ここはWindows版『薔薇ノ木ニ薔薇ノ花咲ク』のパロディページです。
やおいがどういうものかご存じない方、18歳未満の方は、さようなら。

Windows版『薔薇ノ木ニ薔薇ノ花咲ク』は[サイク・ロゼ]様制作の18禁ゲームです。
18歳未満の方と高校在籍中の方は所持、購入、プレイしてはいけません。

GAME、設定資料、小説、雑誌、公式サイトのSSのネタばれがあります。
未プレイの方、先入観を持ちたくない方はご覧にならないでください。

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『視線』

ほら

やっぱり

気のせいじゃない

視線の先には、いつもあの男。



『視線の位置』

気に食わない

「何を食べたらそんなに大きくなるんだ」
「寮の食事は皆同じだろう」

返ってくるセリフがこれまた気に入らない
初めて会ったときは俺より心持ち小さかったのに
この一年で馬鹿でかくなりおって
見上げる羽目になったじゃないか
これじゃ届きやしない

だから 少しかがめ



『愛想』

「お前はどうしてそう、いつも無愛想なんだ?」
「……」
聞き飽きたとでも言いたげな視線だけが返ってくる。

「メートヒェンも怯えていたぞ」
「……怯えて?」
メートヒェンの事となると反応が早いのが……なんというか。
無性に腹が立つものの、仕草に表してみせるのも癪に障るので、気にしないことにする。

「そのでかいなりで無言でそばにいられたら怖かろう」
「そうか」
俺はお前の考えている事くらい分かるがな。

「少しは愛想の良い顔をして見せたらどうだ」
「そう言われても」
両の手でのりりんの顔を包み、親指で口の端を上げてみせる。

「ほら、こうやって口元くらい笑って見せろ」
「お前な」
困った顔も結構いいと思うのは惚れた欲目だろうか。
このまま放してやることもないので、そのまま顔を寄せてみた。



『確認』

毎夜隣室を訪れる

受け入れてくれたのは夢ではないのか
名を呼んでくれたのは夢ではないのか
触れていないと不安でたまらない

気まぐれに受け入れてくれたのではないのか
気まぐれに名を呼んでくれたのではないのか
確認せずにはおられない



『背』

俺も背は高い方だが
あいつはもっと高い
丈も袖丈も結構違うものだな
肩幅も広い

「人の制服を羽織って何をしとるんだ?」
「あ、いや、その、お前の制服は大きいな」
「そうか?」
「あ、ああ」
「先輩から譲り受けた時は俺も大きいと思ったんだが、最近きつくて困る」
「それ以上伸びるな」
「また無理を言う」



『独語』

「だから前置詞がこっちで。何度言ったら分かるんだ!」
「文系教科は好かん」
「お前の頭には文法が入らないのか?その頭は飾りか?」
「俺だって覚えている文章が一つくらいはある」
「ほう。なんだ?言ってみろ」
「耳を貸せ」
「ああ」
「一度しか言わんからな」
「え?」
「Ich liebe dich.」



『木陰』

木陰で気持ちよさそうに眠っている。
よくこんな場所で寝られるものだ。
隣に腰を下ろしてみたが目覚める様子もない。

瞑想でもしているのかと思ったが。
どうやら昼寝をしているだけらしい。


ふと、重みを感じて目が覚めた。
膝の上にみっちーの寝顔。
はて、自分は外にいたような気がするが。
辺りを見回し、己の居場所を確認する。
無理に起こすこともないか。


「……?」
「起きたか」
気が付いたらのりりんに顔を覗き込まれていた。
「よく眠っていたな」
ずっと見られていたのか?冗談じゃない。
「首が痛いぞ」
「知らん」
「もっと早く起こせ!」

いつの間にやら傍らで眠りこけて。起きるまで待っていたらこれだ。
やれやれ。



『酒』

「この酒すこしもらっていいか?」
「ああ、かまわん」
背を向けたまま応える。

(待てよ……酒瓶なんかあったか?)
(先月買った分は皆で空けてしまったし)
(この間買った分はまだ倉庫に転がしてあるはずだ)

思いあたるは一つ。慌てて振り向く。
「待て、お前、何を飲んでいる?」
「葡萄酒か?甘いような渋いような」
「どれだけ飲んだ?」
「すまん、高い酒だったのか?」
「違う!そういう問題じゃない!」
「まだ一杯だけだが」
「飲んだのか……」
「?」
のりりん、今日はもう寝ろ!な、もう眠いだろう?お前は毎朝早いしな」
「?」

慌てた姿をいぶかしんで寄ってくるのりりん
みっちー危うし!



