高村光太郎詩集

高村光太郎作
岩波書店 1955
(岩波文庫 緑 47-1)

 高校の時の日本文学史の教科書で紹介されていた一篇の詩が印象に残っていて、それでこの詩集を買った。その詩は有名な「道程」だ。その最初の二行は誰もが目にしたことがあるだろう。
僕の前に道はない
僕の後ろに道は出来る
 小学生位の頃私はこの言葉が理解できず「道がまえじゃなくてうしろに…じゃあ、うしろにしかいけないの?なんか怖いー」なんて思ってて、まったく噴飯モノ。
 それからちゃんとした意味を知ったのがいつ頃だったかは記憶にないが、その時、人生に道は“ある”んじゃないっていう考えにとても驚いたのは覚えている。その驚きが強かったのは、その時の私にとって人生はある程度決まった道を進むものという考えがそれだけ強かったってことだろう。
 その後この詩の全体、といってもたった九行だが、それをはじめて読んだのは上にあげた文学史の教科書においてだった。
 多分に理想主義的なものだが、若い私の心を動かすのに十分な力強さの作品だ。

  道程

僕の前に道はない
僕の後ろに道は出来る
ああ、自然よ
父よ
僕を一人立ちにさせた広大な父よ
僕から目を離さないで守る事をせよ
常に父の気魄を僕に充たせよ
この遠い道程のため
この遠い道程のため

 私はとくべつ詩が好きというのではなく、この他に詩集を持っているわけでもないが、詩集の読み方に関して考えがある。
 一度にたくさん読まない、というのがそれである。一冊を一日で読みきるなんて、やってはいけない。一つ一つの作品の魅力が薄まってしまうからだ。
 気が向いたときに手に取って適当に開いたページで二三篇をゆっくり読む。もうちょっと読みたいかな、ってくらいでやめておく。
 そんな読み方をしてるから実は私はまだこの詩集にある作品全部は読んでない。

 上に一篇紹介したが、この詩集のほんとにおいしいところはここには載せない。よかったらいつか自分で手に取ってみてほしい。
 ちなみにこの詩集では“「道程」から”、“「道程」以降”、“「智恵子抄」から”と三つの部分にわけてそれぞれ二十六篇、四十七篇、二十篇を採録している。
10/15/1999

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