【凹作】
【2004年05月30日】
アーバンクワの道を歩む我々に休息は無い。
常日頃からムシの気配に耳をそばだてて、いつ如何なる時でもウルトラショートクワ採行を試みる姿勢は崩さないのだ。
このポイントに目をつけてから、早いもので一年と四日が過ぎていた。
見つかるものといえば砕けて粒々になったコンクリートの欠片や蛾の屍骸ばかり。
挫けそうになっていたあの頃。
何がこの男を突き動かしていたのであろう?
まだ見ぬオオクワガタを求めて?
レア産地だから?
険しい道のりだからこそ?
『そこで採れたら面白いから』
これが答である。
オオクワやヒラタでなくとも充分なのだ。
一度もそこで採ったことがなかったから?
そうではない。
一度も誰も考えすらしない、否、考えたくもないほど馬鹿らしいことだから。である。
だから馬鹿らしいのだ、否、『楽しいのだ』なのであります。
何を心の支えとしていたというのだ?
もちろんナンバーワンにも成り得なければ、オンリーワンなんて洒落たモンである筈も無い。
栄華とか名声からも遠くかけ離れた辺境の楽園。
一歩そこに近づく度に、じわりと染み出してくる『馬鹿味ドロップス』のフレーバー。
甘〜い砂糖菓子のような直接的にべったりと舌に纏わりついてくる味ではない。
お馬鹿さんだけに味わう事の許されたスルメのような深々とした旨味(うまみ)。
旨味を味わい続けているのだから、支えなぞ要らないのでございます。
しかして、ついに...
ついにこのポイントも、正式にクワポイントの仲間入りを果たしたのであります。
親友達とのバーベキューを午後に控えた買出しの途。
屋上駐車場に車を停め、いつものスーパーの肉売り場に向おうとしていた凹であります。
ジュニア(妹)が早足で通り抜けた下足マットの上。
このポイントでは、常に壁面や足元をチェックしている凹の目に飛び込んできた黒い物体。
クワガタ!!!!!
たぶんコクワだろうけどね。
しかも、☆だし。
そんでもって下半身だけだけど。
だけど、ここで見つけた初めてのクワガタ!
ジュニア(妹)が、凹の立つ場所へと引き返してくる。
「何?」
☆を載せた手のひらをヒトデのように開いて彼女へと差し出した凹。
「コクワだべ?」
「うぉ、スゲェ!」
小学三年生という年齢の割には、案外と ご近所ショボクワの味わいを判っているジュニア(妹)なのであります。
この日の午後はとっても良いお天気でありまして、
そんな太陽の下で楽しむバーベキューは思いのほかに体力を消耗させたのでございます。
炭コンロの脇に居た外道を眺めただけ。
林に入っていく体力の残っていなかった凹でありました。
=結果=
ぼ〜ず / 灯下ポイント(1サイト)