6/18〜9報告

【凹作】


【2004年06月18-19日】
土曜の午後、極めて手際良い歯鋳謝の仕事が、私に清々しい移り香を与えていた。

蟲厚さを乗せた風が、車窓から心地良く私の顔にあたる。
帰途のハンドルを執る車内の快適指数は、梅雨時のそれとは思えぬほどに朗らかだ。

前夜のドラマ。 今朝の起き抜けのTV番組、そして、未開封だった明け方の着信メール。
零れ落としそうになる記憶のメッシュを、文字に起こさぬままに心に溢れさせ味わっていた。



「長くなりそうだな」
凹採集記のなんたるかを熟知したベテランでマットウな読者の皆様は、
この辺りでピンときて、上のように呟くや否や、手際よく上下スクロールバーをズリズリっと最下行へ滑らせる筈である。
しかし、お初にご拝読いただく方にとって、その判断は容易では無い。
★印から☆印の間の行だけを拾い読みいただければ、時間を無駄にしていただかなくて済むと思う凹なのであります。



そう。まずは、明け方のメールであります。
アノ方からのメールであります。
凹へのお礼を兼ねた5目採集達成の報が綴られたメールなのであります。

嬉しさの移り香を楽しみながらも、起き抜けの時間帯をダラダラとTVの前で垂れ流していたのであります。
ジュニアーズと共に数ヶ月前から嵌っている子供向けのTVアニメ番組であります。
ケ□□星人。であります。
ご存じない方は、お子様に聞いてみていただければと思うのであります。
お子様のいらっしゃらない方は、近所のガキでもとっつかまえて諮問して下さいと思うのであります。
主人公はカエル(みたいな変なうちうじん)。
コヤツの喋り方、凹採集記上の凹調とソツクリなのであります。であります。

ケ□□の毒舌を堪能し終えた私、ふと考えたのである。
5目か、凄げぇなぁ。
でも、凹にはムリか。
いやいや、まてよ。
1日で5目とするから駄目なんだ。
よし! 目標、2日間で5目!

さっそく目標達成に向けて、家を出た凹とジュニア(兄)であります。
お昼前のちょっとした時間を使って出発。であります。


生物保護区域の脇を抜ける。
前方の一般区域に見えてきたのは小さな池。
三脚固定のカメラで傍らに陣取る男性は、野鳥の飛来を求めて息を潜めているらしい。
彼のテリトリーを侵害せぬよう、そっと抜き足で別の場所を求めるとしよう。

小さな池を暫く登った地点にもポイントがある。
空のプラケースを入れた玉網を肩に掛け、黙々と移動する二人。


苦戦である。
いささか嫌気の差した私の散漫な集中力が、下の池を見ろと促す。

下方を窺う。
小さな池の周りでは、天然の寸劇が演じられていた。

先程のカメラマンの背後に座る初老の男。
そして、顔見知りと思しき数名の集団が、初老の男に歩み寄り、車座の賑やかな談笑を始めようとするところであった。
無言でテリトリーを明け渡し、立ち去って行くカメラマン。

「あの人、僕が遊びに来るといっつもいるんだよ」
成る程、寸劇の主役の正体は、この池の周辺に365日張り付いているヌシ(定年退職者)だったのだ。

そういえば、よくよく思い返すに、彼の顔には見覚えがある。
時折このポイントを訪れる私の脇で、ザリガニ釣りに興じようとする子供達を募って熱心に何かをレクチャーしている男だ。
子供達は不動の姿勢で鼻を脹らませながら彼の演説に聞き入るのが常だったように記憶している。

さぁ、視線を手元に戻そう。
このポイントは薄いのか?
しかし、小一時間ほど問い詰めて、どうにか数匹を手中にすることができた。

ちょっとした時間の隙間を使って此処に来たのである。
1目を追加したのだから、これで充分。
復路を辿った私達は、小さな池の脇に差し掛かっていた。

いつも何を話しているのだろう?
ヌシのブつ内容に、私の興味が鎌首をもたげてしまった。

手には玉網とプラケース。
彼の演説会へのチケットとしては充分であろう。
後はただ、無邪気な親子の姿勢で、小さな池の畔にプラッと近づけばよいのだ。

会場となるであろう地点へと歩みを寄せる私達。
あっけないほど簡単。首尾良く会は始まった。


ヌシ:「この池でザリガニ採ってもらっちゃ困るんだよねー」
そうなのだ。
私有地でもないこの池には、『生き物を採らないで下さい』と書かれた作成人不明の看板が立っているのだ。
ヌシ:「カワセミの餌になってるんだよね」

