うたかた
「…ん…っ」
ジュリアスの愛撫に、アンジェリークが小さく声を漏らす。
「よいようだな。」
ジュリアスがその艶のある低音の特性を最大限に利用して、アンジェリークの耳元に直接声を吹き込む。
「はっ…んんっ」
その声だけでアンジェリークは感じている。もう、先日のあの事件(喧嘩?)以来、どうにも変な癖がついてしまったようで、やたら感じやすくなっている。
「今始めたばかりなのに、もうこのように…」
くちゅっ、とアンジェリークの腰のあたりで音がする。
「いやあんっ」
アンジェリークは恥ずかしさに身悶えした。もう、どれだけ濡れているのか。どうしてこんなに反応するのだろう。体というのは、どうしてこんな具合に気持ちいいことはすぐに覚えてしまうのだろう。
(どうして私、こんなにエッチになっちゃったのかしら。…でも、ジュリアスさまもずいぶん積極的になったわよね。前ならこんな…あっ、もしかして…あれ…)
アンジェリークはひとつ気になることを尋ねてみようか、と思った。
「ジュリ…アスさま…?」
「なんだ。」
「あの、私…よければ…あの…」
「どうした。あの、ではわからぬぞ。」
「あの…口、で、して…差し上げましょうか?」
「口…?何をすると言うのだ?」
「あの…ジュリアスさまの…を、私が…口…で」
流石にそこまで言って、アンジェリークは真っ赤になった。ジュリアスも理解したようだ。
「なっ…いや、それは、よい。そのようなことは、せずともよい。」
「…でも…あれって、男の人は気持ちいいって…本とかで…読みました。」
「では、アンジェリークは本当にそれをしてみたいと思っているのか?」
「…えっ。いえ、あの…でも、ジュリアスさまが…」
「私はそなたの口に…あのようなものを入れることはできぬ。だが、そなたの気持ちはどうなのだ?本当にしてみたいのなら考えてみてもよいが…。」
ジュリアスはまるでエリューシオンの育成をしている時のような生真面目な口調と表情でこう言った。アンジェリークは一瞬何の話をしているんだっけ、と思ってしまったくらいである。ジュリアスが繰り返す。
「どうなのだ?」
アンジェリークはちょっとためらったが、正直に言った。
「あの…やっぱり…ちょっと…抵抗あるかも…。」
それを聞いて、ジュリアスは少し微笑んで言った。
「そうだろう。無理はせずともよいのだ。今のままで十分、私は良い思いをしている。こうして、愛するそなたを抱けるのだからな。だが…」
「…ジュリアスさま…?」
「そなたは、どうなのだ。私の口で、して欲しいと思ったことはあるか?」
アンジェリークはそれを聞いて真っ赤になった。
(口でする、と言うことは、ジュリアスさまの目の前に…私の…。)
「あっ…あの、そ、それは…っ」
ジュリアスはまじめな顔でアンジェリークを見つめて、答えを待っている。
「あのっ、や、やっぱり、恥ずかしい、ですっ!」
ジュリアスはアンジェリークのその答えを聞いて、明らかにほっとしたようであった。
「そうか、それならよいのだ。少し、気になっていたのでな。」
アンジェリークはその様子を見てくすっと笑った。
(なんだ、ジュリアスさまも私とおんなじ気持ちだったんだ…。)
アンジェリークはなんだか嬉しくなった。と、いきなり耳元で、
「では、いつもどおりで…よいな。」
熱い息とともに、ジュリアスの声が響く。今の会話ですっかり和んでいたと思った体に、また電流が走った。
「あ…いい…です。」
「よいのだな。」
ジュリアスはまたゆっくりとアンジェリークの体をまさぐり始めた。アンジェリークも痺れるような感覚に耐えながら、ジュリアスの体に触れる。そしてそのまま胸にもたれ掛かり、舌でそっとジュリアスの胸の突起を舐めた。
「うっ…」
ジュリアスが思わず声を漏らす。
「気持ち…いいですか…?」
そしてジュリアスの答えも待たず、自分がよくされるように軽く歯を立てて噛んでみたり、ちゅっと吸ってみたりしてみる。
