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漢方薬目次    五十音順で並べています
かっこんとう 葛根湯 しゃくやくかんぞうとう 芍薬甘草湯 しょうせいりゅうとう 小青竜湯
にじゅつとう 二朮湯 ばくもんどうとう 麦門冬湯 はんげこうぼくとう 半夏厚朴湯
はんげしゃしんとう 半夏瀉心湯 ほちゅうえっきとう 補中益気湯 まおうぶしさいしんとう 麻黄附子細辛湯
りょうけいじゅつかんとう 苓桂朮甘湯


アルファベットはピンインを示します。アルファベットの後ろの数字は四声を示しています。

葛根湯  (ge2gen1tang1)
 構成生薬は桂枝、生姜、麻黄、葛根、甘草、大棗、芍薬 (gui4zhi1、sheng1jiang1、ma2huang2、ge2gen1、gan1cao3、da4zao3、shao2yao4)の7生薬である。
 傷寒論の「太陽病.項背強几几.無汗惡風.葛根湯主之.」 (tai4yang2bing4.xiang4bei4jiang4ji3ji3.wu2han4e4feng1.ge2gen1tang1zhu3zhi1.) (太陽病、項背強ばり几几、汗無く悪風するは葛根湯之を主る。)である。金匱要略には「太陽病.無汗而小便反少.氣上衝胸.口噤不得語.欲作剛けい.葛根湯主之.」 (tai4yang2bing4.wu2han4er2xiao3bian4fan3shao3.qi4shang4chong1xiong1.kou3jin4bu4dei3yu3.yu4zuo4gang1--.ge2gen1tang1zhu3zhi1.) (太陽病、汗無く小便反って少なく、気上りて胸を衝き、口噤し語るを得ず、剛けいを作さんと欲す、葛根湯之を主る。)とあり、剛けいを「太陽病.發熱無汗.反惡寒者.名曰剛けい」 (yang2bing4.fa1re4wu2han4.fan3e4han2zhe3.ming2yue1gang1--) (太陽病、発熱し汗無く、反って悪寒する者は名づけて剛けいと曰う。)と説明する。
 風邪に葛根湯と言われ、風邪に多用される方剤である。発熱、悪寒という風邪症状が出た時に、脈が浮で緊、汗がない、肩や首がこる、が見られる時に用いる。頭痛、身体痛、腰痛、関節痛が見られれば麻黄湯である。傷寒論には麻黄湯の脈を明言していないが、葛根湯と同じ浮、緊とされる。脈が緩で汗があれば桂枝湯になる。脈が微細、沈ならば麻黄附子細辛湯になる。風邪をひくと患者は来院する前に風邪薬を飲むことが多いためか、脈が浮になることは案外少ないように思う。

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芍薬甘草湯  (shao2yao4gan1cao3tang1)
 構成生薬は甘草、芍薬 (gan1cao3、shao2yao4) の2生薬である。
 出典は傷寒論の「傷寒脉浮.自汗出.小便數.心煩.微惡寒.脚攣急.反與桂枝.欲攻其表.此誤也.得之便厥.咽中乾.煩躁吐逆者.作甘草乾薑湯與之.以復其陽.若厥愈足温者.更作芍藥甘草湯與之.其脚即伸.」 (shang1han2mai4fu2.zi4han4chu1.xiao3bian4shu4.xin1fan2.wei1e4han2.jiao3luan2ji2.fan3yu3gui4zhi1.yu4gong1qi2biao3.ci3wu4ye3.dei3zhi1bian4jue2.ye4zhong1qian2.fan2zao4tu4ni4zhe3.zuo4gan1cao3qian2jiang1tang1yu3zhi1.yi3fu4qi2yang2.ruo4jue2yu4zu2wen1zhe3.geng1zuo4shao2yao4gan1cao3tang1yu3zhi1.qi2jiao3ji2shen1.) (傷寒、脉浮、自ずから汗出ず、小便数にして、心煩し、微かに悪寒し、脚攣急す、反って桂枝を与え、其の表を攻めんと欲す、此れ誤まりなり、之を得て便ち厥し、咽中乾き、煩躁吐逆の者は甘草乾姜湯を作りて之に与う、以て其の陽に復す、若し厥愈え、足温なる者は更に芍薬甘草湯を作りて之に与う、其の脚即ち伸ぶ。)である。
 筋肉けいれんに常用される方剤であり、こむら返り、腹痛、胆石や尿路結石による痛みなどに使われる。芍藥、甘草ともに急迫、攣急を治す薬効がある。 
 腹痛があると腹直筋が緊張することが多いだろうから、腹皮攣急が腹証となる。しかし脉診、腹診にかかわらず、筋肉けいれんを目標として投与できる薬剤である。2生薬からできている方剤であり、効果発現は早い。
 小児の夜泣きに効果があるとも言われる。