堰を切ったように溢れ出すヌシのエナジー。
中略をしてしまうのは憚れると思わせるそのパッション。
それでも、〜100行程の中略をしてしまい〜、そして、、、
そして、ヌシの独演は終わった。

欠伸を噛み殺すような顔付をした愚息の顔が横の端に映る。
確かに、私も会の終焉を待ちわびてはいた。
それなのに。 それなのに、ちょっとした悪戯心が私の舌を操ってしまったのだぁぁぁぁぁ〜。

私:「子供達がザリガニを釣って、観察してから池に戻したらいいんじゃないですかねぇ?」
彼に大変悪い事をしたと反省している。
返答内容を予め知った上で言ったのだから、イツモノ良い訳も効かない確信犯だ。

返答は、兎に角トニカクとにかく、観察目的であってもザリガニには手出し無用のカワセミ第一。〜更に100行を中略〜
という、予想した通りすぎる当たり前の内容であった。

やはり。 私も彼も、このパラドックスに魅入られてしまった人だったのだ。

自分達が自然と触れ合い続けていけることだけを目的に自然を大事にしている自分保護派の私には、彼のような自然保護派の方に何も言えることはないのだ。
人間が鳥を愛でることよりも、
子供達がザリガニの観察を通じて小自然に親しむことよりも、
カワセミや自然の純粋な保護を大切に思う人だっているのだ。

この池が生物保護区域外であるからとか、
地方税の注がれた池なのだから、子供達が親しめる沼地の殆ど消滅した時代に住む我が子にも、この池を利用する権利があるとか、
そういう卑近な理屈を振りかざしては決していけないのだと思う。

このヌシ(定年退職者)たる初老の男性もまた、、レトリックの海で必死に足をバタつかせ、パラドックスの底に沈まぬように泳いでいるのだ。
正解という陸地の見えない沖の彼方で...
互いが互いを思い合う心が、私達の救命胴衣にならんことを願うばかりなのである。

誰でも、考え方や志向の異なる方に対して、多かれ少なかれ迷惑をかけてしまう。
アノ方の書かれている通りだと思う。
まして、自然に対して殆どロクな手助けをしない自分保護派(人間保護派)の私であるから、
せめて、次の採集者・・・人間・・・を思い、洞などの破壊には気をつけようと思っているのだ。
そして、このポイントに入った前の採集者の気配りが在って初めて、私はイマ楽しめていると感じていこうと思っている。
人間保護派のトホホ野郎にできることなんざ、この程度のことだ。

トホホ野郎なこんな私にも、自分のクワ採り志向についてラッキーだったと思える点がある。
洞を破壊してまで採った結果や、某棒球団まがいの超強力灯火セットの結果に対しては、妙に醒めてしまうのだ。
洞ならば、壊さない範囲での採集。灯火セットならば必要と一般に謳われている範囲でのW数。
そんな中で得た一頭に、私の自己満足は心地良い満腹シグナルを発してくれる。
自分保護派(人間保護派)の私にとっては好都合の体質なのである。
反対に、貧しいプロセスの結果なぞ、いくら食べたところで変に腹が張るばっかりで満足感には繋がらない。



って、偉そうに言うじゃなぁ〜い?
でも、『灯火セットって、一度もやったことないんすよね、自分』ですから、、、残念!
『御財布がどうにもこうにも口を開いてくれないショボクワパパ・凹』、、、斬りぃ!
『私だって、一度っくらいはやってみたいんですから』、、、切腹ぅ!



記憶のメッシュに織り込まれた午前中のイメージを反芻していた歯鋳謝帰りの車中。
次に再生されたのは、昨晩から朝方にかけて楽しんでいたドラマの内容であった。



ウィークディ最後の仕事を終えた主人公が、早々に自宅へと戻ったところからドラマは始まる。

帰宅するなり、主人公は長男と共に夜の山に足を向けたのだ。
山と言っても、近隣の丘のような場所で、昼間には彼らも何度か足を運んだ事のある場所である。

星の見え始めた薄明かりの一帯に、心地よい樹液の発酵臭が漂っている。
初めて夜間に足を踏み入れた場所の割には要領良く動く二人。

子:「居たよ」
背の低い子供に代わり、ブツを摘みあげる主人公。
当たり前の仕草でそれを子供の掌に落とす。

子:「スジだよ!」
ニッコリとする主人公。
初挑戦の場所での初物が高級系なのだから、主人公・凹の胸中は、『ニッコリ』程度のもので済む筈が無い。

ヨッシャァァァァァ〜!

