(更 新 日 7 月 2 9 日)
少 女 時 代 「 花 火 を 見 に 行 こ う ! 」
夜になったというのに、相変わらず空気が肌に張り付いて気持ちが悪い。
いつもならクーラーの効いた部屋で「極楽、極楽」なんて言っている時間帯にわたしは外にいた。
いまのわたしの強い見方は、駅前のスーパーでもらったスイミングスクールの宣伝うちわ。
それを一生懸命扇いで生ぬるい風を顔におくる。
けれど、次から次へと汗が滲み出る。
さっきトイレで直した化粧なんてもののみごとにこの汗ではがれてしまった。
直したい気持ちはやまやまだけど、きっと何回直しても同じことだろう。
だから無駄な努力をするのはあきらめる。
だいたい夜だし、化粧のはがれた顔をマジマジと見る奇特な奴もいないだろう。
そっ、アイツを除いては……。
アイツはいま、わたしをおいて、ビールの買い出しに近くのコンビニに行ってしまった。
すでに半時間近くが過ぎようとしている。
きっと、コンビニも混んでいるのだろう。
わたしたちが第一陣で買い出しに行ったときも相当混んでいたんだから。
わたしが座っているまわりもだいぶ人が増えてきた。
綺麗なシートの花が咲いている。
「ホレ」
聞き慣れた声と一緒に所望したビールの銘柄が書かれた缶ビールが目の前に出される。
「ありがとう」
お礼を言って受け取る。
少々温いがさすがに不満は言えない。冷やすのが追いつけないんだろう。
アイツは隣に腰を下ろすと違う銘柄の缶ビールを開ける。
「かんぱ〜い」
二人して温い缶ビールで乾杯する。
まだまだ本番はまだだけど……。
「お前と来るのは初めてだな」
ニカッとうれしそうな笑みを浮かべてアイツがわたしの化粧のはげた顔をのぞき込む。
「そうだね! うれしいよ!」
ちょっとほろ酔い加減なわたしはだいぶ適当なことを言ったような気がする。
「何が、うれしいの? 花火を見れること? 俺と見に来れたこと?」
アイツがすかさず意地悪な質問をしてくる。
「決まっているじゃない。一緒に見れることがうれしいの!」
「そりゃぁ、良かった」
アイツがうれしそうに笑う。
「好きだよ!」
酔っぱらいはやることが怖い。
あまりに人がいるというのに、わたしは何故か急にアイツの頬にキスがしたくなって行動に出てしまった。
ドーン!!
今年初めての打ち上げ花火があがる。
夜空に大きな花が咲く。
それをアイツと一緒に見れるわたしはいますごく幸せなのだろう。