『問い』

あいつは俺のことをどう思っているのだろう。
一緒にいるのだから嫌われてはいないと思う。そう、思いたいが。
『好きだ』と言われたことがない。
俺の方は好きだの惚れただの言うはめになったのに。


「お前、俺のことをどう思っている?」
「大事に思っている」
「他には?」
「家族同様大切にしたい」
「他には?」
「共にいたい」
「他には?」
「……」
「もういいっ」
「何を怒っとるんだ?」


いきなり何を聞くのかと思えば。
自分なりに考えて答えてみたものの、気に入らなかったようだ。
難しい。



『制服』

「その制服は先輩から譲られたものと聞いた」
「ああ」
「どんな先輩だ?」
「少し風変わりな人だった」
「風変わり?」
「手合わせの度に『勝ったら一つ言うことをきいてくれ』と言うんだ」
「え?」
「負けたことは無かったんだが、あれは何だったんだろうな?」

あのストームの日からずっと見ていたというに。
教室ではずっと見ていたし、同室の秋田は安全パイだから安心していたのに。
俺の目の届かぬ道場でそんな事が!

ぐしゃり

「ノートを握りつぶしたりして、どうした?」
「お前、入学当時は可愛かったものな」
「は?」
「いや、無論今も可愛いぞ。俺のリーベ!」
「は?」



『痣』

「いつ、こんなところに痣を作ったんだ?」
「アザ?」
普通こんなところに痣は出来ないだろう。

「最近できたもののようだが」
「どこに?」
本人からは見えぬところに。

「ここと、ここに」
「……お前な」
呆れたような、少し咎めるような声。

「なんだ?」
「昨夜、俺に何をしたのか忘れたのか?」
……ああ。

「すまん。もしかして痛かったのか?」
「いや気持ちよかった……って、何を言わせる」
殴ることもないだろうに。



『稽古』

「もう嫌だ」
「まだ始めたばかりだろう」
「お前がこんなにしつこいとは思わなかったぞ」
「そうか?」
「だるい」
「体がなまっている証拠だ」
「もう動けん」
「たまには最後までつき合え」



『嬌声』

みっちー?」
「……っ」

辛そうな声を拾い動きを止めた。
見ると声を殺すためなのか口に指を含んでいる。

「色が変わるほど強く噛む事もあるまい」
「あ」
「指を離せ。噛みちぎるつもりか」
「……止める……な」

あの朝、男もあの様に声を上げるものかと驚いた。
あんな声を上げさせてみたいと思った。
まさか己が上げるはめになるとは。



『寝顔』

寝顔をながめつつ髪をなでる
肌がなめらかで
ひたと抱きしめていると気持ちがいい

「狭い!」

また蹴り出されてしまった



『闇』

「明かりを消せ!明るいのは嫌だ!」
「……」
「消せと言ったら消せ!」
「分かった。しばらく目をつむってくれないか」
「え?」
「これで良かろう」
「ちょっと待て。なんだこれは」
「目隠し」
「どうして俺が目隠しされねばならんのだっ」
「お前は暗い方が良くて、俺は明るい方がいい。理にかなっているだろう」



『伝説』

-のりりんみっちーが卒業した後-

新入生の会話

「おかしいと思わないか?」
「何が?」
「北寮のあの部屋だけストームが来ない」
「そういえばそうだな」
「どの先輩も避けて通る」
「妙だな?」

-先輩に聞いてみた-

「ああ、あの部屋か」
「何かあるんですか?」
「まぁ、もう避けて通る理由も無いのだが」
「もう?」
「世の中、知らなくていいこともある」



『誓い』

「あぅ」
いきなりくるりと指を返されて、みっともない声を出してしまった。

「何をする!」
殴りつけて抗議する。

「嫌か?」
ほかに聞きようがあるだろう!
嫌なら誰が指一本触れさせるものか!
この鈍感!間抜け!唐変木!

