長崎県
【ウンゼンルリ】
今回の帰省に関して以前より考えていたことがあった。それは長崎まで足を伸ばしての、ウンゼンルリの採集だ。ウンゼンルリについては前々から気になっていて、いつかは採集してみたいと思っていたのだが、そんなチャンスなど何度もあるわけではなく、ハードスケジュールをぬって何とか長崎に行ける算段がついた。
雲仙行きはかなり前から決めていたのだが、準備万端というわけではなく、切符を取ったのもレンタカーを予約したのも前日で、しかも地図なんぞ当日に購入するといういい加減な状態となってしまった。(^^;)
こんなので本当に採集できるのか???
ポイントについての知識は図鑑のみ。山の名前が書いてあったから何とかなるだろうと思い、特に下調べもせずに帰省した。自分の性格からして、完全なピンポイントまでわかっている採集はおもしろくない。あとは自分の勘だけが頼りだ。このために今までルリを出し続けてきたと言ってもいい。
雲仙までの行程は、実家→新幹線→在来線特急→レンタカーという感じであるが、その切符を取ってみて、かかる費用に愕然としてしまった。雲仙は遠い!!! 失敗は許されないというプレッシャーが大きくのしかかってきた。
前日から興奮して全然寝つけなかった。こんなのは久しぶりだ。
6時前に起床して、6時10分に出発。
一番の新幹線は徳山駅を6時34分に出る。
久々にプロトレックが活躍する
レンタカーにフィールドモニターなどついているわけがなく、今日は気温も標高も気圧も、すべてプロトレックが頼りになる。これまで車に放置していたが、久々に腕につけることになった。
西日本は当然日の出、日の入時間が遅い。本州を離れる頃、ようやく夜が明けてきた。
やっと夜明けだ
九州に上陸して、周囲の風景にずっと目を奪われていた。オオクワのいそうな里山がごろごろしていて、時々クヌギの木も目に飛び込んでくる。思わず新幹線から飛び降りたくなってしまう。(^^;)
高校のとき、博多の病院まで新幹線で通っていたので乗り慣れた区間ではあるが、こういう見方をしていなかったのでとても新鮮だ。
博多駅に到着し、在来線の特急「かもめ」に乗り換える。発車時間までかなりあるはずだったが、すでに入線していた。その「かもめ」を見てびっくりしてしまった。
「これは本当に俺が乗る電車なのか???」
通称「白いかもめ」と言われるその電車は、透き通るような白いボディで、これまでイメージしていた九州の在来線の特急とは全く違うものであった。
乗り込んでみると、シートは皮張りでめちゃんこ座りごこちがいい。(^o^) 内装はオシャレで、しかも乗客はガラガラだ。(^^;)
「かもめ」のシート
今日はツイている!!!
何だか夢のような旅になってきた。列車は博多駅を静かに出発した。
鹿児島本線内はゆっくりゆっくり進む。こんなペースで本当に長崎まで行けるのか?
途中で気になるクヌギを何本も見つけてしまう。(^^;)
ところが長崎本線に入った途端に一気に加速し、とても在来線とは思えないようなスピードで爆走を始めた。宙に浮くかと思った。(^^;)
オオクワのいそうな場所も遠くに見え隠れする。帰りに余裕があれば立ち寄ってみたい場所も何個か見つけた。5〜6人の仲間用にウンゼンルリが採集できればここに戻ってこようなどと、楽しい想像を巡らせながら風景に見入るあ〜であった。
ひとつ前の肥前鹿島まではあっという間に来たのだが、ここから下車駅である諫早までのひと駅が非常に長い。単線のため、途中駅での行き違いもある。外を見ていると、今日攻める予定の山が見え隠れし始めた。
天気はイマイチ
この連峰のどれに登るかは考えどころだ。時間と情報がないというのは何とも無茶な話である。(^^;)
