7/10,11報告

【凹作】


【2003年7月10日】

前夜はとんでもない好成績(←我が家基準)。

凹ジュニアーズのお兄ちゃんの方は、これを目の当たりにして火がついてしまったようであります。

「今夜は絶対連れて行ってね」と、朝の出掛けにも再確認されてしまいました。

 

この日は朝から雨が降ったり止んだり。

こんな夜は採れる気がしないからあまり行きたくは無い。

 

しかし、会社から帰るなり、いきなりお兄ちゃんからの確認が入る。

「クワガタ、行くよね?」

凹作の揺れていた気持ちを察してか、何とも詰めの堅いお兄ちゃんであります。

 

お兄ちゃんの確認の詰めの堅さに気圧されて、この夜もクワ採集に行ってしまいました。

 

 

出発したのは夜の九時。

木曜日の遅い時間なので残念ながら妹の方は居残りです。

 

 

予想通り、この日はゼンゼンダメ。

 

ポイント内の樹ごとにボーズを採集しつつ、そのお返しにゼリートラップを仕掛けて回ります。

トラップは、土曜の採集へと望みを託す具体的な印なのであります。

 

コクワ少々しか採れぬまま、帰路のポイント出口の近くに戻ってきてしまいました。

ここにはプチ灯火トラップのつもりの携帯蛍光灯を置いてありました。

一応クワが居ないか見やるが何も無し。

 

最後の確認とばかりに、その近くに置いたゼリートラップ周りをお兄ちゃんが確認するがダメ。

私も念の為、お兄ちゃんの見たところを確認して...

 

ん?いるぢゃん!

 

よくよく見たら52mmのノコ♂がゼリーの近くにやってきていました。

う〜ん、確認の詰めのシツコサが最後に功を奏したこの日の採集でありました。

 

 

逆に、確認の詰めの甘さが人生最大の受難を招くことになった例を、警鐘の意味を込めて紹介しておこう。

これは、かつて私のアシスタントをしてくれていた女性が、自ら語ってくれた話しなのでかなり説得力がある。

 

 

彼女の御母堂様が教鞭をとる小学校で募金が行われ、御母堂様は小銭ばかりで集まった貴重な募金を両替しておこうとしたのだそうだ。

 

一方の彼女は、焼き芋を買って自宅に戻っていた。

 

翌朝、御母堂様は、出掛け前の寝ぼけ眼の彼女に、お札に替えておいてくれるようにと小銭の詰まった茶色い紙袋を指して頼んだのだ。

 

二つ返事でそれを請け、茶色い紙袋をバッグに忍ばせて家を出る彼女。

行き先を間違えることもなくカウンターにたどり着き、袋ごとを担当者に差出し指示を待ったそうだ。

 

ところが、その担当者は、長い沈黙と思慮深げな面持ちを見せるばかり。

一方の業を煮やした彼女は、これ見よがしに腕時計を見やったりしてイライラをアピールする。

 

いつまで経っても、どちらが何をする訳でもなく、まったく埒が明かない。

 

暫しの沈黙の後、先に折れたのは彼女の方であった。

早くお札に替えなさいとばかりに、行員の側に口が向けられていた紙袋を再度突きつけたのだ。

 

その刹那であったとのことである。

紙袋から銀行カウンターの上にナダレ出た昨日自宅に持ち帰ったはずのおサツ(薩摩芋)。

 

それを認めた彼女、何のリアクションも出来ずに、とっとと銀行を背に帰ってしまったのだと言う。

 

 

如何であろうか?

