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尿道留置カテーテル     Indwelling Urinary Catheter


 病院の入院患者が尿道に管を入れられているのを見ることがある。これを尿道留置カテーテルと言う。膀胱留置カテーテルとも言う。ただし膀胱留置カテーテルは腹壁に穴をあけて膀胱に管を通す膀胱瘻も含まれる。
 人間の尿は腎臓でつくられ、腎臓から膀胱に送られ、膀胱にたまり、膀胱から尿道を通って体外に排出される。腎臓から膀胱に尿を送る管を尿管と言い、膀胱の背部に開いている。膀胱から体の外に尿を排出する道が尿道であり、男性は陰茎の中を通るから長く、15〜20cmである。女性は短く3〜4cmである。尿道は膀胱側の口を内尿道口と言い、体外へ開く口を外尿道口と言う。外尿道口の径は6mmほどである。だから外径が6mmより細い管(カテーテル)を入れれば尿道に入るはずである。外尿道口から膀胱内までカテーテルを挿入したのが、尿道留置カテーテルである。
 カテーテルの外径はFr(フレンチ)という聞き慣れない単位が使われる。1Fr は1/3 mm だから、Frをmm に換算するには、Fr表示を3で割ればいいのである。円周は直径×3.14で出るから、Frはほぼ円周のmm表示になる。成人には14Fr〜18Frのものが使われる。mmで表示すると外径4.7mm〜6mmである。これはカテーテルの外周がほぼ14mm 18mmである。カテーテルを尿道から膀胱へ留置しただけでは、体を動かしたりするとカテーテルが抜けてしまう。それでカテーテルの先にバルーンをつけて置いて、膀胱内にバルーンが入った後にそのバルーンをふくらませることが考え出された。 バルーンがふくらんで大きくなっているから、カテーテルは内尿道口を通過することができず、カテーテルの先端は膀胱内に入ったままになるのである。バルーンのついていないカテーテルがネラトンカテーテル(Nelaton catheter)で、バルーンのついいているのがフォーリーカテーテル(Foley catheter)である。医療関係者の中では単にバルーンと言ったりもする。フォーリーカテーテルはカテーテルの根本まで挿入しバルーンが膀胱内に入ってから滅菌蒸留水を注入してバルーンをふくらませる。滅菌蒸留水のかわりに生理食塩水を使うと塩分が析出して生理食塩水を注入した道をふさぎ、生理食塩水を抜こうとしても抜けないことがある。それで滅菌蒸留水を使うのである。
 なぜ尿道留置カテーテルを入れるのだろうか。一つは尿量を知りたいからである。尿量は意識があり動ける人なら尿を容器にとって量を測ることで知ることができる。これを蓄尿と言う。しかし意識がもうろうとしている人や体を動かしにくい人は蓄尿ができない。おむつをしていると尿をするとおむつは尿の重さで重くなる。それでおむつの重さの変化を測定すればだいたいの尿量はわかる。しかしこれでは正確な尿量はわからない。正確な尿量を知りたければ尿道留置カテーテルを入れるのである。尿量を知りたいのは、絶飮絶食で点滴をしている時の点滴(輸液)の投与量を決めるのに尿量を使うからである。 輸液量は予測尿量に不感蒸泄の900mLをたして、代謝水の200mLを引いたもの、つまり予測尿量に700mLをたしたものにすると言われる。不感蒸泄とは皮膚や呼吸などから知らないうちに失われる水分である。代謝水とは人間の体の中で物質を代謝している間に生じる水分である。しかし注意すべきことはこれはあくまで予測尿量であることである。今日出た尿量に700mLをたして明日の輸液量とするのでない。明日の予測尿量に700mLをたすのである。予測尿量なのだからもとよりだいたいの尿量しかわからない。だからたいていの場合、尿道留置カテーテルを留置してまで正確な尿量を測る必要はない。おむつによるだいたいの尿量測定で十分である。
 尿道に閉塞があると尿は出なくなる、閉塞がなくても神経に何かの原因(これを神経因性膀胱と言う)があって尿が出ないこともある。これを尿閉と言う。尿が出ずに体の中にどんどんたまるなら当然体を害することになるから、尿道留置カテーテルを入れて尿を出すことがなされる。
 骨盤部に傷や手術創がある場合、おむつだとぬれたおむつが傷に触れることになり、傷の治りによくないと考えられる。それで尿道留置カテーテルを入れることがある。