いろいろと考えているうちに、ようやく諌早駅に到着した。実家を出てから約4時間の旅であった。ちょっと足を伸ばすとはとても言えないような距離だ。(^^;) 写真は撮っていないが、しっかり「カクイわた」も見つけた。(記念特番:70000アクセス参照)
到着
すでに10時だ。レンタカーを借りに行く。長崎弁バリバリの爺ちゃんが一人でやっているようだ。手続きに思いっきり時間がかかる。(^^;)
やっとのことで車を借りていよいよ山へ向けて出発だ。
久々に運転する背の低い車で、いきなり頭をぶつけてしまった。(^^;) 痛かった。(;_;)
まずはコンビニへ行って食料調達だ。それからここでようやく長崎の分県地図を仕入れた。フツーでは考えられない要領の悪さだ。
時間に限りがあるので、とっとと作戦を立てる。これでハズしたら大変なことになってしまう。どんどんプレッシャーがかかってきた。
少し諌早方面へ戻ってから、いよいよ山への道を走り始めた。
途中で誘惑するようにクヌギの木が立ち並んでいる。
「あとで寄ってやるからな〜!(^^)/」
と言い残して通過するものの、実際にそんな余裕が欲しいところだ。
目の前の山は見事なまでに植林されていて、広葉樹は全く見当たらない。ヤバくないか???(^^;;;
しかし、関東でも松からルリを出している。勝手に理由をつけて勇気を振り絞りながら山頂へと到着した。すでに12時を回ってしまった。
山頂へ
びゅんびゅん風に吹かれながら植生を確認する。大木などほとんどない。(;_;)
ウンゼンルリは倒木にも多いということなので、どこも見逃せないだろう。
とりあえず、行ってみるしかない。
まるで航空写真
つい最近採集者が入ったようだ。ところどころで材が削られている。
しかし、これは何を狙ったかよくわからない削り方だ。ルリ属を狙った削り方ではない。実際、ルリ属が好みそうな材は手付かずで残されている。それとも自分の探し方が間違っているのか???
大した大木もなく、非常に質素な植生だ。倒木なんてほとんどどこにもない。ハズしたか?
しかし、いきなり素晴らしいルリ材を見つけてしまった。
もし、これに入っていなかったら、ここにはいないと判断していいだろう。(ほんまいかいな!)
でもここにいなかったら、とってもまずいことになる。下調べを拒んだ自分の性格をここにきて非常に恨めしく思い始めた。本当に、ここにいなかったらどうするつもりだろう???
まずは産卵マークを探す。表面を全部見回したが、全くどこにもついていない。(;_;) どんどん自信がなくなってくる。ダメ元でそのルリ材を慎重に削ってみた。
コメツキの幼虫がいっぱい出てくる。外道ばっかりだ。(;_;)
他のクワガタでもいいから出て来い!と思いながら中の方まで削ってみたが、全くかすりもしなかった。(-.-)
ヤバい!絶対にヤバい!!
ここまで来てボーズではシャレにならん!!!
ここは見切って、この連峰の他の山を攻めたいところだが、登山が伴うため、全く時間の余裕がない。仕方なく、ここでしばらく粘ってみることにした。
実にショボい植生だが、それなりにルリ材はある。
崖を登ったり落ちたり・・・
進もうとするが、トゲのある草が大量に生えていて、全く身体が動かない。気は焦るばかりだ。
かなりの時間をかけて、またいい感じの材を見つけた。
産んでてくれ〜!
飽きるほどの産卵マークが表面や樹皮下についていることが容易に想像できるような材であるが、どこを探しても産卵マークは見当たらない。ルリの亜種なんだから、産卵マークもつけるに違いないと勝手に決めてかかっているが、もしかして違うのか?それともやっぱりここにはいないのか???
産卵マークひとつ出れば物凄い勇気が湧いてくるのだが、こんな状態では何も信じられるものはない。どんどん絶望感が蔓延してくる。
これまたダメ元で削っていく。相変わらず外道ばかりだが、突然、何だか見覚えのある食痕が現れた。
ウンゼンルリ?
