地上波デジタルのワンセグ放送が2006年4月に開始されてから、約一年。
ワンセグ受信末端の種類も少しずつ増え始め、携帯電話ではワンセグが主流アイテムになりつつある。
また携帯以外にもカーナビやポータブルDVD、電子辞書等にワンセグが視聴出来るタイプも多くなった。更にパソコンでワンセグを楽しめるアダプタも増えている。
その一方で、ワンセグ専用受信機はあまり目立たなかったが、2007年に入ってからやっとちらほら各メーカーから発表されるようになった。
ところで最近、ワンセグが俄にDXerの間で注目されつつあるようだ。
元々、デジタル放送は受信エリアがアナログ放送よりも狭く、あるレベルを境に全く受信出来なくなる性質を持っており、遠距離受信は難しいと諦められていた。
ところがワンセグは意外に遠距離に飛ぶという。なぜか?
簡単に解説すると地上波デジタル放送は一チャンネル6MHzの帯域幅を13個のセグメントに分割して放送している。そのうちの一つを移動体末端のために割り当てたものがワンセグだ。
つまりワンセグは移動体末端でも安定して受信出来るような設計がされたサービス。
データーが軽く微弱な信号でも復調可能なので、思わぬ遠距離受信が体験出来るという。場合によってはアナログ放送よりも受信エリアが広い。
詳しくはこちらを参照。
つまり新たなDX対象として注目を浴びつつあるジャンルがこのワンセグなのだ。
すでに携帯電話のワンセグ末端を使った遠距離受信レポートもネット上に数多く見られる。
そこで私も遅まきながらワンセグDXに挑戦する事にした。
まずはワンセグ末端を何にするかの選考である。
冒頭で述べたようにワンセグ末端は数多く出始めてはいる。しかしどうもこれというものが見つからない。
まず携帯電話だが、殆ど携帯を使わない自分にとっては月々の基本料金を考えるとコストパフォーマンスが悪い。携帯会社と契約しないとワンセグ末端は使えないシステムになっているらしく、純粋な受信機として所持出来ないのは痛い。
また車も所持していない徒歩派なのでカーナビも除外。DVDや電子辞書も容積や余計な機能(主体がワンセグではない)が多く、これらも除外。
パソコンでワンセグを受信出来るアダプタもウインドウズが殆どで、マックでは使える製品が限られるし、どうもパソコンと受信機を兼ね合わせるというのは性に合わない。
また屋外での受信を考えるとノートパソコンでは大き過ぎて機動性に欠ける。
結果的に選択肢はワンセグ専用ポータブル受信機となるのだが2007年4月の時点で主だった製品は3種類位しかみつけられなかった。
そこでこの3機種の機能を比べてみた。
SONY XDV-100 | BTV-400 |
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機種 | 通勤型FM・AM・ワンセグ受信機 | ポータブルワンセグ専用受信機 | ワンセグ搭載デジタルオーディオプレーヤー |
ワンセグ受信チャンネル | 13〜62ch | 13〜62ch | 13〜62ch |
EPG(番組ガイド)/データ放送サービス対応 | 対応/未対応 | 対応/未対応 | 対応/未対応 |
連続視聴時間 | 5.5時間 | 4時間 | 7時間 |
録音録画機能/録画時間 | なし | なし | あり(HDD付)/140時間(30GBタイプ) |
モニター液晶の大きさ | 2.83インチTFT | 4インチワイド・カラーTFT液晶 |
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外部アンテナ入力端子 | なし | なし | あり(F型コネクター変換) |
その他の出入力端子 | ヘッドフォンステレオミニ3.5mmジャック1 | USBminiBコネクター/イヤフォン3.5mm端子/拡張端子 | USB2.0/1.1/イヤフォン3.5mm端子/ビデオ出力端子 |
電源 | 充電池 | 充電池/ACアダプター | 充電池/ACアダプター |
寸法 | 98.3×61.0×15.1mm | 126×70×11mm | 124×75×19.5mm |
質量 | 110g | 120g | 230g |
店頭価格(07年4月現在) | 4万円弱 | 3万円弱 | 3万円強 |
発売日 | 2007年4月 | 2007年初頭 | 2006年末 |
なんといっても本命はソニーの新製品SONY XDV-100であろう。
いわいるワンセグが「おまけ」ではなく、メインがワンセグという正真正銘ワンセグレシーバー真打ちの登場だ。またAM、FM放送が受信可能というのも嬉しい。というよりポータブルラジオ受信機として初めてワンセグを導入した記念すべき製品といえる。
古典的ラジオの血統を継いでいるプロポーションもBCL世代の魂をくすぐるものがある。
これからワンセグ受信を楽しむにはこの機種しかない・・と言いたいところなのだが、残念な部分もあるのだ。
まずVHF〜UHF帯遠距離受信に不可欠な外部アンテナ端子がないのが最大のネック。付属のロッドアンテナだけではDXは難しい。
また録音、録画機能もない。もっとも小型軽量を追求した製品なのでこの辺りは致し方ないかもしれぬ。
またせっかくFM/AMラジオ受信機能があるのだからデジタルラジオも搭載してほしかった。
更には発売間もないので、家電量販店でも4万円弱と価格が高いのもネック。
一方ブルードットというメーカーが出しているBTV-400はどうか?
