「使える物理学」テキスト 2001.1開講 本講座主任教授 挨拶 理科離れが叫ばれる昨今、技術立国日本としては、この分野の一層の教 育の拡充が求められている。さらに、バーや合コン等で女性を口説く、 ないしは掴みとして、物理学の教養を持つことは大変有意義であると考 えられる。得てして世の若い女性というものは学歴や学識に非常に弱い ものである。ここぞという状況において、ここで得た知識をひけらかし、 婦女子を虜にするべく、本講座を心して受講する様、切に願う次第であ る。 さて、物理学といっても大変広く深い学問であるということは、皆さん ご承知と思う。限られた時間内で最大の効果を得るべく、特に本講座で 扱う分野は「アインシュタインの相対性理論」に注力し、これを理解す ることを目標とする。この理論を学ぶためには、物理学の基礎がしっか りしていなければならないことは、皆さんお分かりと思う。本講座では、 中学校の理科程度の内容から進めていくので安心して欲しい。 簡単ではあるが、以上をもって開講の挨拶とさせて頂きたい。 1.前座 1.1.単位について ここでは、「基準が定義され、数学的整合性をもったもの」とする。 足りないと進級できないのも「単位」だがここでは扱わない。 ・温度の単位 華氏温度 F 氷+食塩を0とし、人間の体温を96として96等分した、と いうのが大元。英米でまだ使われているらしい 摂氏温度 C 水の氷点を0、沸点を100としたもの(1気圧) F=9/5C+32 絶対温度 K 低温の理論限界を0とし、摂氏温度の目盛で表す。物理で 温度といえばこれのこと。 K=C+273 ・国際単位系 SI 元のメートル法、cgs単位系から統合、修正を加えたもの。全て十進法。 基本単位: 長さ : m メートル 質量 : kg キログラム 時間 : s 秒 電流 : A アンペア 熱力学温度 : K ケルビン 物質量 : mol モル 光度 : cd カンデラ 以上から導かれる他の単位は組立量と言う。 尚、例えば「2000g」は、2kgですが、2×10の3乗グラムなので「2*10^3 [g]」、又は「2e3[g]」とも表記する。 1.2.エネルギ エネルギとは「仕事」をする能力のこと。その仕事量で表す。 「仕事」とは 質量に加速度を与えるものが「力」でそれを加えて質量が移動した距離 との積が「仕事」 加速度[m/s^2]×質量[kg]=力[N](ニュートン):運動方程式 *1Nは、1kgに1m/s^2の加速度を生じさせる力 力[N]×力を加えた距離[m]=仕事量[J](ジュール) ex) 1kgの物体を1m水平移動したときの仕事量は、0J 1kgの物体を1m垂直移動したときの仕事量は、9.8J(1kgの物体に働く重 力は9.8N) ・仕事率 仕事の速さ。単位はW(ワット) 1Jの仕事を1sで行う仕事率が1W。 (1馬力は736W) ・エネルギ保存則 エネルギはその種類を変えても総量は常に等しい。 ・慣性質量、重力質量 質量は、相互の引力の強さでも測ることができるが、加えた力に対する 加速度によっても測ることができる。混同しやすいが、前者の重力に伴 う質量が、kg重。後者がkgという単位で表される。 ・慣性の法則 外から力が加わらない限り、静止している物体は静止し続け、運動して いる物体は等速直線運動を続ける。 日常では「運動している物体は外力が無い限り、そのうち停止する」と 考えがちだが、これは摩擦等の外力が存在するからであるといえる。 ・エントロピー エネルギの質みたいなものを表す。自然におこる物理現象はエントロ ピーの増大する方向に変化する。エントロピーの小さいエネルギほど質 が良いといえる。 エントロピー最大=熱、エントロピー最小=重力。 エントロピー増大の法則により、時間とともに物質はエネルギー(熱) となり、宇宙は最終的に熱のみとなると考えられる。但し、宇宙が膨張 から収縮に転じる場合、どうなるか? 2.特殊相対性理論 2.1.特殊相対性理論概要 1905年アインシュタインによって発表。 相対性原理と光速度一定の前提から導き出される理論であり、 互いに等速運動する系(慣性系)について適用される。 ガリレイの相対性原理とは、 絶対的な運動は存在せず、互いに等速運動している系は、全て同じ物理 法則が適用できる。というもの 相対性原理を認め、光の速度は慣性系において、常に一定であるという 仮定を決める。そしてそれによる理論が全て矛盾無く説明でき、実験と 整合すれば、その理論と仮定は正しいということができる。 前提より導き出される法則 質量とエネルギの等価 運動する物体の縮み 時間の遅れ 質量の増加 時刻の同時性のずれ 時間と空間の一体性 2.2.エネルギと質量の等価について 関係式は E=mc^2 で表される。 「イーイコールマーシーの二乗」と覚えるのもよい。 E:エネルギ m:静止質量 c:光速度 エネルギ=質量×光速度^2 なのであるが、重さと光の速度の二乗を掛 けるとはどういうことなのか?続いてそれを説明する。 単位は、cgs単位系(センチメートル、グラム、秒)である。 m:g(グラム) c:cm/s(センチメートル毎秒) ゆえに Eの単位は、E=mc^2より、[g]*[c]^2 であるので [g*cm^2/s^2] :(エルグ)となる。 