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小学校からの英語教育について

 小学校から英語の学習を始めることになりそうである。それに賛否両論が聞かれる。しかしそこで感じるのは外国語は学ぶものだと考えていることである。外国語の習得で一番大事なことは慣れである。
 日本人は英語が苦手な国民性がある。その理由は日本人が外国語習得能力が低いのではなく、英米で話されているような英語に接することが少ないからである。フィリピン人は英語の堪能な人が多い。これはフィリピン人が外国語習得能力が高いと言うよりも、フィリピンでは生の英語に日常生活で接することが多いからである。
 英米で話されている英語は子音が多く、日本語の音に慣れ親しんだ日本人にはかなり異質の音である。日本人の知らない音なのである。
 日本人はたいてい日本人の英語教師から英語を学ぶ。しかし日本人英語教師の話す英語はかなりの日本訛りの英語である。以前はNHKの英語ニュースを日本人アナウンサーがすることがあったが、日本人が言っているとすぐに日本人の英語だとわかってしまう。NHKのアナウンサーでさえ日本訛りの英語を言っているのだから、一般の日本人英語教師が日本訛りの英語を教えているのは想像に難くない。そういう教育を受けた日本人はこれが英語の音だと思ってしまう。しかし実際英米で話されている英語の音はかなり違うから、英米人の言う英語が聞き取れないことになる。
 夏目漱石というと日本の代表的な知識人であり、英語の達人である。しかしロンドンに留学した時、英語がわからないとノイローゼになったという話がある。夏目漱石の知力を以てしても、日本語の音に慣れ親しんだ耳にはイギリス人の話す英語は聞き取りにくかったのだろう。
 日本では英語を学ぶ時、必ず英語で書かれたテキストを使い、単語を覚えたり、文章を覚えたりする。言葉を視覚を通して覚えようとしているのである。ところが日本人がどのようにして日本語を習得したのかを考えてみるとわかるように、言葉は聴覚を通して覚えるほうが自然だし、効率がいいのである。子供の時に周囲で話される日本語を聞いて、日本人はまず日本語を覚えたのである。書き言葉を始めたのはその後である。言葉は耳から聞いて覚えるほうが効率がいいのである。
 歌を覚える時、楽譜からだけ覚えようとしても難しい。楽譜を使って歌の下手な人が教えてもあまりよくない。楽譜などなくても、歌の上手な人の歌を聞いて、そういう人がいなければ歌の上手な人のCDを聞いて覚えるのが一番いい。
 私はシンガポールや韓国へ行った時、いつも英語の放送をしているテレビ局があるのを知って驚いた。これでは英語で日本人と差が出るのは当然だなと思った。もっとも私は外国人が宿泊するホテルに泊まったから、実際の庶民の家庭のテレビでは違うのかもしれないが。
 日本人の英語力向上には、私は、終日英語を放送する(英米で話されている英語)テレビ局とラジオ局を一つずつつくり、スイッチをひねればいつでも英語が聞けるようにすることが大事だと思う。これで日本人に異質な英語の音に慣れることが大事だと思う。また費用も小学校で英語教育を始めるよりずっと安いのでないか。英語教育を小学校から始めても、今までのテキストを中心とした日本人訛りの英語教育が早くなるだけであまり効果はないのでなかろうか。
 2006年5月8日作成
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