なんと怒鳴り返してやろうかと考えている間も、動きは止まることなく――

「……く」
後で絶対やり返してやる!

一人心に誓うみっちーであった。



『背中』

「戻った」
「ああ」
「今日も暑いな」
「この暑い中、よく稽古する気になれるな。毎日ご苦労なこった」
「毎日鍛錬せんと腕が鈍るのでな」
「それはそうと早く着替えろ、夕飯を食い損ねるぞ」
「おう」

のりりんの背を見て、ぎょっとした。

「お前その格好でここまで戻ってきたのか?」
「ああ」
「……」
「どうかしたのか?」

振り返ったのりりんに抱きついてみる。

「お、おい、みっちー?」
「あのな」
「まだ汗も拭き終わっとらん。服が汚れるぞ」
「ここにな」

未だにこんなことくらいで動揺するのか。面白い男だ。
両手で背中をぽんと軽く叩いて言葉を続ける。

「爪痕がくっきり3本ずつ付いている」
「なに!」

おや、今度は硬直してしまった。

「今頃食堂でちょっとした話題になっているかもな」



『背中’』

「戻った」
「ああ」
「今日も暑いな」
「この暑い中、よく稽古する気になれるな。毎日ご苦労なこった」
「毎日鍛錬せんと腕が鈍るのでな」
「それはそうと早く着替えろ、夕飯を食い損ねるぞ」
「おう」

のりりんの背を見て、ぎょっとした。

「上着をめくったその格好で、ここまで戻ってきたのか?」
「ああ」
「……」
「どうかしたのか」

のりりんの背中に触れてみる。

みっちー?」
「怒るなよ?」
「何を」
「あのな」
「まだ汗も拭き終わってないぞ」
「こことここと、ここにな」
「背中がどうかしたか」
「昨日俺が付けた痕がくっきりと」
「なに!」

「今頃食堂で話題になっているだろうな」
「……」



『朝』

まだ起きていないのか。

みっちー、起きろ」
「……うー」
「起きろ」
「まだ眠い」
「起きんかこら」
「分かった……今、起きる」

着替え終わって振り向いてみたら、まだ寝ている。
布団をめくり、額に接吻してみた。

「先に行くぞ」
「待て、今何をした?」

明日は濡れ手拭いでも額にのせてみるか。



『熱』

講義に集中出来ない。どうも気が乗らない。
熱弁を振るっている教授には悪いが、早く終わらぬものかな。

自分が席を立つより早く、のりりんが寄ってきた。
「お前、具合が悪くないか?」
「いいや?」
「今日は動きが鈍い」
「誰が鈍いだと?」
睨みつつ言葉を返す。
「熱があるんじゃないのか?」
コツと額を合わせられた。
「何をする!」
「顔が赤い。やはり熱があるのだろう」
馬鹿者っ。顔が赤いのは貴様のせいだ。
のりりんを払い席を立とうとしたとたん、視界が崩れた。
「だから言わんこっちゃない」


子供じゃあるまいし。
どうしてコイツに負ぶわれなくてはならんのか。
腹が立つので、捕まる腕に、ぎゅっと力をこめてやった。
「こら。首を絞めるな」
「もそっと静かに歩け、馬鹿」


着替えるのもおっくうだ。このまま寝てしまおうか。
ごろりと横になる。
「待て、そのまま寝るんじゃない」
「着替えさせてくれるのか?」
「甘えるな」
「面倒だ」
仰向きに寝転がったまま目を閉じる。ああ、もう、妙に体がだるい。本当に面倒だ。
「仕方のない奴だな」
悪かったな。何と言い返そうか考えてみるも、熱のせいかセリフが浮かんでこない。
ぐるぐると考え込んでいると急に胸元が軽くなった。
「何をする!」
「釦を外している」
「やめんか!」
「お前が着替えないから」
「分かった。着替える!着替えるからよせ!」
「いやだ」
肩を押さえ込まれ身動きがとれない間に釦を外されベルトまで抜き取られ。
「ほら、腕を通せ」
あっというまに寝間着に着替えさせられた。
先ほどよりも熱が上がったような気がする。


