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輸液の分布          輸液とNaCl、KCl          印刷


輸液の分布

輸液の分布は次のように考えるといいと思います。

  1. 人間の体は細胞膜によって細胞内、細胞外に分けられる。
  2. 細胞外は血管壁によって間質と血管内に分けられる。
  3. 水分は体重の約60%である。
  4. 細胞内液は体重の約40%、細胞外液は体重の約20%である。それで細胞内液と細胞外液の比は40:20 つまり2:1である。ただし3:2とも考 えられている。
  5. 間質液は体重の約15%、血管内液つまり血漿は体重の約5%である。それで間質液と血漿の比は15:5 つまり3:1である。ただし4:1とも考え られている。
  6. 自由水は細胞膜も血管壁も自由に通過することができる。
  7. ナトリウムイオンは細胞膜を自由に通過することはできないが、血管壁は自由に通過することができる。
  8. アルブミンは分子量が大きいため血管壁を自由に通過することができない。
  9. 自由水は浸透圧を一定にするために細胞内、間質、血管内を自由に移動する。つまり細胞内の浸透圧が高くなれば、自由水は間質、血管内から細胞内に移 動する。血管内の浸透圧が高くなれば、自由水は細胞内、間質から血管内に移動する。
  10. 生理食塩水を輸液した時、ナトリウムイオンは細胞内に自由に入ることができないが、血管壁は自由に移動できるために、細胞外に均等に分布する。ナト リウムイオンが均等に分布すると、自由水も浸透圧を一定にするために細胞外に均等に分布する。つまり100mLの生理食塩水を輸液した時、間質に100× 3/4=75mL、血管内に100×1/4=25mL分布する。
  11. 5%ブドウ糖液は、ブドウ糖はすみやかにインシュリンで代謝されるため、自由水を投与したのと同じことになる。自由水は細胞膜も血管壁も自由に通過 することができるため、自由水は細胞内、間質、血管内に均等に分布する。つまり100mLの5%ブドウ糖液を投与した時、細胞内に100×40/60= 67mL、間質に100×15/60=25mL、血管内に100×5/60=8mL分布する。
  12. 生理食塩水はナトリウムイオンは154mEqで、ソリタT3は35mEqで、ソルデム1号は90mEqである。ソリタT3は生理食塩水を 35/154、5%ブドウ糖液を(154−35)/154つまり119/154で混ぜたものに近い。ソルデム1号は生理食塩水を90/154、5%ブドウ 糖液を(154−90)/154つまり64/154で混ぜたものに近い。
  13. ソリタT3を輸液した時、生理食塩水の部分は生理食塩水と同じように分布し、自由水の部分は自由水と同じように分布する。つまり100mLのソリタ T3を輸液した時、生理食塩水は100×35/154=23mL、自由水は100×119/154=77mLである。生理食塩水は間質に23×3/4= 17mL、血管内に23×1/4=6mL分布する。自由水は細胞内に77×40/60=51mL、間質に77×15/60=19mL、血管内に77× 5/60=7mL分布する。だから細胞内は51mL、間質は17+19=36mL、血管内に6+7=13mL分布する。
  14. ソルデム1号を輸液した時、生理食塩水の部分は生理食塩水と同じように分布し、自由水の部分は自由水と同じように分布する。つまり100mLのソル デム1号を輸液した時、生理食塩水は100×90/154=58mL、自由水は100×64/154=42mLである。生理食塩水は間質に58×3/4= 44mL、血管内に58×1/4=14mL分布する。自由水は細胞内に42×40/60=28mL、間質に42×15/60=11mL、血管内に42× 5/60=3mL分布する。だから細胞内は28mL、間質は44+11=55mL、血管内に14+3=17mL分布する。
  15. The ICU Book では生理食塩水1000mLを輸液した時、間質が825mLで血管内が275mLになるとしている。間質と血管内の比は825:275=3:1 で今までの計算と同じだが、825+275=1100mLで入れた量よりも100mL増えている。生理食塩水はナトリウムイオン、クロールイオンともに 154mEqだから、浸透圧が154+154=308mEq つまり308mOsm/Lとなり、血清浸透圧の289mOsm/Lより高いため、細胞内から 自由水が100mL移動すると考えているためである。ただし生理食塩水はナトリウムイオン、クロールイオンへの解離率が100%でないため、実際の浸透圧 は血清と同じになるという文献もある。
  16. アルブミンを投与した時、アルブミンは血管壁を自由に通過できないため、ナトリムイオンよりも血管内にとどまるものが多く、浸透圧を一定にするため 自由水が血管内にとどまりやすくなる。The ICU Book によると5%アルブミンを1000mL投与した時、血管内に500mL、間質に500mLとなるとしている。 別のデータでは5%アルブミンを投与した時、血管内液は投与量の0.7〜1.3倍になり、25%アルブミンを投与した時、血管内液は投与量の4〜5倍になるとする。



輸液とNaCl、KCl

 NaClの分子量は23+35.5=58.5gである。NaClは1価だから分子量と1当量は同じになるから、1当量も58.5gである。1÷58.5≒0.0171だから、NaCl 1gは約0.017当量である。つまりNaCl 1gは約17ミリ当量(mEq)である。 生理食塩水はNaClが154mEqである。これは生理食塩水1LにNaClが154mEq入っているということである。だから500mLの生理食塩水を1本点滴すると77mEq入る。77÷17.1≒4.5だから500mLの生理食塩水を1本点滴すると4.5gの塩が入る。これは心不全や腹水や高血圧で塩分制限をしている人には無視できない量である。 また生理食塩水100mLにはNaClが15.4mEq入っている。15.4÷17.1=0.9だから100mLの生理食塩水には0.9gの塩が入っている。0.9g/100mL=0.9g/100g=0.009だから0.9%の濃度である。
 KClの分子量は39.1+35.5=74.6gである。KClは1価だから分子量と1当量は同じになるから、1当量も74.6gである。1÷74.6≒0.01340だから、KCl 1gは約0.0134当量である。つまりKCl 1gは約13.4ミリ当量(mEq)である。輸液のKN3BはKが20mEqである。これはKN3B 1LにKClが20mEq入っているということである。だから500mLのKN3Bを1本点滴すると10mEq入る。10÷13.4≒0.75 だから、500mLのKN3Bを1本点滴すると0.75gのKClが入る。

2011年6月5日更新

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