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行政法解釈学TU  実質的法治国家を創造する変革の法理

 これは冒頭のホームに載せている。
阿部泰隆の研究の略歴と特色

行政法学の再生
『対行政の企業法務戦略』

「さらなる行政訴訟制度の改革について(上・下)」
    (斉藤浩、高木光との鼎談)自治研究82巻3,4号

新規出版(更新09・11・2)

阿部泰隆著作一覧

田中二郎先生生誕100周年記念



   


阿部泰隆の研究の略歴と特色
      
   1、研究の出発点

 専攻は行政法学である。もともと、田中二郎先生の助手として採用されたが、先生が最高裁判事になられたので、雄川一郎先生の助手として、行政裁量と行政訴訟の研究から出発した。論文としてまとまったものは、『フランス行政訴訟論』である。この研究で、フランスの行政訴訟は、フランス人の自慢とは逆に、権利救済の点できわめて不備であることが判明した。そこで、留学先としては、裁判を受ける権利の包括的・実効的な保障を判例法で確立し、さらに立法化している(旧西)ドイツを選び、当初は六甲台財団の資金でハンブルク大学(ヘルバート・クリューガー教授)で勉強したが、次には、フンボルト財団の留学生として、義務づけ訴訟を裁判官として、学者として、創造したBachof教授(Tuebingen大学)のもとで勉強した。その成果が田中古稀、追悼論文集に書いた義務づけ訴訟積極論である。これはその後、『行政訴訟改革論』(有斐閣、1993年))に収録された。2004年の行政事件訴訟法の改正で、不十分ながら、義務づけ訴訟が立法化され、この苦労が報いられた。また、この過程で、法規の執行の不全(Vollzugsdefizit)に関するドイツの論議に興味を引かれた。それが、日本の法システムの実態の法社会学的分析、その見直しの研究(つまりは、政策法学研究)へとつながっている。

  Bachof先生は、2006年1月に92歳で亡くなられた。クリスマスカードで、日本でも義務付け訴訟と仮の義務づけが導入され、すでに仮の義務づけが認められたと報告すると喜んでいたとのことであった。

 その後、2度目の留学では、ドイツ・フランスのほか、アメリカに半年滞在し、特にアメリカ流の司法国家や経済学的発想を学んだ。

 また、1993年にはドイツ・トリア大学の資金で、3ヶ月間であるが、教授として招聘された。

 そして、これらの外国法を参照しつつも、外国法屋になることなく、日本法を合理的に解釈し、また、立法することに幅広く取り組んでいる。

 研究分野は、行政争訟法、国家補償法、行政の法システムの組み替え、都市計画法、環境法、地方自治法、公務員法、行政法政策法学など、行政法全般である。

  2、行政の法システムの構造的把握

 行政法は無数の法規からなるので、そのシステムを適確に把握しないと、適切な解釈も、立法もできない。行政法を「行政に関する法」などと把握し、「行政」の概念、「公法と私法」、「行政行為」などという、古色蒼然とした無意味な解説でほぼ終わる従来の体系書では、この要請に応えない。その観点から、現行日本法のしくみなりその構造を明らかにし、その不合理な点を、解釈論、立法論の両面にわたって改善する方向を示したのが、『行政の法システム(新版)上下』(有斐閣、1997年。初版は1992年)である。全く新しい、諸外国にもない、創造的な取り組みを行ったつもりである。解釈論、立法論に大いに寄与できるものと自負している。

 さらに、行政法の存在意義を考究する最近の論文が、「基本科目としての行政法・行政救済法の意義(1ー9・未完)」自治研究77巻3号、4号、6号、7号、9号、78巻1号、78巻4号、5号、7号である(2001年)。

  3、解釈学

 実定法研究者である以上、仕事の多くは実定法の解釈である。私見は、解釈学として、新しい解釈を提案して、司法の場で採用されているものも少なくない。また、弁護士からも多数の意見書を依頼されているが、そのなかで理論的にも正しいと思われるものについてこれに応じて裁判所に意見を提出している。その一部は公表されているが、たとえば、『行政法の解釈』(信山社、1990年)には、古いものであるが、阿部説が採用された例がある程度あげられている。その続編が、『行政法の解釈(2)』(信山社、2005年)である。

   4、立法学の提唱

 立法の場では、日本の勤続(金属ではない)疲労した法システムを改造して、権利を守りつつ、合理的・効率的な法システムを創造すべく、『日本列島法改造論』を唱えて、『政策法学』を建設しようとして、『政策法務からの提言』、『政策法学の基本指針』、『大震災の法と政策』、『政策法学講座』のほか、いくつかの著作を公にしている。近く、『実例編政策法学講座』(第一法規)を出版する。これも、これまでの法律学にはない試みである。おそらく諸外国にもない試みである。

   5、特に行政訴訟に関して

 行政訴訟法学においては、特に、権利救済と、行政の適切な運営とのバランスにも配慮しつつ、権利救済の包括的・実効的な保障の観点から、解釈論と立法論を展開している。それは、『行政救済の実効性』、『行政訴訟改革論』、『行政訴訟要件論』として論文集にまとめたもののほか、今般の行訴法改正の不十分さを指摘して、次の改革に備える『未完の行政訴訟改革』とか、今時の改革の内容を分析する『改正行訴法』等の著作を予定している。