目を閉じても、のりりんがこちらを向いているのが分かる。
落ち着かない。
「医者を呼ぶか?」
「いや、いい」
「だが」
「呼ばなくていい」
「しかし」
「呼ぶな!」
「医者が苦手か?」
「違う」
「何故呼んではいかんのだ?」
「本当に鈍い奴だな、お前は」
上半身を起こし、寝間着の前をはだけてみせる。
「おい、熱があるのに何を」
「昨日お前がつけたろう?」
「……」
「これを他人に見せるような趣味は持ち合わせておらん」
「その、すまん」
気まずそうに視線を逸らすのりりんを見て、少し溜飲が下がった気がした。


「夕飯はどうする」
「いらん」
「何か口に入れないと体がもたんだろう」
「ああ……薬も飲まないと」
「薬?」
「右の引き出しの奥に入っているから取ってくれ」
言われたままに引き出しを開け薬を探す。
「この瓶でいいのか?」
「―――」
「おい、みっちー?」
寝てしまったようだ。このまましばらく寝かせておこう。


みっちーの様子が気になって目が覚めてしまった。
覗いてみると布団をはねのけ、寝間着の前がはだけていた。寝汗をかいて気持ちがわるいらしい。
寝間着を替えた方がよさそうだ。
肩を持ち上げ寝間着をずらす。カクと首がのけぞって白いのどが見える。
手を止め、唇で触れてみた。
「……ん」
そのまま舌を這わせ、昨日つけた痕をなぞってみる。
汗ばんだ肌が行為の直後のようで―――
熱い。
「あ……?」
「すまん、起こしたか」
乾いた布で躰を拭い、新しい寝間着に着替えさせた。

病人相手に何を。
「早く治れ」
寝顔を見ながらつぶやく。
少し、邪な思いも混じっているかもしれない。



『文句』

「暑い」
「狭い」
「暗い」
「重い」

みっちー、うるさい」



『嵐』

最近肌寒くなってきた。本を読むのは倉庫と決めていたが、そうも言ってはいられない。風邪をひいてはかなわん。あまりのりりんには知られたくないが、寮部屋で読むしかない。ヤツは朝稽古のため就寝ははやい。一度寝入ると翌朝まで目を覚まさないようだし、夜中に読めば気付かれないだろう。

明かりがなるべくのりりんの方へもれないよう、かさに布をかけた。待ちに待った水川抱月の新作。なるべく音をたてないように頁をめくりながらも夢中で読みすすめる。一気に読み終えたいが、楽しみを長引かせたい気持ちもある。今夜はこの辺りで閉じるとしよう。

「!」

音を立てないよう気を付けながら椅子を引き、立ち上がり振り向いたら目の前に人影。大声をあげそうになり、あわてて手で口元をおおう。
のりりん?起きていたのか?」
「……ああ」
「待て」
こちらの動揺をよそに、おおいかぶさるようにして唇を求められた。腰に当たる机の感触。逃げようがない。明かりを倒すわけにはいかないし、なにより机の上には読みかけの本がおいてある。のりりんといえばこちらの都合もおかまいなしにより深く舌を差し入れてくる。出来ることと言えば、机のヘリをつかむより他になかった。机に浅く腰掛けた状態で、ことは進んでいく。シャツは肩からすべり落ち、ひじのあたりにかろうじてとどまっている。首筋から胸元へ。与えられる刺激は徐々に下へと降りていく。のりりんの両肩をつかみよせ上がる感覚に耐える。だれかが扉を開けたら丸見えじゃないか。頭の片隅で妙に冷静に考えた。悪い予感はあたるもの。遠くでストームの雄叫びが聞こえる。
「離せ。人が来る」
「……」
「早くはなせ」
何を考えているのか。この馬鹿は俺を離す気配すらみせない。叫び声はだんだんと近づいてくる。
「放せ!はなさんか!」
肩をつかんだ指に力をこめ、引き剥がそうとしてもこの大男はびくともしない。
「……」
「なにをする!」
いきなり立ち上がったのりりんにぐいと頭を押さえられ肩口に顔をうずめた。
ばん!と扉が開かれる。数人が部屋に入りかけるも動きが止まった。
凍る空気。
「ほかを当たれ」
のりりんが短く言い放つ。
「……そうしよう」
状況が飲み込めず騒ぎ続ける後続の者を押しやりながら、先頭の数人が扉から出ていった。