まず、考察にあたっての前提として、これは彼女が横浜山の手・某お嬢様学校時代に体験したあまりにも出来すぎた『実話』であることを再認識していただこう。

 

確かに、どこの銀行でも、物々交換不可などの断り書きなどしていない所が多いのだから、彼女に前面的に非があるとは思えない。

店員の方は、呆気にとられている暇があれば、

 

「当行では薩摩芋はお取り扱いしておりません」

 

などといった丁寧な呼びかけも出来たはずであるし、そうすることによって、後々の爆発的な笑いを巻き起こしてしまう要因となった絶妙のタメも生まれなかったのである。

しかし、これは元をただせば、紙袋の中身の確認を怠ったまま薩摩芋入りの方の茶色い紙袋を誤って持ち出し、それをお札にしようとした彼女の詰めの甘さが原因なのだ。

 

 

この例では、恥かしい失敗を極端に恐れる心の癖が、後々まで潜在意識に残ってしまう結果となっている。

トラウマ化し、今なお彼女の顕在意識にまでプレッシャーを与え続けているこの一件が、社内でコンスタントに切れの良い大技を連発させ続ける彼女の才能の下地となってしまったというのだから恐ろしい話である。

 

彼女の名誉の為に、一言付け加えておこう。

全国営業本部長付きという重責を担う現在の彼女であるが、一般人の浅知恵では計り知れないスケールの天然技を、今なお連射し続けている。

勿論、『オサツ取り違え』級のクオリティを保ちながらである。

それでいて、かつて一度も全国各支店の営業マン達から不満の声が挙がったことがないというのだから、彼女は最強の人徳を持つ癒し系美人アシスタントといえるのだ。

 

幸か不幸か、今の彼女は、アシスタントとしては私から離れてしまっている。

しかし、仕事が順調に行き過ぎて退屈になってきたような時、フッと、また一緒にやってみたいななぞと危険な思いも抱いてしまうビジネスマン・

凹作なのである。

 

話しがだいぶ逸れてしまったが、兎にも角にもビジネスもクワも、確認の詰めの甘さは致命傷になるということである。

 

最後に、このエピソードを全国のクワ好きさん達の教訓にしていただけるならと快く公への流布に同意してくれた彼女の勇気に感謝を述べたい。

 

 

=結果=

ノコギリ♂、コクワ少々


【2003年7月11日@】

金曜の午後。

浜松町で行われた某社製品の説明会が終わったのは終業時間の頃。

 

ここで勤務地の市ヶ谷に逆戻りして仕事をするのが会社員の鏡というものであります。

従って、凹作は自宅のある横浜を目指したのでありました。

 

自宅最寄駅に降り立ったのが夕方六時半前。

日が落ちるまではまだ少しの猶予がある。

 

最寄駅と自宅の間にある森に分け入ってみた。

ケモノ道のような空間が延々と続く。

 

20分も歩くとついには藪漕ぎライクな行軍となってしまった。

 

漕いでも漕いでも藪は続いている。

 

いったい何時になったら抜けられるのか不安になってくる。

 

懐中電灯も虫除けも無いアホ行軍。

持ち物といえば某社の製品カタログとノートパソコン。それに携帯電話くらいだ。

これでスーツ姿だったら、それこそ死に場を求めて彷徨っているサラリーマンに見えたことだろう。

ノーネクタイな勤務なのでそれだけが唯一このアホの救い所といった風情。

 

IT関連製品のカタログを団扇代わりにして蚊を追っぱらう。

 

歩き始めてかれこれ50分。もうすっかり暗くなり始めている。

心細い。

 

あ〜さんから、洞や樹皮が浮いているような所が良いと教わっていたのだが、もう、それらを探す心の余裕すら無くなって来てしまっている。

 

いよいよノートPCのディスプレイを懐中電灯がわりに灯そうと思った頃、ようやくアスファルトに降り立つ。

 

これだけ歩いてコクワ一匹。

まぁ、しかしカナブンや蝶がついているプチ台木を一本発見したから良しとしましょう。

 

会社帰りのアーバンな装備の藪漕ぎはもう嫌だ。

ノートPCなぞ重たいだけだ。

これからは虫除けと懐中電灯を常に携帯し、長靴と長袖で通勤することにしよう。(嘘)

 

=結果=

コクワ♀


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