 この関係では、立法論としては、「行政事件訴訟法改正の提案」月刊民事法情報91号(1994年4月号)、「行政訴訟からみた憲法の権利保障」ジュリスト1076号(1993年)、「行政訴訟における裁判を受ける権利」ジュリスト1192号(2001年)、「行政訴訟改革の方向づけ」法時73巻4号(2001年4月号)、「行政訴訟改革への1視点」ジュリスト1218号(2002年)、「行政訴訟の新しいしくみの提案」自由と正義2002年8月号などがある。「裁量に関する司法審査ー裁量統制の新しいあり方としくみの提案」自由と正義2006年3月号12−20頁。「さらなる行政訴訟制度の改革について」(斉藤浩、高木光との鼎談)自治研究82巻3,4号(2006年)も、行政法改革の努力の産物である。

 また、司法改革、行政訴訟法改正にあたっては、積極的に、新しい行政救済法の建設のために意見書を提出している。最近のものは、司法制度改革推進本部のホーム頁に掲載されている。

 行政訴訟法の体系書としては、『行政救済の法システム』(有斐閣)を近く脱稿すべく努力している。

   6、行政法学の再建

 行政法学は、これまで、六法に入れてもらえないことから、司法試験の選択科目でもなくなり、辺境科目扱いされたが、実は国家の法体系は、憲法を頂点に、私人間の法律関係を扱う民事法と、国家の刑罰権の行使に関する刑事法のほか、国家と国民などの法律関係に関する行政法の3つからなるので、行政法は基幹科目である。それ以外の知的所有権法、労働法、社会保障法、経済法、租税法、環境法などはこれらの応用科目である。この阿部泰隆の年来の(しかし、行政法学者としても斬新な)主張は、今般の司法改革の中で取り入れられつつある。法科大学院でも、基幹科目として、行政法を含む公法、民事法、刑事法の3科目を教える。したがって、「六法」という言葉は死語にすべきである。

 そうすると、行政法学者は、その責任の重大さを理解して、行政法学をもっと深く正確に研究しなければならない。そこで、私は、行政法学再建のため「行政法研究フォーラム」を創設しようと努力した。2002年7月6日にその第一回研究会が開催された。これは来春から、研究会として恒久組織とするという合意がなされている。2004年は7月24日午後、後楽園にある中央大学で、今回の改正行訴法をテーマとして論議された。

   7、他の分野との交流・学会

 行政法学は、他の法律分野とは異なり、行政という切り方なので、単に行政にかかわる特殊な法制度だけではなく、法制度全般を勉強しなければならない。私は、常に憲法の人権保障、法律による行政、行政訴訟では裁判を受ける権利の実効性を念頭においている。行政訴訟法を研究する際には、民事訴訟法を常に参照している。印紙代、弁護士費用の敗訴者負担など、民事訴訟法学の領域にも踏み込んだ行政訴訟法学を建設している。公務員法の研究においては、労働法に配慮し、国家補償法の研究においては民法の不法行為法を念頭におく。行政法の制度は常に民法と比較して、より効率的な制度であるべきだという観点から、民法を参照している。といっても、普通は行政法学以外には発言しないものであるが、最近は、行政法をこえて、定期借家、短期賃貸借保護廃止、民事執行法などの民事法の抜本的な改正にも発言し、司法改革にもささやかながら取り組んでいる。

 このように、幅広く研究している関係もあって、行政法学以外の分野からも、学会理事に推薦されることが多く、最大で8学会、現在6学会の理事に名を連ねている。また、学会賞も、公法学会にはないが、他分野の学会から、これまで7回受賞している。

 これらにおいては、あるべき法制度は、法と経済学の分析、あるいはミクロ経済学、特に新古典派の理論を参照して建設しなければならない。それには定期借家、あるいは都市住宅学会における経済学者との交流が大いに有用であった。アメリカの判例法であるコモンローは、こうした経済学的な分析に支えられているところであり、これからは日本の裁判官、解釈法学者も、この方面の知見を高める必要がある。もちろん、私の理解はまだまだ不十分である。

   8、国際交流

 もともと、フランス行政訴訟から出発したことは先に述べたが、その後、主にドイツ、アメリカ中心に交流を深めて、英独文で行政法・環境法関係の論文を発表し、さらに、台湾、韓国での報告、講演など約10編を集めて、私製版の論文集を作っている。

   9、これから

 2005年に定年になった。これまでの学問を整理し、さらに、学問を発展させなければならない。当面予定している著書だけでも『行政法学の再生と進路』、『行政訴訟改革』、『行政救済の法システム』、『行政作用の法システム』、『地方自治法』、『解釈学・行政の法システム入門』などがあり、論文集としても、『廃棄物法制の研究』、『環境法制の研究』、『国家補償の実践的理論』、『行政の危険防止責任』、『国家補償法改訂』、『行政法の解釈(3)』など、たくさんある。なかなか暇にならない。目下、中大に通い、弁護士業務特に刑事事件で苦労するなどして、学問が遅れている。

 

