7/16報告

【凹作】


【2003年7月16日】

週のど真ん中の平日に、カミサンと二人で近所の林をぷらりとして参りました。

カミサンと二人で夏の夜空の下を歩いていると、 時折凹作の頭の中に浮かんでくるフレーズがあるのだ。

『生まれく叙情詩(せりふ)とは 蒼き星の挿話(エピソード(そうわ))』
『夏の旋律(しらべ)とは 愛の言霊(ことだま)』

凹作の贔屓ミュージシャンの持ち歌の一節であります。

ポワーっとした気持ちで夏の夜道に居ると、
周りの蟲達のざわめきや自分自身の存在までもが、なんだか現実感の無い遠い存在に感じられてきます。
自分とカミサンの足音、そして、水銀灯の明るさなんぞが、まるで映画の中の出来事のように流れ始め、
そして気がつくとこのフレーズを口ずさんでいたりするのです。

この日は、ムシアドレナリン全開というよりも、ぷらりとした心持ちでの採集。
案の定、『愛の言霊』をリフレインさせながら、一本目の樹に到着です。

ん〜、居てくれました。
ちっこい体の原歯型ノコ♂であります。

カミサンがそーっと摘みにかかります。
「あっ、これコンビだよ!」

その言い草に吹き出しそうになりながらも祝福の握手を求める凹作。
もちろん、ペアとも言うんだよと教えておいてあげました。

幸先良く、ノココンビ(ペアとも言う)にてボーズ逃れを達成し、ほっと一安心。
何が嫌かって、ボーズ・・・収穫無し・・・ほど嫌なことはありませんからね。

ふむむ、そういえば、何故にボーズと言うのでありましょう?
坊主頭には(毛が)何にも無いから?
んんん、たしか、子供の頃、近くに住む漁師に尋ねたらそんな風に言っていたけど、、、
あれは純真な子供をからかっていただけなのやら?
それとも、坊主の世話になった後は、な〜んにも無い世界という意味から来ているのでありましょうか?
自分の存在が何も無くなってしまうというのは、確かに嫌な響きでありまして、『収穫無し』以上の怖さを感じてしまいます。
しかして、アッチ側は何も無い世界だなぞとは誰も証明できないのでありますから、感情としてはこの説は採用したくないのであります。

未だ語源を知らぬままにしてしまっているから、あの時にちゃんと聞いておけば良かったと思うのであります。


夏の夜風に気持ち良く歩みを促されながら進んでいく二人。
さてさて、二人の行く手に現われる次なる獲物は?

コッコッコッコッコッコッコッコッコッ。

あっちにもコ。こっちにもコ。
土の散策路なのに、アスファルトをハイヒールで歩いているようなコの連続攻撃です。
先ほどの原歯型ノコよりも更にちっこいヤツらのオンパレードなのであります。

一寸の虫にも五分の魂というくらいですから、このちっこいヤツらにも魂はあるのでしょう。
ならば、ワラワラと樹に付くコヤツらの魂は、一体どこから湧いてくるのでありましょう?


「光あれ」と宇宙に響き渡った創めの言霊。
無が振られ、溢れ出た波動が万物を形作っていく。
このストリームは、今もなお流れ続けるのでありましょう。

大いなる一つから分かれ出て、ここに『生』となる個々の魂達。
コもノコもオオクワも。 カブも外道もお魚さん達だって。
そう、ここにいる凹作とカミサンの魂も。
み〜んな同じ大いなる響きからの分家なんだろうな、なぞと考えてしまいます。


更に歩みを進めた数本目の樹には、ノコ♂中歯型君。
コヤツは残念ながらのロンリー君でありました。

穂含月の旋律(しらべ)が紡ぎ出したロンリー君の現(ウツツ)。
彼の魂は、この先いったい何処へ帰っていくのだろう。
いやいや、基本的問題として、帰る場所だの魂だのとは、本当に存在するものでありましょうか?

万物の叙事詩・・・アカシックレコード・・・なるものがあるのなら、それを読み聞かせてあげたい。
一人闇に佇むロンリー君。
その行く末が、確約されたものと知ったなら、彼の孤独な魂も少しは安らぐってェもんでありましょう。
 
凹作は、カミサンと二人で連れ立って歩いている。
それでも、歩みの終点のその先が見えない今は、とっても不安な気持ちなのであります。

未知のエリアを覗き見るには、それなりの衝撃が伴なうのでありましょう。
弱虫の自分にはおっかな過ぎて耐えられない。
それでも、道の先のエリアを確認しておきたい杞憂ヤロウな凹作であります。


ポイント出口近くまで戻ってきて最後の樹。樹の裏、崖側にグッドサイズのコ♂を発見。
裏へまわろうと、一旦体勢を整えるために懐中電灯を足元へ置く。
よいしょっと、足を踏み出したら、懐中電灯を崖に向ってシュートしてしまいました。

凹作の間抜け面を、ピカッピカッと二度ほど照らしながらゴロンゴロンと崖下へ逃げていく懐中電灯。

夜中に崖を降りるなんてしたことがありません。
初めての事態に慄きつつも、勇気を絞って追撃体勢に入りかけ、、、
「止めた方が良いよ」
と、カミサンから大人の意見としての自重案が提出され、即採用と相成りました。


家に戻っての玄関先。網戸に泊まったロンリーカナブン君のお出迎えです。

この後、二人だけで静かな乾杯のひと時を楽しんだのでありました。


=結果=
ノコ(中歯型1、原歯型1、♀1)、コクワ1 / 懐中電灯−1

 


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