これは本当のワンセグ専用ポータブル受信機だ。他の機能は一切ない。ラジオ受信機能もなし。一方でデザインやモニター画面は、この3機種の中で最も卓越している。
しかし、遠距離受信用としてはソニーの製品と同じく、外部アンテナ端子もなくちょっと役不足。シンプルな割には価格もそれほど安くない。
残る製品はTOSHIBA V30Eギガビート。
ギガビートはワンセグ搭載デジタルオーディオプレーヤーであって、厳密に言えばワンセグ専用ポータブル受信機ではない。いわばアップルのipodにワンセグ受信機能が付いているようなもの。HDDが30GBタイプ(V30E)と60GBタイプ(V60E)がある。ワンセグ受信性能に関しては同じだから録画時間にこだわらなければ30GBタイプのV30Eでよい。当然ながらこちらのほうが低価格だ。
ウインドウズのパソコンに接続すれば音楽や画像をいろいろ編集して楽しめるらしいのだが、マックユーザーの自分にとっては「宝の持ち腐れ」。ちょっともったいないが仕方ない。
ただし、このギガビートV30Eにはワンセグ遠距離受信の必須アイテムである外部アンテナ入力端子がある。これが最大のポイントだ。
3機種の中では唯一録画機能(30GBタイプで140時間)があり、連続視聴時間も7時間と最大だ。
更にはこれだけの機能が搭載されていながら価格がお得。ソニーの新製品より一万円近く安い。
07年4月現在、家電量販店で3万円弱で売られている。おそらく過当競争ぎみのデジタルオーディオプレーヤーだから発売後急速に販売価格が下がっているのだろう。
現時点ではこのギガビートがポータブルワンセグ「専用」受信機としてはもっともコストパフォーマンスがよい製品と言えよう。
という訳で、機種選考はこの東芝ギガビートに決定した。
このギガビートV30Eに外部アンテナを接続するにはオプションの外部アンテナケーブルMEVAJC10を別途購入しなければならない。
詳しいメーカーサイトの解説はこちら。
これを本体の拡張コネクターに接続するとF型コネクターでアンテナケーブルと接続する事が出来る。
家にあるDX用ログペリアンテナのケーブルコネクターはアマチュア無線用のM型なのでF型との変換コネクターを使って接続する。
さてこの外部アンテナケーブルMEVAJC10だが、ケーブル部分が細く固いので柔軟性に欠けており下手に力が掛ると呆気なく断線する恐れがあるのでかなり慎重に扱わねばならない。
無骨なアマ無線用のケーブルに直接繋げるのは危険。中間にF型コネクターの付いたケーブルを中継させた方が安心だ。
アンテナを接続できたら、さっそく受信を開始する。
ところでこのギガビートのワンセグ選局方法であるが、「全局スキャン」と「地域から設定」の2種類しかなく、チャンネルを一つ一つチェックするマニュアル受信が出来ない。
更に物理チャンネル(UHFの送信チャンネル)が表示されず、今受信している局が何チャンネルなのか解らないのだ。便宜上の3桁の数字が局名の頭に付いているだけ。
これでは遠距離受信時に送信地点を判断する事が著しく困難である。
選局方法だけに限れば、やはりワンセグは「おまけ」という感じがする。ソニーの新製品SONY XDV-100のカタログをみると、こちらはちゃんとマニュアル選局出来るようである。
それはさておき、とりあえず「全局スキャン」で受信局数を確認してみた。
外部アンテナ/付属のロッドアンテナで自宅2階ベランダ/付属のロッドアンテナで屋内という3条件でのスキャン受信情況を比較してみた。
以下がその結果だ。
受信出来る局数 | 備考 | |
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外部ログペリアンテナ |
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東京タワー全局と周辺県域局。アンテナの向きによって局数や局の種類が大きく変化する。 |
付属アンテナで自宅2階ベランダ |
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東京タワー全局とTVK。場所によってテレビ埼玉も受信可。 |
付属アンテナで屋内 |
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東京タワー全局。僅かの動きで局数が変化する。 |
面白い事に、屋外アンテナ使用時と屋内で付属アンテナ使用時とで、スキャン時に受信出来る局数はさほど変わらない。
特段屋外アンテナを使ったからといって受信局数が増えないのは興味深い。
逆にいえば、付属のロッドアンテナでもTVKやテレビ埼玉が復調出来てしまうのがワンセグの面白いところか。
但し屋内の場合は、ほんの僅かに動いただけで復調出来なくなるなど不安定極まりない。安定した視聴には屋外アンテナは必須だろう。
