モデルアート増刊『日本陸軍愛国号献納機』は、愛国号について(現時点まででは唯一)の本で、よくぞ出してくれたというべき本です。 但し、誤りがないわけではなく、カラーページでは最後のページの記載が気になります。 愛国号の献金に応じて人に、絵ハガキ程度の記念品を送っただろうと思われるが、実際は代表者(県民号では県知事)あてに感謝状だけが渡されていた程度である。この本が対象とする愛国146号までとしても、私の得られた調査結果からは、 軍からの記念品には、記載の通り、記念絵葉書はありません。あくまでも、献納者負担で調製を代行する形だった模様です。 絵葉書は、今ほどメディアが発達していない当時、重要なメディアの一つだったのでしょう。だからこそ、絵葉書屋という商売もあったわけですが、だからといって軍機密に属するようなものを勝手に作成・販売できる状況ではなかったと考えます。 掲載されている愛国88号の絵葉書は献納者(東京国際通運運並びに関係取引店従業員)が調製したもので、「幹部関係者に配られたものと思われる」とありますが、私も持っていますし古書店でも時々見かけますので、少ない枚数ではないようです。もちろん、軍の検閲は受けていたでしょう。 |
絵葉書については、著者の誤解があるように思うのです。愛国1号・2号の絵葉書袋にも「陸軍省」とあるように、軍が調製していると考えた方が自然です。 確かに、愛国120号前後までの絵葉書の裏面(絵柄面ではない)には、軍を匂わせる記載はありません。極普通の絵葉書(例:愛国122号宛名面)です。 ですが、愛国126や愛国136には、裏面には「陸軍大臣官房発行」(例:愛国126号宛名面)とありますし、絵柄面にも「陸軍省」と入っています。(この両機は、命名式時期が後と考えられるので、愛国号数のこの頃から変わったのかどうかは不明ですが) 宛名面は、しばらく「陸軍大臣官房発行」ですが、それが「陸軍省発行」(例:愛国415号宛名面など)となり、次第にそれ自体がなくなっていきます。 これは絵葉書からブロマイド化したためで、愛国590番台の愛国婦人号の絵葉書には何も記載がありません。これが最後まで続きます。 尚、代表者に感謝状は渡されているようですが、後期に見られる献納記念額がこの頃にあったかは、まだ知りえていません。 |