復旧工事の例

災害復旧工事の依頼がきました。下請けです。
この例では御覧の通り道がぼこぼこになっています。





この道路は谷側にアスファルトカーブ(Asカーブとも言います)を施工されており、雨天時に降った雨が路肩を侵食しないように作られています。
今回はこのことが裏目に出たようです。
道路が崩れ始めた箇所を見てみると無数の亀裂が走っています。おそらく、雨天時にこの場所から雨が表面のアスファルトを抜け、その下の路床であるシラスを侵食して空洞が出来たのでしょう。そこに圧力、つまり車などが乗ってしまいアスファルトが破砕沈下してしまったと思われます。しかしながら、復旧工事では同じような道路に戻すことが求められるため、同じようにAsカーブを施工しなければなりません。改良ならば側溝等を入れたり幅を広げたりすることは出来るのですが、今回の仕事ではありません。

さて、状況は確認出来ました。
早速工事なのですが、この工事は施工計画書に沿って施工せねばなりません。
もっともその前に設計図面を借り受けて見積りし元請けに伺いを立てて受けさせてもらえるかが問題ですが、今回はもらえました。

施工計画書はどのような工事をどのような材料や機材を使用して行うかや、施工した場所を写真にて記録する計画、万が一の災害の場合や普段の安全対策等などを記載してあります。
これに問題がなければ図面通りに施工する、この場合はアスファルト路盤の高さを測量し丁張と言われる一定間隔で交互に白と赤で塗装された板を路盤から10cm高か、場合によっては20cm高でかけます。
今回は20cmとなりました。最終的にアスファルト路盤が出来たときには、この丁張から20cm下に位置することになります。ゆえに測量はとても重要な項目であり、疎かにしてしまうと工事が大混乱してしまいます。


アスファルト剥ぎ取り、路床作成工程

最初の工程は災害で、ぼっこぼこになった路盤を削り取ります。
バックホウの0.3(コンマ3とも言います。ショベルで掘れるのが0.3m3のことを言います)で豪快かつ繊細にぶっこわしながら、削り取ったアスファルトや土を2tダンプトラック(2tDTとも言います)にて運び出します。

#看板についてはぼかしを入れてますのであしからず
この作業はほぼ機械任せになりますので、バックホウのオペレータさんの腕に全てがかかっています。
他の作業員はバックホウが取りこぼしたりしたアスファルト殻などを手作業にて集めたり、バックホウ、2tDTの補助をしたりします。

路盤の撤去が終了すると、次は路床と呼ばれる道路の一番下の盤を作ります。
道路は、路床、下層路盤、上層路盤、表層と言われる層で成り立っています。
下地がしっかり出来ないとなにごとも上手く行かないですよね。
ゆえに下から路盤をしっかりと作っていきます。
路床にはこの現場のシラスを均して使います。モータグレーダを使用した方が早いのですが、ある程度はバックホウの前方に付いている板、ハイド板を利用して敷き均します。高さが不足している場所は不足土を入れて仕上げます。

敷き均しを行った後は振動ローラで転圧を行います。

転圧が完了して路床の出来上りとなります。



下層路盤工程

路床が出来たら、今度は下層路盤。
ここには再生クラッシャーランを14cm敷き詰めます。
再生クラッシャーランとは剥ぎ取ったアスファルトや取り壊ししたコンクリートの塊などを破砕したものです。剥ぎ取ったアスファルトやコンクリート塊は廃棄物として処理されるのですが、再利用した方が環境にも良いですし、通常の破砕した石よりも密度が出るようです。
なお、下層路盤は14cm、上層は7cm、表層のアスファルトは3cmとなっています。
この道は古い道なので、全体的に路盤が薄めです。アスファルト3cmの舗装なんて依頼はほとんど来ないのが現状です。4cmとか5cmが一般的となっています。
下層路盤の厚さ14cmで84mほど敷き詰めて行きますと、単純計算にて37m3くらい必要になります。11tDTで約4杯分くらい。単純に言ってますが相当な量です。
今度疾走する11tDTを見てみてください。あれが4台分。
グレーダを一番上に配置し、再生クラッシャーランをその手前にDTからおろしていきます。グレーダが乗り越えられるくらいの高さにしないと敷き均しが出来ませんので、DT運転手も気をつけています。
グレーダはかなり操作が難しい特殊な機械と位置付けられるでしょう。
この機械は移動しながら路盤を削ります。丁度、大工道具のカンナと同じです。
大工のように熟練しないと路盤どころか敷き均しすら出来ないでしょう。
ここでどのように敷き均しするかと言うと、丁張をかけた地点で道路を横断した対向の位置で水糸を引き、ここから何cm下がっているかを計り路盤にあと何cm上げるか下げるかを石粉なので書き、グレーダのオペレータに指示します。
これを受けオペレータは熟練の技で仕上げていくのです。
このとき、振動ローラの2.5tがピッタリとグレーダの後ろに付き、敷き均した端から踏み固めていきます。
このように固めていき、丁張から規定の下りであればタイヤローラを使って散水しながらがんがんと踏み締めていくのです。



