ヒラタを訪ねて三千里

−みんげり−


<はじめに>

お気楽採集野郎のみんげりは、地元産のヒラタクワガタを採集する事を近年の重点目標の筆頭としていた。遂に5月14日に念願叶って採集する事ができました。心地よい達成感と喜びがいつまでも残るようこの採集記にまとめました。


みんげりは、都内某所に生まれ育ちました。幼少の頃(二十数年前)は、この辺りでもカブトムシ・コクワ・ノコギリといった普通種はそれなりに採れました。ある日の事、毎日チェックしていたコナラの洞にコクワにしてはかなり大きいオスのクワガタが入っていました。枝や棒で1時間くらい格闘した結果、出てきたのは50ミリ弱のヒラタクワガタでした。これが地元で出会った最初で最後のヒラタクワガタでした。その数年後、コクワすら見つける事が困難な状況になっていきました�。

7、8年前に新聞を見てから再び採集をはじめ、電車や車で遠出(今思えばめちゃ近場)してコクワやノコを採集していました。山梨(当時はめちゃくちゃ遠く感じた)にも行き、ヒラタなんかはちょい(たまたま)と採集できた。しかし、山梨でちょいと採れたヒラタは、東京近郊では、まったく見かけなかった。今思えば、探し方に問題があったのだが�。

東京にもまだヒラタがいるという情報を小耳にはさんだ。それなら、生まれ育った地元で採りたいと切に思い本格的に活動を始めた。採集エリアは、とある河川敷だ。


<冬・春>

昨年から実施しているローラー作戦を引き続き展開し、良さそうな朽ち木を少し削ってみたが、コクワばかり。でも探してみると、結構いるものだ。

夏の樹液採集用に良さそうな林を物色する。いつもは、クヌギ・コナラを中心に探していたが、今回は図鑑等によく記載されているヤナギを中心に調査した。

虱潰しに数キロを一本ずつ丹念にチェックし良い環境のポイントを発見した。しかし、材割では成果がなかった。


<5/14>

この日は、夕方実家近くに野暮用があり、昼頃実家に着いた。近所にある大きな公園に散歩がてら観察しに行った。ここは、クヌギの大木が十数本あるが、昔からクワガタは少なかったが、案の定いなかった。とある洞を見たら、四十雀の巣がありヒナがいてピーチクパーチク驚いてしまった。

野暮用を終え、一路川を目指した。裏道を行き到着、時間は19時でちょうど良い時間だ。

まぁ、期待もしてなかったが、長靴に履き替え、ペンライトを持っていざ出陣!!

 

約一月ぶりだが、下草がかなり伸びている。普通に歩けるのもあと数週間だな。

目的地に到着。ここは、みんげりが勝手に「ここにいなけりゃ、この辺にヒラタはいない」と決め付けた場所である。柳が十数本あり、湿気も程よくある。まだ時期的に早いかなと思いつつ、一本一本丁寧にクワを探す。

日当たりの良い方から見て周って3本目でやっとコクワ♂発見!

これでボウズはないぞ。どこに樹液があるのか調べたら、蛾がつけた少しの傷から樹液がほんの少し出ていた。それから草をかき分け、数本目のヤナギの樹上でコクワ♂を発見!

ここまで見ての感想は、まだ樹液が出ていないのと、洞が少ない。よって、この林ではヒラタは無理かなと思い始めた。

 

ある程度奥まで行ってUターンした。反対側は日当たりがあまり良くないので、より期待薄であった。しかし、予想に反し日の当たる側より樹液が多く出ている。う〜む不思議なものだ。

蛾や小虫が群がる樹上の樹液を見上げながら、ヤナギの下方を眺める。

草がボウボウの中に細く名も知らない木が数本目に入った。みんげりは、目に入るものすべてを確認しなければいられない質である。草をかき分け、名も知らない木の根元を覗くと股部分に4cm位の黒いものが目についた。

コクワか?はたまたゴキブリか?よく見ようとするのだか位置的に頭付近がどうしても見づらい。

体を支えるような木もないので、簡単には近寄れない。あまり近づきすぎてもクワが落ちる恐れがある。5分位うろうろしながら近づいた。大顎が見えないので、よくわからないがコクワではなさそうだ。

もしかして�!? 急に体が緊張してきた。

一息いれて手を伸ばす事にした。手前の細い枝に右手をかけ、左手を目いっぱい伸ばす。

届かない(^^;) う〜んこまった!

落ちてもいいようにライトの角度を変え、さらに一本奥の枝に手をかけた。

今度は届きそうだ。やっとこさ、捕らえる事ができた。

ペンライトを当てると、「ヒ、ヒ、ヒラタだ!!!」 39mmオスのヒラタクワガタだった。

嬉しさがこみ上げてきた。やっぱりいたんだ。こんな所に棲息しているんだ。

どうも新成虫のようだ。下手に60オーバーだと放虫かとも疑うが、39mmというのが東京産っぽくて良い。

ヒラタをしまおうと思ったが、なにせ夏本番用の軽いルッキングのつもりだったので、ペンライトしかない。しょうがなく煙草の中身をすべて取り出し、その箱に入れた。

ウキウキ気分のまま、その後もチェックする。

まあまあの洞を見つけた。覗くとクワの大きな尻が見える。でかい!

小道具がないので、その辺の枝で強引に取り出した。大きいコクワ♂だった。がっかり。

 

その後その林だけで飽き足らず、目につくすべての木をチェック。

成果はコクワ♂1頭、蜘蛛いっぱい、毛虫・尺取虫たくさん。

時計を見たら、すでに22時過ぎ。疲れたけど、達成感でいっぱいです。

そして、半笑いしながら2時間かけて帰途に着きました。


<終りに>

読み直してみると自分でも大袈裟だなと思う。

何がこんなに嬉しいのかっていうと自分の故郷で、地道に自己流で、そして21世紀になるこのご時世に東京でヒラタクワガタを採集できた事です。

これから夏にかけてクワガタも増える反面、草が背丈まで伸び、得体の知れない生き物が増殖し、そしてなによりももの凄く蒸し暑くなってくる。簡単には、良い結果を出せないだろうけど困難に立ち向かってこれからも楽しみたい。


<みんげりの思い>

みんげりは、この川をこよなく愛している。幼少期・思春期のすべてこの川を中心に過ごしてきたといっても過言ではない。高度成長期で泡・ヘドロだらけのこの川で泳いだり潜ったりした事を今でも鮮明に覚えている。トムソーヤーにミシシッピーがあったようにみんげりには、この川なしの生活は考えられなかっただろう。

だからこそ、今回の結果がものすご〜く嬉しいのである。

いつまでもヒラタとコクワが棲息できるよう、いつの日かこの川に恩返ししたい。

 

かなりくどい文章になってしまいましたが、お付き合い頂いてありがとうございました。


戻る