
|
黒沢明監督の「八月の狂詩曲」。 最後の場面。雨と風の中。おばあさんと4人の子供たちと、大人達が必死になって走って いく。おばあさんの風が突然大きな風にあおられて、はっぱのように骨だけになって、そ れから、突然エンディング。 「わらべは見たり、野中のばら・・・・」 これは長崎原爆でご主人を亡くしたおばあさんと、戦争を知らない4人の孫たちの不思議 な夏休みの物語である。 原爆。遠い日の恐怖の記憶。現実と幻想が入り交じった現代の説話。 爆心地近くの小学校の、焼けただれた鉄のジャングルジム。その日に、村の貧しい礼拝堂 に集まって蝋燭の火を見つめる人々。雷に打たれて焼けただれからみあった二本の大木。 原爆で病に侵された人はその木の姿に自らの運命を見てしまいます。 現在の戦争ではまるでゲ−ムのように戦車や、兵士の姿がテレビで中継されますが、しか し、貧しい子供たちや、傷ついた子供達の姿こそが本当の戦争の悲惨さを伝えていくのか もしれません。 この映画には悲惨な戦争場面や被爆の場面は登場しません。そのかわり、残された小さな 遺物や幻想のような話、そして子供達の体験が静かにそのことを語りかけます。 いつまでも、永遠に。
(小さな旅/061 2003年8月)
|