数秒の間合いの後、子・ジュニア(兄)と何度も手を重ね合い叩き合いをして、喜びをキャッチボールする凹なのです。

コクワ数匹にスジ♂二頭の2目。


気を良くして、洞々の樹周辺のポイントへ移動。
コクワ大漁なれど、採集目数アップはならず。


更に車での移動を重ね、幼馴染の待つ一帯へ向かう。

先のポイントではコクワばかりだったので、幾分テンションを下げての車中。
しかし、数だけは伸ばしていたので、心に余裕はあった。
『そう、たまには生態写真を狙ってみよう』
極めてニュートラルなテンションが導き出したアイディアである。

コクワオンリーだった流れを引き摺ったままポイントに降り立と、案の上、最初の樹はガランとしていた。
念の為、その樹の裏側へ回ってみる。

凹:「あ・そ・こ。 見てみ」
兄:「ノコギリの♀?」

ヨッシャヨッシャヨッシャ!
ケッコウでかいノコ♀であります。
慎重にショートレンジバンブースーパーネット(近所のスーパーで買った虫採り網)を手繰り、見事に3目メをゲットです。


一転ハイテンションと化した凹とジュニア(兄)、勢いをつけて奥に控える樹へ。

勢いがあると、クワを探す丁寧さにも俄然厚みを増してくる現金な二人である。
視認し難い樹表の凸凹部までも舐めるように丹念にチェックしていく。

コッコッコ。
調子よくコクワを摘み上げ続けていく。

数週間前までは確認できなかった樹液。
その周り。いつもならば無視してしまうような場所。
勢いのついた心が、万一の可能性をも信じて小さな葉っぱを捲らせた。

!ヒっ
声には出さなかった。

直ぐにソレとわかるオスの顎がコチラをまっすぐに睨んでいる。

自分の出す大きな声に慌てさせられぬよう、努めて冷静にジュニア(兄)に告げる。

「ヒっ、ラっ、タっ、!、。」

兄:「○○○○○○○○○○○」
色めき立ったジュニア(兄)が何かを叫んだようでもあった。
だが、残念ながらその言葉は、凹の頭の記憶野に届く前に、ヒラタの発するオーラに掻き消されてしまっていた。

左手をお椀型にし、珠宝の落下に対応できる体制を整える凹である。
前回の採集では、この樹でノコギリクワガタ(但し、パチンコ玉クラスのチビッコ)とコクワ(ビーダマ級)を連続落球→消息不明ってなことをやらかしているのだ。

金縛りの十倍っくらいの強度でヒラタの下方5cm地点に固定された凹の左手。
反対の右手を、左ポケットに螺子込む凹。
携帯電話(iShot)は...
なっ、無い〜!
車に置いてきてしまったのだ。

ドジ!
千載一遇のチャンスだぞ。
どうする? あ〜さんみたいにダッシュで車まで一旦戻るか?
あー、駄目駄目。この案は秒速却下。凹にそんな度胸はない。

そうそう、こんな時こそのジュニア(兄)だ。
凹:「車まで行ってさ、ケータイ取って来てくんない?」

左ポケットに螺子繰り込んだ右手が車のキーを掴んだ瞬間だった。

ヒラタの体が一瞬浮いた。


気がした。


気がしただけである。
が、
気がしたと自分で認めるソノ前に、既に左手サンがヒラタを掴んでいた。

小心者!(☆_☆)
自分を責めたけど、これも秒速で撤回。

危ネー。
いや、いや、いや、いや、いや、いや、いや。 しかし、いや。
何を血迷ってたんだ、ワシ。

「『聴牌即リー』、否、『千載一遇即ワシヅカミ』が正着手だろうがぁ」 なのであります。
『そういうマネは、君のレベルではコクワに対してだけやろうネ > 身の程知らずの凹クン』 なのでもあります。
兎にも角にも、
やった〜〜〜〜〜!
なのであります!!!!!


夢の1日4目達成!
凹のレベルでも手の届くクワで、不採集はミヤマだけ。
今夜の自己満足指数は極太だ!