行政法学の再生  2004年 神戸大学卒業生の同窓会への寄稿 他学部出身の社会人にもわかるように書いたつもり

凌霜の皆さんは、法律の基本というと、六法だと思っているでしょう。経済・経営学部出身者ならもちろん、法学部出身者でも、それどころか、法学部教授のかなりも、「六法」を最重要科目と思いこんでいる。筆者の専攻する行政法学は、「『六法』に入れて貰えぬ行政法」という川柳(高木光)があるほどで、辺境科目扱いである。司法試験では、行政法は選択科目に甘んじていたが、その試験委員は、誰も勉強しない変わった問題を出して、受験生の行政法離れを招いた。選択科目出題者は、受験生という顧客を集める営業も兼ねているのに、独占企業のつもりで、身勝手な問題を出していたのである。そのため、行政法選択者が受験生の六%くらいに低下して、どうせ学ぶ者も少ないし、刑訴と民訴が選択では司法研修がやりにくいとかで、司法試験法改正により、二〇〇〇年度の司法試験から、両訴を必修にする代わりに、選択科目が廃止された。かつての行政法試験委員は、行政法学界に対しては、「背任罪」を犯したに等しいといいたい。

 しかし、これは行政法の重要性を知らない愚行である。試みに、「六法」を見てください。小六法やポケット六法は、「基本六法」中心に編集しているから別であるが、有斐閣の大六法を見れば、憲法と民法の間の大部分、労働法の後のかなりは、行政法である。分量的には、「六法の半分分捕る行政法」(阿部泰隆作)なのである。「犬も歩けば行政法に当たる」のである。

 これに対して、六法科目は、民法、刑法といった一つの法典があるのに、行政法には、行政法というまとまった法典がなく、雑多な法の集まりだから、「基本科目」を学んだら、あとはその関係の法律だけを見れば済むと思っている人が少なくない。たとえば、不動産関係の業務にかかわっていて、都市計画法や建築基準法を必要とするなら、その注釈書を見ればよいというわけである。そこで、公務員にも、行政法の講義は役立ちましたかと聞くと、昇進試験で役立ちましたという答えが返ってくる始末である。

 しかし、法の体系は、憲法を頂点に、私人間の権利関係や紛争のルールである民事法と国家の刑罰権の発動ルールである刑事法のほか、国家と国民の関係のルールである行政法が基本である。基本三科目というべきなのである。労働法、独禁法、租税法、知的財産法、社会保障法など、先端科目はこれらの応用で、それには行政法的なしくみが組み込まれている。

行政法は、行政手続法、行政不服審査法、情報公開法、行政事件訴訟法などの一般法のほか、都市計画法、地方自治法、環境法、運輸法、教育法、社会保障法等々無数にある。1800以上といわれる現行法のおそらくは七、八割は行政法関連法律であろうと推測する。会社や官庁で活躍される凌霜出身者も、民法や商法関連科目のほか、実は密林のような行政法関連法規と役所の解釈、指導の中で喘いでいるはずである。

 そして、行政法のルールは、法治国家など、共通のシステムで作られている。行政法は、形式的に「行政法」という法典がないだけで、重要性がないわけではない。前記の都市計画法も、行政法の一般理論を理解しないと、正しく理解できない。

私は、行政法が司法試験から追放されたときに強い反対運動を行った。その結果、その「改正(改悪?)」を阻止することはできなかったが、最高裁、法務省当局からは、行政法の重要性を認識し、司法研修所ではしっかり教えるという国会答弁を得た。

 その後、法科大学院が設置され、新司法試験制度が立案されるに当たり、この阿部の主張の骨を拾う形で、小生よりも若い学界実力者が動いて、行政法は憲法と統合されて「公法」として必修科目になったのである。そこで、新司法試験では、これまでの六法科目に行政法を入れた七科目が必修となり、公法系、民事法系、刑事法系という三つの法系が基幹科目となった。したがって、法典化された六法科目だけが重要だという錯覚を起こしかねない「六法」という言葉は死語にすべきであり、基幹三法群というべきである。

 そこで、一部の法科大学院では困ったことが起きている。学生は、完全な未修者以外は、基本「六法」は沢山勉強してきているが、行政法は学んだことがない。それなのに、学部では少なくとも八単位の勉強させる行政法に四単位くらいの時間しか与えられていない。これで複雑な事例を解決させる論文式問題を解けるように教育するのは至難である。

 こうした事情を理解しない学生は、行政法は難しい、やさしく教えろと要求するし、他の同僚も、なぜやさしく教えられないのだと非難しかねない。

 行政法の重要性をやっと理解したが、依然中途半端であるという、制度設計のミスのつけが回ってきたのである。

 行政法学者としては、基本科目に値するだけの研究を行い、すでに世間から見捨てられた感のある行政法学を再生しなければならない。私は来春定年になるので、次世代の方には、しっかり研究してほしいと願うところである。


 対行政の法務戦略」下記のものを整理して、中央経済社から、出版しました。

ビジネス法務誌05年9月号から連載しています。
 
  @「企業情報の公開9月号

    ・障害者雇用率の公開
    ・36協定の定める残業協定情報

  A「無理難題の同意取得・指導行政への対応」10月号

    ・高層建築阻止の指導に対する対処方法
    ・産廃処分場の設置と住民同意
    ・老人ホームと同意の取得要求
    ・合併処理浄化槽と近隣の同意

  B 「遡及立法」11月号

    ・土壌汚染と宅建業法ー三菱地所の土壌汚染隠し
    ・地下水汚染と浄化命令

  C「法治行政@」12月号

    ・2つの開発許可を得て工事する際、それぞれ隣の開発地を通って土砂を搬出しては
    ならない等の規制

    ・規制根拠の不明確さ=ラブホテルを建基法で規制できるのか

  D 「法治行政A」2006年1月号

    ・およそ合理的な根拠のない規制=パチンコ店を禁止する診療所の設置
    ・神戸空港隣接用地は安心して買えるか?