「あ…ああ、よい…ぞ、とても…う…っ」
アンジェリークは自分の行為でジュリアスがこんなに感じているのを初めて見たような気がして、嬉しくなった。いつも自分ばかりいい思いをしているような気がして気が引けていたのである。
「じっと…しててください…そのまま…」
そういうと、アンジェリークはジュリアスの分身に手を伸ばし、刺激を与え始めた。口の方もいろいろな…上半身だが…場所をついばんで行く。
「ふっ…んん…っ」
ジュリアスはいつも余り声を出さない。今も喘ぎ声を堪えているように見える。アンジェリークはもっとジュリアスの声が聞きたい、と思った。
「もっと…感じてください。声を、聞かせてください…」
耳元で、ささやきながら、手のほうに力を少し入れてみる。普段はあまり手を触れない部分にも思いきって指を伸ばす。
「う…あっ…アンジェリークっ、そこはっ…くっ…」
「我慢しないでください、ジュリアスさま…気持ち、いいんでしょう?」
「はっ、あ、あ、アン…ジェ…ああ、やめ…っ」
アンジェリークは明らかに今までにない興奮を感じていた。さらに指に力をこめて行く。
「ジュリアスさま…お願いです、声を…もっと、声を聞かせて…」
「ああっ、は、それ…以上…ったら…あ、うっ、あ、アンジェ…リーク…っ」
アンジェリークはその声を聞きながら、いつのまにか片方の手で自分を刺激している。
「ジュリ…アスっ、さまっ…ああ…ん、んんっ」
「は、う、うあ、ああっ…くっ…う…っ…!」
ジュリアスのその声は、アンジェリークの体を堪らぬ快感となって貫いた。
「あ、く、ふぅん……っ!」
二人はほとんど同時に達した。そしてその感覚が体から抜けていってからアンジェリークがジュリアスを見ると、ジュリアスは目を閉じて、大きく肩で息をしている。
「ジュリアスさま…」
ジュリアスは、答えない。代わりにはあはあと、大きな息遣いが聞こえる。
「私は、嬉しかった…です。」
「……嬉し…い…?」
「いつもジュリアスさまにしてもらうばかりじゃ、嫌です。私もこうしてみたかったんです…だから、嬉しい。」
「…そう、なのか。…そう…だったのか。ふっ…そういうもの、なのか。」
ジュリアスは納得したらしい。息を弾ませながら、少し笑顔を見せた。
「ふふ…そういうものです。これからも、たまにはさせてくださいね。」
「ふふ…たまさかには、な。だが…」
ジュリアスはむっくりと起き上がると、アンジェリークの肩を掴んで乱暴にくちづけた。そしてベッドの上に押し付けると、その鋭い眼光でアンジェリークを捕らえ、言った。
「だが、いつもは今までどおり、こうさせてもらう。」
ジュリアスはお返し、とばかりに強くアンジェリークを愛撫する。
アンジェリークはもう、目が眩みそうな快感に身を委ねるばかりであった。そして気がつくと、いつのまにか、アンジェリークはジュリアスに貫かれていた。もう、途中のことは覚えていない。いや、今も現実なのか夢なのかわからない。ジュリアスはもうめちゃくちゃにアンジェリークを揺さぶっていた。
「あ、あ、あ…いや、壊れちゃうっ、だめ、だめえっ…!」
そんなことを叫んだような気がするが、もう、どうでもよかった。アンジェリークの頭の中で何かが弾けて、真っ白になって行った。
「ジュリアスさま…愛しています…。」
遠くなる意識の中でアンジェリークは呟く。
「愛している、アンジェリーク…私の天使。」
ジュリアスの声が、低く甘く、遠くで響く。
甘いくちづけを受けながら、夢の中で、アンジェリークは光の泡になっていった。
おしまい
ジュリアスさまも、アンジェリークも暴走(爆走)しているけど、一番爆走しているのは私だなあ、
とつくづく思ってしまいました。まさか2日続けて裏モノ書くとは。今回リモジュリも入ってるし。
しかもついにヤッてるだけのおはなし。短いし。でも、たまにはこう言うのもいいよね。ヾ(´▽`;)ゝウヘヘ。