どうです? 綺麗な路盤になりつつあるでしょう?

上層路盤工程

下層路盤の次は上層路盤を作っていきます。
この層に入れるのは粒調砕石を敷き詰めることになります。
敷き詰める厚みは7cm。
ちなみにこの粒調砕石は渇くと、とんでもなく砂埃が立ちます。ゆえにタイヤローラから散水を適度に行います。
やはり、下層路盤同様の工程でモータグレーダで敷き均し、振動ローラやタイヤローラなどで踏み締めていきます。



散水しながら敷き固めると路面がかなり平らになっていきます。

この後に舗装をするためにプライマーと呼ばれる乳剤を撒きます。
プライマーはアスファルト合材と上層路盤を密着させるための接着剤と思ってください。


アスファルト舗装工程

さぁ、仕上である舗装作業。
ここではアスファルトフィニッシャーと呼ばれる機材を利用して、アスファルト合材を一定の厚さ、今ではめずらしすぎる3cmで均していきます。
このアスファルトフィニッシャーは前方のバケットにトラックから合材を直接積み下しを受けながら、機体中央下方に落し込み後方にあるアイロンで上層路盤に押し付けながら進んでいきます。
このアスファルトフィニッシャーもかなりの熟練が必要でしょう。
両サイドに伸縮可能なアイロンがあり、ある程度の広さまで対応出来ます。
また、両サイドには敷き均しに使うレイキを担当する者と、レイキを使った後に余った合材を処理するスコップを担当する者が待機しています。
絶妙な職人芸でアスファルトフィニッシャーが出来ない端の処理を黙々とこなしていきます。

このとき、アスファルト合材温度は約150度。熱いです。とっても熱い。
アスファルト合材のそばに居るだけで汗が滝のように流れ出していきます。
脱水症状にならぬ様に作業員の方々は水分を補給せねばなりません。
アスファルトフィニッシャーが通り、端の処理も終ったところから、振動ローラ、ハンドローラ、タイヤローラで締め固めて行きますが、どこからでも締めて良い訳ではありません。最初に端っこの方から締めていきます。
端を固めないと真ん中を締めても合材が横へ逃げていくからです。

何度も往復し、十分に転圧をかけると舗装完了です。

どうですか? この仕上がり。舗装したてはとっても綺麗です。

綺麗に舗装出来た後にはASカーブを設置し、谷側を保護します。アスカーブ機と言われる専用の機械で作っていきます。なお、合材は、御覧の通り、DTより人力にて投入することになります。

150℃の上に乗ってますので、安全靴でもかなり底が熱くなります。
それらに耐えつつASカーブを作っていきます。

この後にASカーブ側を埋め戻し、他のこまごまとした仕事を終えると完了します。

そして完成へ

どうぞ、復旧完了した晴れ姿を見てください。






普段、皆様が通られている舗装はこのような工程を経て作られています。
たかが道路。日常にありふれた光景ではありますが、その裏にはこのように働いている方々が存在しているのです。
しかも、ASの均しはかなり高等な技術です。フィニッシャーの運転手さんや、それを補佐する方、さらにアスファルトをレイキで均す方々は、アスファルト合材がむらになっているところを瞬時に判別出来ます。
私も手伝っていたのですが、まったく分らない。どこらへんが低くくなっているか指示されても本当にそこが低いのか判別が出来ないので、アスファルト合材をスコップ一杯分持ってこいと言われて持っていっても水平にしか見えないので、そこに置いてよいものか迷ってしまうこともあります。
敷き均しが一人前に出来るまでには3年から5年はかかりそうです。