  E「法治行政B」2月号

    ・長沼町散骨禁止条例 
    ・保険医療機関の指定拒否

  F 「無茶な都市計画事業に巻き込まれた」3月号

    ・ 計画の差止めと補償

  G 「耐震偽造」4月号

 
 H「税法が会社をつぶす」5月号

  I  「民事法と公法」6月号

   J 「改正行政事件訴訟法の活用@」 7月号
   K 「改正行政事件訴訟法の活用A」 8月号
   L 「改正行政事件訴訟法の活用B」 9月号  当事者訴訟と仮処分
   M 「改正行政事件訴訟法の活用C」10月号
   N 「改正行政事件訴訟法の活用D,行政手続法を活用せよ」11月
   O「役所からの情報収集方法・民訴法92条による情報閲覧制限」12月号
   P「行政手続法と司法審査のあり方」2007年1月号
   Q「誤解を招く法令用語に注意@」2月号
   R「誤解を招く法令用語に注意A、法令の適用順序」3月号
   S最終回 「行政に対決する法戦略」4月号
ご愛読ありがとうございました。



以下、この連載の意図だけ転載します。

行政関連法務戦略の重要性

 今日、企業経営者にとって、法務戦略は極めて重要なテーマである。法的な詰めを誤ると、企業の浮沈に関わる。そして、その領域としては、もちろん、民事法が重要であり、その関連の論考は無数である。しかし、今日、企業活動は、蜘蛛の巣のような、行政規制に喘ぎながら行われているので、企業の法務戦略としても、行政法、対行政関連のものも重要であることを指摘したい。

 まず、行政規制は複雑であるから、その規制をしっかり勉強しておくことが必要である。法を知ることは、わが社に大きな利益をもたらすことも少なくない。他面、法に違反して、重大な損害を被ることも少なくない。最近の例に限っても、三菱地所が、土壌汚染を隠してマンションを販売して、宅建業法違反で取り調べられ、起訴こそされなかったものの、検察審査会に起訴の申立てがなされ、賠償金を支払わされた。橋梁メーカーが独禁法違反で刑事告発され、道路公団にも捜査の手が伸び、三井物産が、ディーゼル車規制に対する排ガス浄化装置のデータを捏造して販売していた事件で、元社員ら3名が逮捕された。

 そこで、わが社が違反しないように常に社内全般に法令コンプライアンス体制を構築しておかなければならない。そのためには、行政法規を熟知することが大切である。

 次に、これまで行われていた規制を信頼していると、方針が変更されるために不測の不利益を被ることもある。そこで、行政規制については、それが信頼するに値するのか否かを常に吟味することが肝要である。その例として、第1回は情報公開について述べる。

 行政規制には不合理なものが少なくない。従来はそれでも、ご無理ごもっともと従ってきたのが普通と思われるが、訴訟までは起こさなくても、論争して、その是正を求めることも可能な時代である。そこで、企業法務としては、行政に対抗できる理論武装をすることが重要なのである。

 さらに、日本では大企業同士で訴訟を起こすことはまれで、まして、中央官庁相手に訴訟を起こすことは、これまではまずなかったが、最近は、行政相手の大訴訟が増えている。たとえば、銀行界が、東京都の外形標準課税について訴訟を提起し、ソフトバンクが、携帯の電波割当をめぐって総務大臣相手に行政訴訟を提起し、解任された道路公団総裁が、国土交通大臣相手に訴訟を起こし、森ビルが、いわゆるPFI法に基づく衆議院議員会館の入札について訴訟を提起した。容器包装リサイクルの費用負担が重いと、ライフコーポレーションが行政訴訟を起こす動きがある。

 そして、2005年から行政事件訴訟法が改正され、行政訴訟を起こすことは多少容易になった。ただ、もともと、訴訟手続自体は、重要ではあるが、学ぶのにそんなに困難はない。行政法に通じない弁護士なら、出訴期間といった、イロハを間違うことがあるが、行政法を学んだ弁護士に頼めば、その点ではもともと間違うことも少なかったと思われる。しかし、肝心の実体行政法は、複雑で、難しい。訴訟で裁判所をも説得できる法戦略が必要になる。

2、企業の側から見た行政法戦略

 行政法は、公共性が阻害されないように、行政の手を通じて社会をコントロールする法システムである。そこで、行政法研究者としては、問題があるときは、行政はどのような法的手段を活用すべきか、また、そのために法律をどのように解釈できるかといった(いわばお上の立場の)発想になりがちである。しかし、逆に、行政の規制を受ける民間事業者等としても、その事業の展開に当たって、わが社の事業が行政規制に妨害されることなく円滑に行えるように、訴えられないように、処分されないように、法令コンプライアンスの視点から物を見ることも大事である。私は、これまで行政法を研究してきたが、このたび弁護士登録もしたので、このように事業者の立場からも物を見ることとした。