あの日以来、部屋にストームが来たことはない。



『嵐の前』

みっちー
「嫌だ」

肩にかかる手を振りはらう

みっちー
「やめんか」

髪にふれようとする手をさける

みっちー
「今日はだめだ」

胸板を押し返す

みっちー
「そんな気分じゃない」

視線はさけられない

「……」
「うるさい」

見るな

「……」
「だまれ」

俺を見るな

「何も言っとらんが」
「うるさい」

口よりも視線がうるさいのだこの男は。

「毎晩来たのは誰だったか」
「……早く寝ろ」


寒い日にみっちーが鼻を赤くして帰ってきた。理由を聞いてもそっけない。抱きしめようとしたら、すげなく断られた。しぶしぶ床についたが気になって眠れない。明かりがついたので様子をうかがっていたら、みっちーは夢中になって本を読んでいる。



『後ろ』

「……」
「どうかしたのか?」
「どうして最近、その、後ろからばかりなんだ?」
「……お前、最中に顔を見ると嫌がるだろう」
「!」
「何を怒る?」



『疑問』

「一つ聞いていいか?」
「なんだ?」
「どうしていつも泣く?」

力を込め一発殴った。
俺に非はない。



『釦』

白い。

みっちー
「なんだ、のりりん
のりりん?」
「何か言いたいことがあるのなら言えよ」

白く細く。

のりりん?」
「今夜は暑いが、その、なんだ」
「ああ、今日は暑いな」
「釦はかけておけ」
「は?」
「外すのは第二釦までにしておけ」
「はぁ?何を言っとるんだおまえは」

白く細く。白い肌が見える。



『侵入』

せまいのはわかっている。
勝手なのもわかっている。
わかっている。
そんなことは百も承知。
自分を正当化できる理由は一つもない。
わかってはいるのだが。

寒いものは寒い。

目の前でぬくぬくと寝ているものがあるのに、どうして俺がいちから寝床を暖めねばならんのだ。
枕を小脇にかかえたまま突っ立っているのも馬鹿らしくなったので、さっさと邪魔することにした。
枕を放りこんでも目覚める気配はない。
起きてこないのをいいことにぐいぐいと奥へ押しやり、無理やり作ったすきまにもぐりこむ。
狭い。
けれど、あたたかい。



目が覚めて、いつもと違う視界に首をかしげる。
壁がこちら側にあるのはなぜだ?これはみっちーの寝台か?
たしか昨夜は自分の寝台で寝たはずだが。
いくら首をひねっても覚えがないものは覚えがない。
自分の寝台を占領している男は気持ちよさそうに眠り続けている。
起こして問うてみようかと思ったが、無理に起こすのも忍びない。
首をかしげながら稽古場へと向かった。

蹴り出した犯人は未だふとんの中。



『箴言』

みっちー

部屋へ戻ったとたん、のりりんに肩をつかまれ壁に押さえつけられた。

「なんだ?その気になったのか?」
「違う」
「では、なんの用だ」
「ボタンをかけろと前にも言わなかったか?」
「そういえば言われたような気もするな」

寮の中で少々着崩したところで、誰が気にするというのだ。
気のせいだろうか、のりりんの機嫌が悪いような――

「なっ」
「……」
「何をするか、貴様」

前触れもなく、いきなりシャツの隙間に手を入れてきた。

「手を出しやすい」
「は?」

何を言っているのか。

「手を出したのではなく、入れたのだろうが」
「あまり遅くに一人で出歩くな」
「……は?」

彼のいわんとするところは、ようやく分かったものの。
耳元で低く話すこの男に、何と言い返してやろう。

「お前が気にせずとも問題ない」
「……」
「俺には強くて怖い嫁がいるからな」



『無意味』

どんなに声を押し殺しても
熱い息が肩にかかるほど
体のふるえが伝わってくるほど
耳元でのどを鳴らす音が聞こえるほど
触れ合っていたら意味がないように思う



『髪』

わしゃわしゃ

「こら、何をする」
「髪型にも気を配ったらどうだ。伸ばしてみるのも面白いかもしれんぞ」
「面白くなくてかまわん」

少し伸ばしてなでつければ、男前が上がると思うのだが。

髪を伸ばしたのりりんを見てみっちーが動揺するのは、もう少し先の話。



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