」
もっと早くこの腕から抜け出しておくのだった。
身をよじって抜け出そうとしても、逞しい腕はびくともしない。
逃げ出そうとするだけ、込められた力が強くなるだけだ。
気が付けば左足もすくわれてしまっている。
これではどうあがいても抜け出せない。

手を借りた行為のようで厭でたまらない。
玩具のように一方的に触れられているのはいやだ。
手も指も肌が覚えているけれど。
顔が見えないと不安で仕方がない。

抗う気力が失せた頃、ようやく腕から解放された。
これで眠ることが出来ると安堵したのもつかの間。
背が敷布に触れた代わりに足が宙に浮いた。
閉じかけた目で、キネマでも見るかのように。
ゆるゆると動くたびに。
かくりかくりと揺れる足を眺めていた。
「金子」
呼ばれた瞬間、感覚が戻ってくる。
熱い。
意識を手放すまでの時間を長く感じた。




『夏』

目立つ

ただでさえあの図体で邪魔くさいのに
真白なチュニックに金釦なんぞ光らせるから目立つじゃないか
メッチェンが頬を染め見つめても、あの堅物は気づきやしない

すまんねお嬢さん方
そいつと待ち合わせしているのは俺なんだ




『匂い袋』

「守り袋なんぞ持っちゃいないが、代わりにこれを渡しておこう」

懐から、とうに色あせ香りも失せた匂い袋を取り出す

「お前、まだこんな物を持っていたのか」
「こんな物とはなんだ。お前がよこしたんじゃないか」
「そうだな」

憲実が笑う

「あの時はなんやらお前が妙な事ばかりやらかして大変だった」
「うるさいだまれ」

次はいつ逢えるのだろう

「もう一度、俺によこせ」
「ああ、もう一度お前に渡そう」




『知らせ』

ずっと共にあるとそう信じていた
こんな別れ方は望んじゃいない
俺はあいつの姿をみちゃいない

何を信じろというのか
どう信じられるというのか
こんな紙切れ一枚で

元に戻せぬほど細かに裂いて捨てた




『気配』

声を聞きたい。お前の声を聞きたい。もう一度お前の声を聞きたい。
後ろに立っている気配がするのに、振り返ってもお前はいない。
顔を見ることができたなら、きっと薄く笑んでいるに違いないのに。
両肩に残された腕の感触は、どうしたら消し去ることができるのだろう。

肌にふれたい。お前の肌にふれたい。もう一度お前の肌にふれたい。
扉のひらく音がするたび、お前が帰ってきたのかと振り向く。
夜中にあしおとが聞こえるたび、お前が帰ってきたのかと顔を上げる。
名前をよんでくれなくてもいいから、そこにいてほしいと願う。

声を聞きたい。お前の声を聞きたい。もう一度お前の声を聞きたい。
後ろに立っている気配がするのに、振り返ってもお前はいない。
顔を見ることができたなら、薄く笑んでいるに違いない。
両肩に残った腕の感触を、消し去ってしまいたい。

肌にふれたい。お前の肌にふれたい。もう一度お前の肌にふれたい。
扉のひらく音がするたび、お前が帰ってきたと振り向き。
夜中にあしおとが聞こえるたび、お前が帰ってきたのだとよろこび。
名前をよんでくれなくてもいいから、そこにいてほしい。




『赤とんぼ』

便りが途絶えた


復員名簿に名前が無かった


街が焼け、住まいも移った。今や連絡を取る術もない。
あいつはこんな類の雑誌など読まぬだろうが、書き続ければ、いつか目にとまる事もあるやもしれぬ。
出版社を通してこちらに連絡を取る知恵が、あいつにあれば良いが―――


「すまん」
「……」
「遅くなった」
「遅すぎるっ」
「泣くな」
「誰が泣いてなどいるものかっ」
「すまん」
「……」
「約束していたアレなんだが、海に落としてしまったようでな」
「……」
「代わりの品を探すのに、えらく時間がかかってしまった」
「……」
「これで許してはもらえまいか」
「馬鹿」
「すまん」




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