「エルグ」とはどういった単位なのか? ちなみに、 速度というのは、単位時間当たりの移動距離なので、(時間÷距離)[c m/s] 加速度は、単位時間当たりの速度の変化であり、(速度÷時間)[cm/s^ 2] 質量×加速度=力(f=m*a)なので、力の単位は、[g*cm/s^2] これを 「ダイン」と呼び、毎秒1cmの加速度を与える力のことである。 力×距離=仕事(w=f*d)なので、仕事の単位は、[g*cm^2/s^2] これ が「エルグ」であり、1ダインの力に逆らって物体を1cm動かす仕事量と 定義できる。 以上のように、「E=mc^2」は数学的整合性を完全に持つ。これが物理学 というものです。 2.3.E=mc^2の実際の計算例 では、実際に1グラムの物質が全てエネルギに変換されたとき、どれだ けのエネルギになるのかを計算する。 m=1[g] c=3e20[cm^2/s^2] を、E=mc^2に代入して E=9e20[g*cm^2/s^2] これがどれくらいのエネルギであるかというと、 1*10e7エルグ=1[J] 4.19e7エルグ=1[kcal] 3.6e13エルグ=1[kWh](キロワットアワー) であるので、1gの質量から得られるエネルギ9e20エルグは、 9e13[J](90兆ジュール) 2.15e10[kcal](215億キロカロリー) 2.5e7[kWh](2500万キロワットアワー) と表すことができる。 これで東京ドーム何杯分の水を沸騰させることができるかを求めてみる。 (便宜上、水温を100℃にすることで沸騰とする) 1calは1gの水を1℃高めるという定義であるので、 20℃の水を100℃にするため、80℃上昇させるとすると、 2.15e10[kcal]では、2.15e10/80=2.7e11[g] 1000g=1リットルで2.7億リットルとなる。 ここで、東京ドームのドーム内体積は、公称124万立方メートルとなっ ているので、 124万立方メートル=12.4億リットル で、さきの2.7億リットルで割ると、4.6 となる。 ゆえに、1gの質量は東京ドーム4.6杯分の水を沸かすだけのエネルギと 等価であると求められる。 2.4.質量エネルギ変換の実際例 実際に、質量をエネルギに変換している代表的な例として、太陽が挙げ られる。 太陽中心においてその高熱と高圧力によって、水素をヘリウムに変換す る核融合反応を行いそのエネルギを放出している。 人工的にも、原子力爆弾は核分裂反応、水素爆弾は核融合反応を利用し てエネルギを得ている。 原子力発電もウランやプルトニウムの核分裂反応により、その質量の一 部をエネルギに変換し、取り出すことで発電を行っている。 原爆との違いは、その核分裂反応を閉じ込め、反応速度を制御するか否 かといえる。 核融合反応炉はまだ実験段階である。 また、粒子加速器等で電子などを加速する際、理論どおりに、その速度 によって粒子の質量が増加することが確かめられている。 2.5.核分裂、核融合について 万物は原子によって構成される分子でできている。原子はさらに原子核、 電子から成る。 原子核は陽子、中性子から成る。その原子核の陽子と中性子の合計数を 格子数という。 陽子は+電荷、電子は−電荷、中性子は中性であり、原子としては安 定する。 (物質を成す最小構成粒子を素粒子と呼ぶが、陽子や中性子はさらにい くつかの素粒子から成る。もともと、陽子、中性子などを素粒子といっ ていたが、最新の研究ではクオークと呼ばれる12種類の基本素粒子が発 見されている。) 原子の種類は陽子の数で決まり、周期律表の原子番号はその原子の陽子 の数を表す。 陽子数が同じで中性子数が異なるものを同位体といい、同じ原子記号で あるが質量数が異なる。同位体間で化学的性質は全く変わらない。 現在109種の原子が確認されている。一般的に番号が大きすぎても、小 さすぎても不安定である。核子数70くらい(鉄とか)が最も安定してい る。(分裂しにくい) 原子核はパイ中間子をやりとりすることで、陽子、中間子間に引力(核 力)を発生させ、結合している(湯川理論)。 陽子、中性子は電気的に反発するが、核力はそのおよそ100倍なので電 気力は無視できる。 よって、核子数が増えると、その結合させる力も増え、結合が強くなる (安定する) しかし、核子数が増えると原子核も大きくなる。核力の作用範囲は核子 の直径程度であるので、原子核が大きくなってくると電気力による斥力 が無視できなくなってくる。よって、原子核の大きい原子も比較的不安 定となる。 そこで、大きい原子核は中程度の原子核に比べて結合が弱い、だから、 2個以上の原子核に分裂した方が、エネルギ的に低い状態、安定した状 態となる。 そして、分裂後の原子の質量和より元の原子の質量が大きい。質量=結 合エネルギということがいえる。 そのエネルギの差が、原子核を分裂させることにより発生する。これが、 核分裂によるエネルギ発生のメカニズムである。 このエネルギは分裂時に運動エネルギ(熱)として放出される。質量差 はウラン235の場合約0.1%。この質量差が運動エネルギとなって放出さ れる。 核融合も、核分裂と同様に融合前の原子の質量和より、融合後の原子の 質量が小さいことで、その質量差がエネルギとなる。重水素からヘリウ ムが融合される場合、質量差は約0.6%である。 |