法と経済学とリスクマネジメントの視点

 ここで書きたいことがもう一つある。それは、法と経済学の視点とリスクマネジメントの視点である。私は、行政法学を専攻しているが、定期借家権制度の創設などに関わり、民事執行法、独禁法の改正なども提案したことがある。そこでは、特に、法と経済学の視点が入っている。また、法律問題においては、100点の名回答などないもので、実務においては、結局は、不十分な情報の中で、どうすれば、怪我が少なく、大きな利益を得られるかを、多面的に考察して、詰めていくことが大切だと思う。そこで、この連載では、民事法についても、そのような視点のもの入れる予定である。

新規出版

「さらなる行政訴訟制度の改革について(上・下)」
斉藤浩、高木光との鼎談)自治研究82巻3,4号、2006年3、4月号
 2005年の行政訴訟改革は行われたものでも極めて中途半端でしたが、さらに残された課題は山積しています。権利救済の実効性、両当事者の対等性の確保、法治国家の実現の観点から、さらなる改革が必要です。ここでは、私が問題を提起してお二方に議論して頂きました。

     一 行政訴訟第二次改革の構想

      行政裁量について

      行政立法・行政計画に対する行政手続・争訟手続の整備

      団体訴訟(以上八二巻三号)

      公金検査請求訴訟制度

      訴え提起の手数料

      弁護士費用の敗訴者負担

      不服申立期間

      その他の残された課題




「いわゆる4号請求住民訴訟が訴えの取り下げにより終了した場合は原告に弁護士費用を払うべき『勝訴(一部勝訴した場合を含む)』には当たらないとされた事例」
自治研究82巻9号122−145頁(2006年9月号)
 最高裁平成17年4月26日判決を批判した。被告が弁済したので、訴えを取り下げたのを「勝訴」でないとしたこの判決は明らかに間違いであると主張した。払えと請求したら、払ってくれたから、訴えを取り下げたら、勝訴として、依頼者は、弁護士の成功報酬を払ってくれる。最高裁にはこの常識が通じていない


行政法理論からみた水俣病最高裁判決の評価」
 水俣病研究4(弦書房、http://genshobo.com)、5−22頁。18頁。

 関西水俣病最高裁判決をふまえてNHKに出演したことを契機として、考察を重ね、解釈論のほか、政治過程、行政過程もふまえた複眼的考察のつもり。
さらに、衆議院調査局環境調査室『水俣病問題の概要』は、国会審議の参考のためのまとめである。ここにも短いものであるが、寄稿した。

 「立志 曲がったことが大嫌いの変革の人」
法学セミナー. 51(7) (通号 619) [2006.7]


「遊筆 裁判に対等性の保障を」
 労働判例2006年6月15日号(912号)

 「法律相談 住民訴訟にどう備える?」
判例地方自治. (275) [2006.4]

「区と都の間の訴訟(特に住基ネット訴訟)は法律上の争訟に当たらないか」
 自治研究82巻12号〜83巻3号(2006年12月号〜2007年3月号)
 住基ネット訴訟は、住民基本台帳法の解釈と適用を争うものであるが、地方分権改革の進展により、都と区の間も、行政の内部関係ではなく、対等な法主体間の法律関係と解される今日、諸外国に倣って、司法権が裁くべき「法律上の争訟」に該当すると解すべきである。そして、杉並区からの住民基本台帳法に基づくデータを受信すべき都の義務の有無を争点とするこの訴訟は、行政事件訴訟法4条の公法上の当事者訴訟に該当する。したがって、この訴訟は適法である。この論文はこれを論証しようとしたものである。
 これはもともと、東京地裁に意見書として提出したが、東京地裁平成18年3月24日判決(判時1938号37頁)はこれを認めなかったので、改めて東京高裁に意見書を提出した。



「処分取消訴訟を審理する裁判所の審理を尽くす義務−手続上の理由による取消判決に対する上告、あわせて国家賠償の判断回避の違法性−『高田敏先生古稀記念』(法律文化社、2007年)
 
取消訴訟で手続違法と実体違法の両方が主張されているとき、裁判所が前者だけで取り消すと、やり直しになり、実体違法の審理が遅れる。この場合裁判所には実体違法の判断をする義務があることを主張したものである。(高田先生の古稀記念は、遅れて、実質は喜寿記念になったが、先般パーテイが開催された。喜寿まで教授現役でご活躍なのは、誠におめでたいこととと主に、うらやましく、小生の人生の目標が増えた次第)。
 


「ひよこ弁護士闘争記ー神戸の住民訴訟、神戸空港編」
(外間寛先生古稀記念、法学新報112巻11・12号)