この食痕は途中で消えていたが、大きさもルリ属のものと同じだ。
ただ、アブの食痕もよく似ているので、ここにウンゼンルリがいるという確証には至らなかった。
苦しい・・・(ToT)
さすがにめちゃくちゃ焦り始めた。ボーズでは本当にシャレにならない。
トゲに刺されながらも何個かの峰と谷を攻めてみたが、産卵マークも食痕も何も見つけることができなかった。いよいよ決断するときがきたようだ。
ずっとこの山で粘るつもりだったが、思い切ってここを見切り、もうひとつの連峰に登る決意をした。
意地を張って下調べをしなかったのだが、これではあまりにもバカだ。往復で8時間、ウン万ウン千円をパーにしてしまうことになりそうだ。これは下見ではなくて本番のはずだ。
前回の福岡某所での惨敗があったので、今日はリベンジのつもりで来たのだが、これではただの返り討ちではないか。九州は相性が悪い。(-.-)
来る途中で見つけたクヌギが気になったので立ち寄ってみた。
けっこうな大木
気になる洞もあった。誰も見ていなかったので登ってみた。(^^;;;
何もいなかった。(ToT) ←当たり前やっちゅ〜ねん!(^^;)
その横にあった材を削ってみると、コクワの幼虫が1頭転がり出てきた。一応ボーズは回避だ。(^^;)
干拓地帯を通過し、約2時間近く走ってようやく目指す山が見えてきた。
いてくれ〜〜〜〜
遠目で見る限りはなかなかイケてそうな感じなのだが、果たしてどうなることやら・・・
ルリの標高まで上がってきた。植生は前の山とほとんど変わらない。
何となく気になった沢があったので、車を降りてみた。すでに14時を回っている。車を返す時間を考えると、活動できる時間はすでに1時間を切ってしまっている。
沢を駆け上がろうと思ったのだが、またまたトゲに阻まれて全く身動きが取れない。(;_;) こんなのではどうしようもない。登山道から登ることも考えたが、こっちは工事中で走行不能であった。(+_+)
時間との戦いは本当に疲れる。ボーズでは終われないというのが頭にあるのでどんどん焦ってくる。
何本かを見てみたのだが、全く産卵マークは認められない。(ToT)
ここでついにタイムアップとなってしまった。長崎に何をしに来たんだろう???
あまりにも悔しいので、レンタカーの時間を延長してもらうことにした。西日本の日没が遅いことを計算に入れると、あと1時間くらいは採集ができそうだ。
再び思い切って沢を登ることにした。トゲが刺さりまくって足は傷だらけになってしまった。いつもの靴ではないので簡単に滑落してしまう。踏んだり蹴ったりだ。
かなり傾斜を登ったあたりでまた素晴らしい立ち枯れを見つけた。
立ち枯れというか、倒木というか・・・
これだったらフツーのルリは絶対に産むだろう!!
これに産まないなんて考えられない。
舐めるように産卵マークを探す・・・・・
ない。(T-T)(T-T)(T-T)(T-T)(T-T)(T-T)
どーしてないの???(ToT)
上の木に登って周囲を写す
悔しいので木に登って周囲の風景を写したりした。
完全に負けた。シャレにならん。
本当に時間がなくなってきたので、この木をちょっとだけ削って帰ることにした。
シャリシャリと削いでいくのだが、すでに自分が何を探しているのかもわからなくなってきた。(^^;)
もう帰ろうという頃、めっちゃ小さい穴が空いて幼虫の姿が見えた。
これはウンゼンルリか?
あまりにも小さい
どう見てもクワガタの初齢幼虫だ。しかもルリ属だろう。
このあたりに生息するルリ属はウンゼンルリしか思いつかない。
×32で撮影
すでに喜ぶ気力もなく、一応ケースに納めた。
さらに成虫を求めてシャリシャリと表面を削ったのであるが、結局出てきたのは外道だけであった。
完封負けとは言えないまでも、完全な惨敗であった。
帰りがけに強烈な大木の立ち枯れがあったので、ちょっと叩いてみた。ルリ、ツヤハダ、アカアシ、スジ、ヒメオオと、何でも採れそうな材であるが、出てきたのはゴミムシダマシのみ。どないなってんねん。(;_;)
ちょうど雨も振り出したので、とっとと諌早駅に向かうことにした。
まだ紅葉しているコナラ
このあたりのコナラは紅葉していて、全く葉を落とす気配がない。このまま冬を越すのだろうか?
惨敗した山
諌早から随分離れたところまで来てしまったらしい。帰るのにやけに時間がかかる。こっちへ来る前に惨敗した山もよく見える。
雨&渋滞のダブル外道
諫早市内は渋滞だ。荷物が重いので、途中のコンビニから採集道具を送ってしまった。
17時といえば、東京では日が暮れているが、こちらでは写真の通り、まだ明るい。電車の時間を見ると、あと40分もあったのだが、何もすることがなくボケ〜っと過ごした。
帰りの電車も「白いかもめ」であった。来るときと違って、帰りは完全にヘコんでいる。テンションは実に低い。
電車の中で地図を見ると、ウンゼンルリの採れそうな場所が一発でわかった。後の祭だ。4時間たっぷり自分に「バカ」と言い続けたのであった。
コクワ:幼虫1頭
ウンゼンルリ:幼虫1頭
2001.1.2