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小青竜湯  (xiao3qing1long2tang1)
 構成生薬は桂枝、細辛、麻黄、乾姜、半夏、甘草、芍薬、五味子 (gui4zhi1、xi4xin1、ma2huang2、qian2jiang1、ban4xia4、gan1cao3、shao2yao4、wu3wei4zi3) の8生薬である。
 出典は傷寒論の「傷寒表不解、心下有水気、乾嘔発熱而咳、或渇、或利、或噎、或小便不利小腹満、或喘者、小青竜湯主之。」 (shang1han2biao3bu4jie3、xin1xia4you3shui3qi4、qian2ou3fa1re4er2ke2、huo4ke3、huo4li4、huo4ye1、huo4xiao3bian4bu4li4xiao3fu4man3、huo4chuan3zhe3、xiao3qing1long2tang1zhu3zhi1。) (傷寒、表解せず、心下水気有り、乾嘔発熱して咳する、或いは渇し、或いは利し、或いは噎し、或いは小便利せず小腹満し、或いは喘する者は小青竜湯之を主る。)である。
 心下の水気がもともとの病態でそれからいろんな病態が出てきている。心下の水気が去ろうとすれば渇するし、水が胃内にあると下痢することもある。水が胸中にあるとむせぶし、小便が出なければ下腹がはるだろう。心下の水のため気が上逆すれば喘することになる。心下の水気だから腹診では胃部振水音が見られるはずである。実際腹証奇覧ではそう記述している。しかし胃部振水音のないものもあると山田光胤氏は言う。
 臨床上アレルギー性鼻炎や風邪の鼻汁によく用いられる。

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二朮湯  (er4zhu2tang1)
 構成生薬は羌活、生姜、黄ゴン、伏苓、蒼朮、威霊仙、陳皮、香附子、半夏、天南星、甘草、白朮 (qiang1huo2、sheng1jiang1、huang2-?-、fu2ling2、cang1zhu2、wei1ling2xian1、chen2pi2、xiang1fu4zi3、ban4xia4、tian1nan2xing1、gan1cao3、bai2zhu2) の12生薬である。
 出典は万病回春の「痰飲双臂痛むを治す。又手臂痛むを治す。是れ上焦の湿痰、経絡の中に横行して痛みを作す。」である。ここで臂は前腕、手臂は上腕のことを言う。上焦とは胸膈より上である。胸膈より上に痰飲があるために上腕、前腕が痛むものに用いるというのである。
 従来より腹診に特徴的な所見は指摘されていない。漢方常用処方解説は脈は滑、舌は白膩苔とする。あまり漢方的所見を気にせずに、五十肩に病名投与できる方剤である。また実際かなり効果がある。西洋薬の非ステロイド性消炎鎮痛薬が無効な場合にも有効性を発すると言われている。(洋漢統合処方からみた漢方製剤保険治療マニュアル)
 肩こり、五十肩、肩の痛みには他に桂枝加朮附湯、葛根湯、大柴胡湯、小柴胡湯、加味逍遙散、半夏瀉心湯、延年半夏湯、呉茱萸湯、治肩背拘急方、十味?散が用いられると言われている。(症例による漢方治療の実際)ただ五十肩の場合は二朮湯が一番効果がある印象がある。

