1987年〜2003年における17年間のEs伝播データ自己解析

このコンテンツでは私が本格的にEs伝播受信を始めた1987年から2003年までの受信記録を解析してEsの出現時間、時期、年度別の傾向をまとめてみました。

受信地はすべて東京都杉並区での記録です。アンテナは地上高10mFM八木5エレ及びログペリアンテナ。

受信機は1987〜90年/VICTOR TX900・1990年〜2002年/KENWOOD KT1100D・2003年〜PIONEER F777を使用しました。いずれもオーディオ用のFMチューナーです。

なお、受信対象にしたのはFM放送帯における国内FM、および周辺諸国のFM局のみです。その他VHF帯のEs伝播データは含んでおりません。また海外FM局の情況も大雑把にしか扱っておらず、たとえば中国語局は特に地域を明確にせず、単に受信地点からの距離と大凡の方角の目安として処理しています。あくまで国内FMEs伝播をメインとした自己解析であることを御承知おき下さい。

1.時間別のEs平均入感日数について

これは1シーズンの内、どの時間帯で何日間受信されたかの平均日数を調べたものです(図1)。

最高値は10時〜12時の17.7日でした。

一般に言われているようにお昼前の10〜12時、そして夕方から夜に掛けての16〜18時の時間帯にピークがあることが解ります。

これはEsの発生する高度100Kmの風の動きや磁力線の日変化に連動していると思われます。

一方で早朝や深夜近くにも1シーズンに平均1日前後僅かながらEs伝播を記録する時があり興味深いものがあります。

2.週間別Es平均入感日数について

これはEsシーズンを18週に分け、各々の週の内、何日Es受信が記録されたかを17年間の平均で見たものです(図2)。

これによると5/15過ぎの週より急に増え、7/25以降の週は急激に減っています。最高値は6月12日〜18日の3.82日。週の半分以上でEs伝播受信が記録されています。Es伝播が、夏至の頃を中心に活発になっていることからも、太陽の影響がEs発生に深く関っている事が解ります。

特に著明なピークというのはありませんが6/12〜18の週と7/10〜17の週が活発です。この間、1ヶ月弱。太陽の自転周期が約27日ですから、何か関連性があるのかもしれません。

3.地域別Es入感日数について

これはシーズン中にどの地域のFM局がEs伝播で何日受信できたかを17年間の平均日数で見たものです(図3)。

最もポピュラーなEs伝播距離、即ち受信地東京から半径1000〜2000Kmに位置する中国大陸方面のFM局が著明に記録されています。

近年は中国の沿岸地域のFM局激増に伴い、Esが発生すれば必ずと言ってよいほど中国語局が入感してきます。シーズンを通じて平均26.2日記録されています。一方、国内では最も頻度の高い沖縄方面がシーズン平均16.9日Esで入感しますが、距離1000Km以内の国内近距離Es伝播は10日ほどしかチャンスがありません。特に距離700〜500Km前後の強力近距離Es伝播はシーズンを通じ4日程しかなく、タイミングを逸すると近距離Esを経験せずにシーズンが終わってしまう年もある程です。

4.年度別に見た著明Es受信記録

これはシーズン全Es受信日数のうち、強力なEsがどれだけ含まれていたかの率を表わしたものです(図4)。強力なEs伝播の基準(これを便宜上「著明Es」と呼称する)は受信地からの半径約1000km以内の国内FM局(鹿児島、旭川辺りを基準とする)が受信出来た日を指します。

ところでこの記録は24時間フルモニターではないので、受信者のアクティビティーに左右される部分もあり、数値が高いからと言って必ずしもその年のEsが活発であったと言う訳ではありません。

とはいっても1990年代は総じてEsは活発だったと考えて間違いはないでしょう。

年を追って見ていきますと、私が本格的にEs伝播受信にのめり込んだ1986年から1988年は民放FM開局ラッシュ。と同時にEs伝播コンディションも比較的FBでした。ところが1989年〜1991年は非常に低調。特に1990年はアクティビティーが高かったにも拘わらず、シーズン中Es受信60日のうち著明Esは僅か15日(著明Es伝播受信率25%)。

しかしその2年後、1992年は一転してEsは活発化。特に1993年(著明Es伝播受信率43.9%)と1995年はシーズン中著明Es伝播受信が20日を越すという大変FBな年だった。そして1994年も著明Es伝播受信率が5割を突破しています。1992年以降2000年までの9年間は、著明Es受信率は35%を割る事なく好調な期間だったと言えましょう。

不思議な事に太陽活動11周年のピークとEs伝播の頻度は相反するようで興味深いものがあります。

この17年間で、そのピークは1991年と2002年でしたが、確かにその年はそれほどEs伝播が盛んではありませんでした。

21世紀に入り、再びEsは不活発になったかのようですが、受信者のアクティビティー低下も一因であり、明確なことは一概に言えません。

なお、このレポートは、以前KDXC(関東DXersサークル)機関誌『CALL SIGN』および、三才ブックス刊ラジオライフ別冊『AM/FMラジオ完全受信マニュアル1995年版』に執筆投稿したFMDX関連記事に最新データを取り入れて再構成したものです。

2004年5月記


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