要旨:これは、弁護士実務の体験の一部を報告するものである。登録後、多忙な教育業務の間に、弁護士の一年生として、1年間種々の体験をしたが、特に、神戸では、神戸空港訴訟平成11−15年度(大阪高裁、最高裁)、平成16年度(大阪高裁、最高裁)、平成17年度(神戸地裁)と、7件にも上るいわゆる職員厚遇裁判(公金横領裁判)(神戸地裁で、平成18年3月23日初勝利、19年1月19日二件、一部勝訴、大阪高裁係属、ほかは目下神戸地裁)の住民訴訟を代理している。この過程で、裁判所の訴訟指揮があまりにも被告寄りであること、事実認定があまりにずさんであること、その法解釈がありえないような、脱法行為を認めるようなものであること、住民訴訟4号請求の平成14年改正が完全に改悪であることが実証されたと思う。ここでは神戸空港裁判を報告する。
 実体法の点では、神戸空港の告示区域外に、小型機用地を造成して民間に分譲して、神戸空港の建設費の一部をまかなうというのが神戸市のプランである。その土地は倉庫では売れるはずがなく、その土地にエプロン、誘導路を造らせ、飛行機は、神戸空港の外の民有地から、お客を乗せて、地上走行し、神戸空港の中に管制官の許可を取って進入して滑走路から飛ぶというのである。しかし、誘導路、エプロンは、飛行場施設の一部であるから、飛行場設置許可(航空法38条以下)を取って、飛行場内に入れなければならないのであり、そうすると、それは神戸市所有にしなければならない(航空法39条1項5号)から、売却することはそもそも法的に不可能である。神戸空港の外で、顧客を乗せるのでは、ハイジャックなどの安全性も確認できず、もちろん、誘導路上の事故対策も行われていない。神戸空港内に進入する許可制度もないし、あるとしても、管制官が許可できるわけではない。この点は一見明白である。
 こうして、この用地の造成は明らかに違法、重過失があり、損害もあるので、市長には賠償責任があるのである。
 しかし、神戸地方裁判所は、この土地は、通路であり、誘導路、エプロンとをするのは、「ことさらに、こじつけ」たものとした。しかし、神戸市の埋立願書でも、この土地は誘導路、エプロンとなっているのである。大阪高裁は、告示区域外の本件土地と神戸空港は、明確に分離されているから、前者は許可を要しないとするが、管制官の許可で進入できるなら、一体として利用されているものであり、分離されているというのは脱法行為である。「ことさらにこじつけ」ているのは、神戸市と裁判所である。
 このように、この訴訟を経験して感ずることは、裁判では、実質は書面審理で、原告は、裁判官が納得していなくても、その点を察知することができず、被告は、沈黙作戦を採れば勝たせて貰えるのである。原告は、被告と裁判所の両方を相手にしなければならない。これらの点では、全く吃驚するばかりである。どうすれば、裁判官を納得させることができるのか、ご教示を賜れば幸いである。
 ところが、最高裁第三小法廷は、上告を不受理とした。小生の主張だけなら信用されないかと、高木光学習院大学教授にもご検討を頂いて、ほぼ同方向の意見書を提出して頂いたが、最高裁では、これが上告受理理由である重要な法解釈の問題にならないというのである。
 全く信じがたいことである。
 これからは、飛行場とは、滑走路だけで、エプロン、誘導路は民営化して売却して、儲ければよいことになる。

 2007年1月 矢野誠編著『法と経済学』(東大出版会) 2800円

 法学と経済学の共同作業による新しい法制度建設の提案。企業と産業、金融と資産、労働と教育・研究について検討、私は、定期借家について検討したものを掲載した。152頁以下。法律家の多くには苦手な経済学の基礎用語の解説もあり、法律家にも、新しい視野が開ける好著のつもりである。

実務公法学会編『実務行政訴訟法講義』(民事法研究会) 6700円

 帯によれば、改正行訴法の重要論点を摘示し、訴訟の実務指針と解決方法を明示するとともに、関連書式も収録した実務的手引き書である。私は、「新裁量統制」を執筆した。100頁以下。

上訴棄却の場合の未決勾留期間の不算入の違憲」
まだ最高裁があると思って、上告したが、棄却されたら、その間未決勾留で拘束された場合でも、その分は無視されて、刑に服しなければならない。上訴は権利かと思ったら、やぶ蛇である。執行猶予付刑の場合、すなおに降りれば、執行猶予期間は早く終わるのに、上訴するとその期間が遅れる。とにかく、上訴という権利を行使すると損だというのが現行制度である。これは正当なのだろうか。現代人文社のご厚意で、近々公表されることとなった。

季刊刑事弁護50号 2007年4月刊行


地方議会による賠償請求権の放棄の効力

 住民訴訟で敗訴した自治体で、議会が賠償請求権を放棄し、裁判所がそれを適法と判断することが増えている。そんなことが許されるのか。議会は代理人であって、住民の財産を預かっているのであるから、市長の債務を免除するために、勝手に放棄することは許されない。
 この私見は、判例時報社のご厚意により07年3月21日発行誌に掲載された




450 「行政手続法の整備の意義、聴聞手続と司法審査のあり方」法学新報114巻1・2号、3・4号

451  「期間制限の不合理性―法の利用者の立場を無視した制度の改善を」『小島武司先生古稀祝賀 民事司法の法理と政策 下巻』(商事法務、2008年)1−45頁。

452 「地方公共団体が高額不動産をコンペ方式に基づく随意契約により廉価売却することは適法か」判時1979号(平成19年11月11日号)30−36頁。


「行政法解釈のあり方」自治研究83巻7〜84巻1号 



  「住民訴訟における住民側弁護士の『勝訴』報酬の考え方
ー判例の総合的検討」判時2007、2009,2010号(2008年)
横浜市勝馬投票券発売税に対する総務大臣の不同意処分(1)(2)
 自治研究85巻1号19頁〜57頁、2号19〜37頁。