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麦門冬湯  (mai4men2dong1tang1)
 構成生薬は粳米、半夏、甘草、大棗、人参、麦門冬 (jing1mi3、ban4xia4、gan1cao3、da4zao3、ren2can1、mai4men2dong1) の6生薬である。
 出典は金匱要略の「大逆上気、咽喉不利、止逆下気者、麦門冬主之。」 (da4ni4shang4qi4、ye4hou2bu4li4、zhi3ni4xia4qi4zhe3、mai4men2dong1zhu3zhi1。) (大逆上気し、咽喉は不利す、逆を止め、気を下す者は麦門冬之を主る。)である。気が上に上り、喉が潤っていない状態に用いる。気道に潤いがないから咳が起こる。痰はないか、あってもからんだ痰になると言われる。舌は紅舌で乾燥する。腹診は心下痞があげられる。脈は沈、細、微である。
 肘後方には「肺痿、咳唾、涎沫止まず、喉乾きて渇するを治す。」とあり、肺痿(今の結核であろう)にも使った。
 浅田宗伯は「大逆上気ノ意味アル処ヘ用ユレバ大イニ功アル故、此ノ四字簡古ニテ深旨アリト見ユ。」とする。大逆上気を目標に気管支喘息にも用いることができる。
 咳には清肺湯もよく用いられる。痰の多い咳に清肺湯がよいと言われる。麦門冬湯の有効な咳は昼間の咳で、夜に寝床で暖まってくると起こる咳は滋陰降火湯がよいと言われる。咽頭粘膜を見て、乾燥しているなら滋陰降火湯のほうがよいと言われる。

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半夏厚朴湯  (ban4xia4hou4pu3tang1)
 構成生薬は紫蘇、生姜、伏苓、厚朴、半夏 (zi3su1、sheng1jiang1、fu2ling2、hou4pu3、ban4xia4) の5生薬である。
 金匱要略の「婦人咽中如有炙臠.半夏厚朴湯主之.」 (fu4ren2ye4zhong1ru2you3zhi4luan2.ban4xia4hou4pu3tang1zhu3zhi1.) (婦人、咽中炙臠有るが如し、半夏厚朴湯之を主る。)が出典である。気が欝滞して病気となるものを治す理気剤の代表である。金匱要略にはわざわざ婦人と限定している。浅田宗伯は、婦人が気うつが多く、婦人に用いることが多くなるため婦人と書かれているだけであって男性にも用いることができるとする。
 千金方には「治婦人胸滿、心下堅、咽中帖帖、如有灸肉臠、吐之不出、咽之不下。」 (zhi4fu4ren2xiong1man3、xin1xia4jian1、ye4zhong1tie1tie1、ru2you3jiu3rou4luan2、tu4zhi1bu4chu1、ye4zhi1bu4xia4。) (婦人、胸満、心下堅、咽中帖帖として灸肉臠有るが如し、之を吐して出でず、之を咽みて下らず。)とあり、金匱要略の記述に「胸滿」と「心下堅」が加わっている。腹診ではこの心下堅が重要とされ、小島明は聖剤発蘊で「中カン痞満と云うが字眼なり。咽中の炙臠ばかりを的にして此の方を用いる故功を奏さざる者多し。」と言っている。腹診には臍上悸、心下部振水音をあげるものもある。