息を弾ませながら車内に戻り、あ〜さんとデリはちサンにミテメールを送るべくiShotを試みる。

が、

ちょびっコすぎて映りませぬぜ > ヒラタ殿。

否、いな、イナァ〜!
ちょびっコくたって、写せなくたってヒラタ殿であることには変わりがない。
添付画像の方は諦めて、画像無しのミテメール・・・ご報告メール・・・を配信したのでありました。



自己満足満載の凹車は、凹実家の前を通過中。
ヒラタを入れたルアーケースを大事に膝に抱え、うたた寝を始めたジュニア(兄)。
パパの優しい眼差しから、充実した気持ちを乗せたソレへと移行する凹の視線。
助手席側から反対の窓側へと展開され、夜の海面をサラリとなめる。
今夜はシーバスの方もグッドコンディションぢゃん。

お二人から届いた祝福のメールの着信音。
ハンドルを握りなおし、路側へ車を寄せた。
喜!

ダイニングに着き、この日の獲物を披露し、更なる祝福を浴びる凹とジュニア(兄)。

喜び溢れる満足感のうちに、凹の夜が終わった。
はずだった。

4目達成という、凹にとっては今後もあるかどうかわからない位の素晴らしい夜だったのだ。
しかし、である。
千載一遇のチャンスでもあるのだ。
5目達成へ向けた千載一遇のチャンスはワシヅカムべし、なのだ。

そうそう都合良くミヤマを採れるのか?
流石の凹も、そこまで能天気ではない。

企てたのは、凹なりの自己満足充足獲行。
昨年の変則2目に習った変則5目狙い。(凹採集記_2003年7月5日ご参照)
超ド外道・シーバス様を加えた変則5目を狙ったのであります。

凹採集記に出てくる凹からは、皆様にとっては想像もつかれないかと思いますが、シーバス人・凹は、結構ナカナカなのであります。
勝率は9割以上。
だから当然釣れるつもりの横綱相撲な気分で釣り歩き、
駄乱々々と無駄に2時間ほども費して、、、
ぼ〜ずをゲットぉぉぉぉぉ(涙ぁぁぁぁぁ〜)

どうして最後にわざわざケチを拾いに行くのかなぁ > 凹

でも、自分なりに精一杯自己満足を追求できた充実の夜だった。
精一杯楽しめた夜が終わった。
そう、いよいよ本当に、長い夜が終わりを告げた。

はずだったU。

♪♪♪携帯メール着信音♪♪♪

アノ方からだった。
凹の楽しかった夜を、更にスペシャルなモノにしてくれる贈り物が届いていた。


満足感を分かち合ってもらえたミテメール。
そして、
ミテメール返しが、互いの喜びを、往復便の掛け算方式で大増幅してくれた。



翌朝、ミテメール返しをくれたアノ人から、更なるメールが入っていた。
5目達成の朗報であった。

コレを見てケロロっとしていられる凹ではないのであります。
♪I fool oh! good so.
♪溢ろグソぉ〜は、溢ろ。
ケロロなTVアニメのエンディングテーマが流れる中、
我も為さんとばかりに二日越しの5目メを狙いに家を飛び出したのであります。


二日越しってトコで既にケロロでありますな。
更には、前夜の反省もへったくれも無くの変則手狙いってトコも、輪をかけてケロロなのでありますな。
だからって、今日はカミサンの誕生日だから、間違ってもミヤマ採夜行なんか企てちゃったらヤバ過ぎるのでありますな。

んな訳で、保護区域の外にある小さな池を抜け、更に上にあるポイント・・・水溜り・・・で5目メをケロロにゲット。であります。

5目メにゲットしたのはシーバスでも蛙でもなく、、、
最近ジュニア(兄)のマイブームにつられて凹もチョッピリ惹かれかけている外骨格界のもう一方の花形、
赤い大きな鋏もカッコいい(でも、ちょっぴり臭っさいのが難点な)アメリカザリガニ君であります。

ケロロ過ぎる5目を達成し、凹以外の誰もが羨ましがらないような結果に大自己満足を得ている『裸の凹様』なのでありました。



ドラマの再生が終わった歯鋳謝帰りの車中。
「再生ダケなら30秒もかかンねぇのに文字だと400行になっちまうんだよな」
私の放ったモノローグ(標準和名:矛先無き言い訳)が、車窓の外の蟲厚い風に溶けていった。

=結果=
コn 、 スジ♂2 、 ノコ♀ 、 ヒラタ♂ 、 ミテメール返し  / ぼ〜ず(但し、シーバスの方) 、 ザリ

P.S.
波田陽区様、ケロロな作者様、そしてデリはち様、
数々の無断借用、ご容赦で御座いますm(_ _)m


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