 便と言うと大便のことだが、小便と言うと尿のことである。便と尿はきたないものの代名詞のようになっており、大小便と一緒に表現される。しかし細菌学的に考えると大便と小便はずいぶんと違う。大便はその40%が細菌である。一方尿は意外なことに正常なら無菌である。細菌はいないのである。細菌がいないことを清潔と考えるならば、尿は細菌でいっぱいの手や顔よりはるかに清潔である。 無菌である尿道に異物である尿道留置カテーテルを挿入すると細菌感染が起こるが知られている。文献には次のような記述がある。
 1週間から10日間、尿道留置カテーテルを使用すれば、半数の症例で尿路感染症が生じる。可能なかぎり、特に慢性的、長期的なカテーテルの使用は避ける。 (文献 2)
 尿路感染症は院内感染の約40%を占める。その内約80%は尿道留置カテーテルに関連している。単回の導尿による感染の発生率は1〜5%、留置した場合の発生率は 5%/日である。 (文献 3)
 尿道カテーテルによる尿路感染は、留置期間が1ヶ月を越える場合、カテーテルの材質や管理方法に関係なく、ほぼ100%にみとめることが報告されています。(文献 4)
 このように尿道留置カテーテルは尿路感染のリスクがあるため、可能な限りしないということで、HICPAC(Healthcare Infection Control Practices Advisory Committee)はGUIDELINE FOR PREVENTION OF CATHETER-ASSOCIATED URINARY TRACT INFECTIONS 2009(カテーテル関連尿路感染症を予防するためのガイドライン 2009) で次のような指針を定めている。
  1. 尿道留置カテーテルを使用するのはできるだけ減らす。尿道留置カテーテルを使用する期間もできるだけ短くする。女性、老人、免疫不全の患者はカテーテルによる尿路感染症や死亡が起こりやすいため、特に尿道留置カテーテルの使用を減らし、尿道留置カテーテルの使用期間を短くする。
  2. 尿失禁の管理のため尿道留置カテーテルを使用することはしない。
  3. 手術の患者にルーチンに尿道留置カテーテルを使用するのでなく、必要な時にのみ使用するようにする。
  4. 手術の患者で、尿道留置カテーテルの適応があっても、手術後できるだけ早く尿道留置カテーテルを抜去する。24時間以内が望ましい。ただし尿道留置カテーテルを継続する適切な理由があれば、継続することができる。
文献
  1. HICPAC. GUIDELINE FOR PREVENTION OF CATHETER-ASSOCIATED URINARY TRACT INFECTIONS 2009. http://www.cdc.gov/hicpac/pdf/CAUTI/CAUTIguideline2009final.pdf (2010/9/10 アクセス)
  2. 青木 眞 『レジデントのための感染症マニュアル 第2版』 (2008)  医学書院  p. 568
  3. 藤本卓司 『感染症レジデントマニュアル』 (2007)  医学書院  p. 131
  4. 田中純子. 尿道カテーテル管理の指導.  http://oab.jp/nursing/pdf/06.pdf  (2010/9/10アクセス)
  5. Paul L Marino. The ICU Book. Third Edition. LIPPINCOTT WILLIAMS & WILKINS.
  6. 和田孝雄, 近藤和子 『輸液を学ぶ人のために 第3版』 (2003)  医学書院
  7. 伊藤 隆 『解剖学講義』 (1991)  南山堂
  8. Henry Gray. Anatomy of the Human Body. The Male Urethra. http://www.bartleby.com/107/256.html (2010/9/16 アクセス)
  9. Henry Gray. Anatomy of the Human Body. The Female Urethra. http://www.bartleby.com/107/257.html (2010/9/16 アクセス)
2010年9月17日作成

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