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半夏瀉心湯  (ban4xia4xie4xin1tang1)
 構成生薬は黄ゴン、黄連、乾姜、半夏、甘草、大棗、人参 (huang2-?-、huang2lian2、qian2jiang1、ban4xia4、gan1cao3、da4zao3、ren2can1) の7生薬である。
 出典は傷寒論の次の一文である。「傷寒五六日.嘔而發熱者.柴胡湯證具.而以他藥下之.柴胡證仍在者.復與柴胡湯.此雖已下之不爲逆.必蒸蒸而振.却發熱汗出而解.若心下滿而硬痛者.此爲結胸也.大陷胸湯主之.但滿而不痛者.此爲痞.柴胡不中與之.屬半夏瀉心湯.」 (shang1han2wu3liu4ri4.ou3er2fa1re4zhe3.chai2hu2tang1zheng4ju4.er2yi3ta1yao4xia4zhi1.chai2hu2zheng4reng2zai4zhe3.fu4yu3chai2hu2tang1.ci3sui1yi3xia4zhi1bu4wei2ni4.bi4zheng1zheng1er2zhen4.que4fa1re4han4chu1er2jie3.ruo4xin1xia4man3er2ying4tong4zhe3.ci3wei2jie2xiong1ye3.da4xian4xiong1tang1zhu3zhi1.dan4man3er2bu4tong4zhe3.ci3wei2pi3.chai2hu2bu4zhong1yu3zhi1.shu3ban4xia4xie4xin1tang1.) (傷寒五六日、嘔して発熱するは、柴胡湯の証具わる、而るに他薬以て之を下す、柴胡の証なお在るは、復た柴胡湯を与う、此已に之を下すと雖も逆と爲さず、必ず蒸蒸として振るい、却って発熱し、汗出でて解す、若し心下満し硬痛するは、此結胸と爲すなり、大陥胸湯之を主る、但だ満して痛まざるは此痞と爲す、柴胡之に与うるに中らず、半夏瀉心湯に属す。)
 また金匱要略には、「嘔而腸鳴.心下痞者.半夏瀉心湯主之.」 (ou3er2chang2ming2.xin1xia4pi3zhe3.ban4xia4xie4xin1tang1zhu3zhi1.) (嘔して腸鳴り、心下痞なる者は半夏瀉心湯之を主る。)とある。
 勿誤薬室方函口訣には「脾労の証、心下痞し、腹中雷鳴し、痛なくして下痢し、利後不快に反って痞脹する者は、半夏瀉心湯之を主る。」とある。

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補中益気湯  (bu3zhong1yi4qi4tang1)
 構成生薬は柴胡、升麻、乾姜、陳皮、黄耆、甘草、大棗、人参、白朮、当帰 (chai2hu2、sheng1ma2、qian2jiang1、chen2pi2、huang2qi2、gan1cao3、da4zao3、ren2can1、bai2zhu2、dang1gui1) の10生薬である。
 李東垣の内外傷弁惑論、脾胃論が出典である。
 津田玄仙は療治経験筆記の中で次のような証を補中益気湯の目標としている。
 1 手足倦怠
 2 言語軽微
 3 眼勢無力
 4 口中に白沫を生ず
 5 食味を失う
 6 熱物を好む
 7 臍周囲の動悸
 8 脈散大で力なし
この中で手足倦怠を最も肝要とする。手足倦怠の1つがあれば補中益気湯でよいとさえ言われる。
 勿誤薬室方函口訣は「畢竟小柴胡湯の虚候を帯びる者に持ちゆべし」と言う。虚候を上に挙げた8項目とする。
 倦怠感には十全大補湯、小建中湯なども用いる。十全大補湯は気虚+血虚の方剤であり、補中益気湯は気虚の方剤である。だから十全大補湯は顔色不良、皮膚枯燥のような血虚の証がある時によい。小建中湯は腹診で腹皮攣急がある時に用いる。補中益気湯に麦門冬、五味子を加えたものを味麦益気湯と言う。補中益気湯証の一等虚なるものに用い、乾咳によく用いる。エキス剤にないため、補中益気湯と麦門冬湯を合法で用いることがある。五味子がなく、粳米、半夏が加わるが結構効くようである。 