「『行政法解釈学』の目指すもの」書斎の窓584号16〜22頁(2009年5月号)

 「裁判による政策の実現― 厚遇裁判、ネズミ捕り訴訟を例に」
中央大学総合政策学部編『新たな「政策と文化の融合」:総合政策の挑戦』(中央大学出版会、2009年)

「住民訴訟、住民監査請求の改革 (特集 行政事件訴訟法改正の第2ステージへ)」 自由と正義60巻8号16ー24頁 (2009年8月号)。
 
「対談 官・民対等の新たな租税制度の構築を目指して(上)(下) 官無謬論へのアプローチと対等関係の創造」(三木 義一との対談)、税理52巻11号79〜91頁(2009年9月号)、同13号129〜144頁(9月号)。

 「地方議会による地方公共団体の賠償請求権の放棄は首長のウルトラCか(上・下)」自治研究85巻8号3〜34頁、85巻9号3〜29頁(2009年)
「残業・休日労働に関するいわゆる三六協定の情報公開について(1)(2)」自治研究85巻10,12号(2009年)

 「地方議会による地方公共団体の権利放棄議決再論ー学説の検討と立法提案」自治研究85巻11号3〜35頁(2009年)






最近の判例解説
116 「火災原因の情報公開(横浜市)
一 横浜市公文書の公開等に関する条例9条1項1号にいう「個人に関する情報」とは、単に個人に関する情報であればたり、文書公開の制度の主要な趣旨が市政の監視にあることからすると、当該公文書が市政の内容を明らかにするという性質のものではない場合には、個人識別の可能性の低い情報でも非公開にすることができるが、広く知られている個人情報は公開するのが相当である。
 二 出火場所の番地、焼損面積、出火原因のうちの経過及び着火物等々を、右条例にいう個人識別情報に該当するものとして非公開とした決定が適法とされた例」
 判治232号98−100頁(平成15年1月号)、計3頁

 117 「山林高額買い取り住民訴訟事件−ぽんぽん山訴訟事件(京都市)」
 判治235号26−28頁。計3頁。

 118 「Oー157食中毒の原因食材に関する調査結果公表の賠償責任」
 判治236号114−117頁、計4頁。

 119 「指名競争入札のさい談合を行った業者に対して、県が損害賠償請求権の行
使を違法に怠っているという事実に関する住民監査請求は、県がその業者と契約を締
結することとなっても、特定の財務会計上の行為の違法を判断することを求めるもの
ではないので、地方自治法242条2項に定める監査請求期間の制限を受けない。」
判評536号=判時1828号170−176頁。

 120 「小田急訴訟高架化事業認可取消訴訟」
  ジュリ環境法判例百選3版86−89頁、計4頁。

 121 「監査請求期間徒過の正当な理由(仙台市)」
 (最高裁平成14・9・17判決)
判治248号(2004年3月号)19−21頁、計3頁。

 122 「運転免許取消処分取消請求事件(兵庫県)
 先になされた誤った教示の効果が,後になされた適切な教示により失われた結果,
行政事件訴訟法14条4項の「行政庁が誤って審査請求をすることができる旨を教示
した場合」にあたらないとして,運転免許取消処分の取消しを求める訴えが不適法と
された事例」
 判治254号112−115頁、計4頁

123 「水道水源保護条例における町と業者の協議義務ー紀伊長島町条例の最高裁2004年12月24日判決ー」
インダスト2005年3月号  4頁=
「水道水源保護条例における町と業者の協議義務が認められた事例」北村喜宣編『産廃判例を読む』(環境新聞社、2005年)120−129頁。計10頁。

2006年
いわゆる四号請求住民訴訟(平成一四年改正前)が訴えの取下げにより終了した場合は原告に弁護士報酬を払うべき「勝訴(一部勝訴を含む。)した場合」には当たらない
最高裁平成一七年四月二六日第三小法廷判決(平成一五年(受)第一七七一号、弁護士費用請求事件)判時一八九六号八四頁、判タ一一八〇号一七四頁 自治研究82巻9号139頁以下(2006年)


最近の著書
28 『対行政の企業法務戦略』(中央経済社、2007年) 
29 『行政法解釈学T』(有斐閣、2008年) 
30 『行政法解釈学U』(有斐閣、2009年) 
31 『行政法(学)の再生(進路)』(中大出版会、2010年予定) 

16 『自治体の出訴権と住基ネット訴訟』(兼子仁と共編著、信山社、2009年)







 『やわらか頭の法戦略』(第一法規、2006年6月刊行)


『環境法 第3版補訂版(淡路剛久氏と共編、有斐閣、2006年4月)

 
 阿部泰隆・淡路剛久『環境法』の「第3版補訂版」が、四月に公刊されました。
  最新の法律と判例を取り入れました。共同執筆者のおかげです。環境法の体系書の
  一つとして、ご参照賜れば幸いです。


『行政法の解釈(2)』(信山社、2005年春刊行)

『京都大学井上事件』(信山社、2004年)

『行政書士の未来像』(信山社、2004年)

『政策法学講座』(第一法規、2003年7月)

『行政訴訟要件論』(弘文堂、2003年6月)