さて、以下の表が自宅にてワンセグ放送をギガビートV30Eで受信した局名リストである。
外部アンテナ/付属のロッドアンテナで自宅2階ベランダ/付属のロッドアンテナで屋内という3条件での受信情況を比較してみた。
物理ch | 出力W | 局名(所在地) | 距離Km | 外部アンテナ使用時 | ベランダにて付属アンテナ | 屋内にて付属アンテナ | 備考 |
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27 |
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外部アンテナでフルスケール。屋内でもほぼ安定。 |
26 |
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外部アンテナでフルスケール。屋内でもほぼ安定。 |
25 |
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外部アンテナでフルスケール。屋内場所によってNG。 |
24 |
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外部アンテナでフルスケール。屋内場所によってNG。 |
23 |
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外部アンテナで安定。屋内場所によってNG。 |
22 |
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外部アンテナでフルスケール。屋内でもほぼ安定。 |
21 |
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外部アンテナでフルスケール。屋内でもほぼ安定。 |
20 |
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外部アンテナで安定。屋内は厳しい。 |
18 |
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外部アンテナでフルスケール。ベランダでも受信可能。屋内圏外。 |
19 |
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外部アンテナで受信可能か。群馬はワンセグ放送未実施局。 | |
30 |
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外部アンテナでギリギリ受信可能レベル。 |
32 |
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外部アンテナでフルスケール。ベランダでも場所により受信可能。屋内圏外。 |
概ね東京タワーから送信されている10kw級の局は屋内でも不安定ながら全局受信出来た。
屋外アンテナを接続しアンテナを東京タワー方面に向ければ全局ほぼフルスケールである。近県の県域局も送信所方面に向ければ同様に良好な受信が望める。
結果的に屋外ログペリアンテナを使わないと受信出来なかったのは船橋の千葉テレビのみ。あと群馬テレビも受信マークが表示されたが復調出来ず。
これは群馬テレビがまだワンセグ放送を始めていないからであろう。
山梨や静岡、長野のワンセグ局も狙ってみるがチャンネルが重複しているようで受信を確認出来ない。アナログ放送は弱いながら受信可能だったのだが。
余談だがワンセグ放送は字幕や番組ガイド(EPG)に対応しており、受信している局名が表示され便利だ。局名確認のためにIDを待つという手間が省けて大変楽である。
いまのところ、自宅のみのワンセグ受信実験なので今後はいろいろな受信ポイントに出向いてワンセグDXにチャレンジしてみたい。
ただ、この東芝ギガビートは先に記したようにマニュアル選局が出来ない。
今後ワンセグDX機として購入を考えるならばソニーのXDV-100やワンセグ携帯の方が良いかも知れない。録画機能や外部アンテナ端子は是非とも欲しい機能ではあるが。
おそらく今後は、もっと多機能、たとえばデジタルラジオ付で受信性能や選局性能も優れたワンセグ専用ポータブル機が次々と出現するだろう。
ワンセグDXはまだまだ始まったばかりである。
なお、ワンセグ放送のエリア情報や送信所の位置、各放送局の送信所別チャンネル割り当て情報は地上デジタル放送推進協会やマスプロアンテナのサイトに詳しく載っているので参考にするとよいだろう。
またワンセグについて分かりやすい解説や情報入手にはワンセグTV.comというサイトが便利だ。
2007年4月記