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麻黄附子細辛湯  (ma2huang2fu4zi3xi4xin1tang1)
 構成生薬は細辛、麻黄、附子 (xi4xin1、ma2huang2、fu4zi3) である。
 出典は傷寒論の「少陰病.始得之.反發熱.脉沈者.麻黄細辛附子湯主之.」 (shao3yin1bing4.shi4dei3zhi1.fan3fa1re4.mai4chen2zhe3.ma2huang2xi4xin1fu4zi3tang1zhu3zhi1.) (少陰病始めて之を得て、反って発熱し、脉沈なる者は麻黄細辛附子湯之を主る。)である。少陰病を傷寒論は「少陰之爲病.脉微細.但欲寐也.」 (shao3yin1zhi1wei2bing4.mai4wei1xi4.dan4yu4mei4ye3.) (少陰の病たる、脉微細、但だ寐と欲っするなり。)と説明する。脈が微細で、ただ寝ているような元氣のない人が発熱すると麻黄附子細辛湯の証だと言うのである。腹証は特別なものはないが、腹力はやや軟と言われる。
 風邪症状があると、風邪薬を飲んだり、病院で処方されあまっていた解熱剤を飲んだりして、来院する人が多い。すると若い人でも脈が浮でないことがある。こういう時は桂枝湯、葛根湯、麻黄湯よりも、麻黄附子細辛湯を用いるべきだろう。

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苓桂朮甘湯  (ling2gui4zhu2gan1tang1)
 構成生薬は桂枝、伏苓、甘草、白朮 (gui4zhi1、fu2ling2、gan1cao3、bai2zhu2)である。
 出典は傷寒論と金匱要略である。傷寒論には、「傷寒若吐若下後.心下逆滿.氣上衝胸.起則頭眩.脉沈緊.發汗則動經.身爲振振搖者.茯苓桂枝白朮甘草湯主之.」 (shang1han2ruo4tu4ruo4xia4hou4.xin1xia4ni4man3.qi4shang4chong1xiong1.qi3ze2tou2xuan4.mai4chen2jin3.fa1han4ze2dong4jing1.shen1wei2zhen4zhen4yao2zhe3.fu2ling2gui4zhi1bai2zhu2gan1cao3tang1zhu3zhi1.) (傷寒、若しくは吐し、若しくは下して後、心下逆満して、気上りて胸に衝き、起てば則ち頭眩し、脉沈緊なり。汗を発すれば則ち経を動かし、身振振として搖を爲すは茯苓桂枝白朮甘草湯之を主る。)とある。金匱要略には、「心下有痰飮.胸脇支滿.目眩.苓桂朮甘湯主之.」 (xin1xia4you3tan2yin3.xiong1xie4zhi1man3.mu4xuan4.ling2gui4zhu2gan1tang1zhu3zhi1.) (心下痰飲有り、胸脇支満し、目眩するは、苓桂朮甘湯之を主る。)「夫短氣有微飮.當從小便去之.苓桂朮甘湯主之.」(夫れ、短気して微飲有るは、当に小便従り之を去る。苓桂朮甘湯之を主る。)とある。この方剤は支飲を去ることを目的とすると言われる。(勿誤薬室方函口訣)
 腹診は臍上悸があげられる。腹証奇覧は「何病を問わず、心下悸し、小便不利を準拠として此の方を用うべし。」と言う。金匱要略には「胸脇支滿」と明記してあるのに、胸脇苦満が腹診にあげられることがない。私はなぜあげられないのだろうかと思っている。「心下有痰飮.胸脇支滿.目眩.苓桂朮甘湯主之.」を文字通り読めば、心下振水音、胸脇苦満、めまいの3つがそろえば苓桂朮甘湯を使うということになる。
 脈診は沈緊が重んぜられる。浅田宗伯は「脈が沈緊になければ効なき者なり。」と言う。
 めまいに用いるものは、半夏白朮天麻湯、眞武湯、苓姜朮甘湯、炙甘草湯、五苓散、当帰芍薬散などがある。半夏白朮天麻湯、眞武湯、苓姜朮甘湯は冷えを伴うのが普通である。炙甘草湯は動悸があるのが普通であり、五苓散は口渇、尿量減少があるのが普通である。当帰芍薬散は血虚、水毒の証があるのが普通である。