『内部告発[ホイッスルブロウワアー]の法的設計 

 ー社会浄化のための内部告発者保護と報奨金制度の設計ー』(信山社、2003年5月)

『行政の法システム入門』(放送大学教育振興会、1998年3月)

『政策法学と自治条例−やわらか頭で条例を作ろう』(信山社、1999年6月10日)

「定期借家権」(野村好弘、福井秀夫氏と共編、信山社、1998年3月)

『環境法 第2版』(淡路剛久氏と共編、有斐閣、1998年)

欧文論文集編集 
  Prof.Dr.Yasutaka Abe,Verwaltungsrecht,Umweltrecht,Administrative law,environmental law in Japan
 (後掲の独英論文10編を集めたもの、私製版。必要な方はご連絡下さい)

『湖の環境と法−琵琶湖のほとりから−』
 (共編者、中村正久、日本生命財団助成、信山社出版、1999年)

『山村恒年先生古稀記念 環境法の生成と未来』
 (共編者、水野武夫、信山社、1999年)


  

田中二郎先生生誕100周年記念の集まり

 

 7月14日、恩師田中二郎先生生誕100周年記念のパーティが行われた。山本隆司教授、可部恒雄元最高裁判事の講演の後、多数の方の参加を得て、懇談がなされた。授業を終え、教授会をさぼって、遅れて参加した。

 田中先生の偉大なる業績やその後の後輩の進むべき道などが種々議論されたのではないか。

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』を借りると、田中 二郎たなか じろう19067月14 - 19821月16)は、兵庫県生まれの行政法租税法学者。1964 - 1973最高裁判所判事。美濃部達吉の弟子。1976日本学士院会員1980文化功労者

戦前から昭和30年代までの日本の行政法学をリードした学者であり、美濃部が打ち立てた自由主義的行政法理論を継承・発展させた田中説は、基本法典を持たない 行政法という分野での通則としての機能を果たした。また門下に有力な行政法学者を多数輩出しており、現在最高裁判所判事を務める藤田宙靖東北大学名誉教授もその一人である。 その主著『行政法(上)・(中)・(下)』(弘文堂)は、公務員試験・司法試験における基本書として長く用いられ、行政法に関する「通説」としての役割を果たしてきた。妻は商法学者で東京帝国大学教授や帝国学士院院長等を歴任した岡野敬次郎の娘。娘は行政法学者で東京大学名誉教授塩野宏に嫁いでいる。

略歴

         旧制神戸第一中学校(現兵庫県立神戸高等学校)卒

         旧制第五高等学校(現熊本大学)卒

         1929東京帝国大学法学部政治学科卒。

         1928高等文官試験行政科試験合格

         1929年 東京帝国大学法学部助手

         1931年 東京帝国大学法学部助教授

         1941年 東京帝国大学法学部行政法第二講座教授

         1959年 東京大学法学部長(1961年まで)・行政法第一講座教授

         1964年 最高裁判所判事(1973年まで)

         1967年 東京大学名誉教授

         1974弁護士登録

主な著作

         『新版 行政法上巻 全訂第2版』(弘文堂1974年)

         『新版 行政法中巻 全訂第2版』(弘文堂、1976年)

         『新版 行政法下巻 全訂第2版』(弘文堂、1983年)

         『行政法総論』(有斐閣1957年) 『租税法〔第3版〕』(有斐閣、1990年)

 

 小生は、1963年夏田中先生に弟子入りの許可を得たが、先生が、東大の定年を後3年残して、1964年春に最高裁入りされたので、雄川一郎先生が、いわば長男が末っ子を養子に取るごとく、債務承継をしてくださった。私の学年は、田中二郎先生の講義の年で、雄川先生の講義を聴いたこともなければお顔を拝見したこともなかった。相続放棄や、限定承認されたらどうなっただろうか。

 ということで、小生にとっては、田中先生も雄川先生も師匠であるが、形式的・法的には雄川先生だけが師匠であり、田中先生の弟子扱いにはされていない。上記の塩野宏先生も、実質的には師匠であるが、形式的には兄弟子である。

上記の藤田宙靖最高裁判事は、1年先輩で、田中先生の助手であった。ただ、彼の年は雄川先生の年で、雄川先生は、いつも、藤田君は、行政法1,U,V、フランス公法、ドイツ公法、租税法と全部優だと褒めちぎるので、当然とは言え、恥ずかしかった(授業は、ある学年は田中先生、ある学年は雄川先生となっていた。小生の場合、行政法は田中先生、租税法は金子宏先生)。

 当時の東大行政法研究室の慣行で、雄川先生の学年でも、全て田中先生の弟子とするということになっていたので、藤田さんは、田中先生の弟子となった。しかし、もちろん、1年間だけで、その後は雄川先生の弟子ということになった。

 正式には、藤田さんが田中先生の最後の弟子ということになり、私が、最初から雄川先生の助手となる最初となる。いつも藤田さんの下で勉強していたが、この前は最高裁で記録を読むため藤田さんの下の部屋で長時間座っていた。

 兄弟子に当たる、遠藤博也先生が亡くなられてから、すでに10年以上経つ。彼が生きていたら日本の行政法学はかなり変わっていたのではないか。誠に残念である。

そのほかの方については、今回は言及をやめる。

 

 

 

 

 

 

 


   

                   

 
          阿部泰隆の研究・出版
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