99/5/29

福島県

今週末に採集に行く話がなくなって、さあどうしようと思っているときにヨメが週末は福島で野球部の合宿に行くと聞いた。(ヨメは会社の野球部のマネージャー)

「いいなあ」と言ったあと、むくむくとヤナギ病が自分の中で首をもたげてくるのがわかった。「週末福島に行くかも知れない」と人に話すたびにパーセンテージが上がっていき、Lちんを誘ってOKが出た瞬間に100%に達した。

出発の夜、コンちゃんから電話があって、「韮崎やめて福島に行くことにした」とのこと。大笑いだ。(^○^) あいあんさんも「現地で会いましょう」とのことで、どうやら楽しい採集になりそうだ。(^_^)


それにしても蘇ってくるのは去年の6月6日、あいあんさんとmatsudaさんと行ったときの6度という驚異的な気温である。クワガタとはとても結びつかない気温であったが、去年は今年よりも温かくなるのがかなり早かったはずだ。時期尚早とは思いつつの出発であった。
あいあんさんも、コンちゃんも我々より先に出たはずであったが、7時の林道入りを目指し、Lちん宅を2時に出発した。出発時の気温は20度である。しかし、北上するたびに当然のごとくグングン気温は下降し始め、東北道を降りるころには約10度になった。完全にアウトだ。(^_^;) まあ一番寒い時間ということで、自分を納得させた。
高速を降りたところのコンビニで食料を仕入れる。店員が椅子に座ったまま爆睡しており、20回ほど声をかけてようやく起き出してきた。一緒に入った別の客は万引きして行った。(^_^;) のどかなところだ。

それにしても、やっぱり福島は遠い。かなり慣れたので「近いもんだ」という感覚があったのだが、やっぱり遠い。オオクワの飛んでくるポイントを念のため見ておいたが、その時の気温は4度。冬である。(^_^;) 当然何もいない。あまりの寒さに車に戻ってしまった。この時点で夜の灯下採集はあきらめだ。(^_^;)

あいあんさんがいつも燈火を張るポイントを過ぎた辺りで林道方面を見ると、なんと山に雪があるではないか。(^_^;)

山には雪

とてもクワガタの状況ではない。(^_^;) やっぱり早すぎたようだ。


雪の残る山を登り、いよいよ林道へ入る。ぴったり7時、予定通りだ。驚くべきことに、あ〜の前を走っていた2台の車も林道へ入って行った。こんなところで車に会うのも珍しいが、さらに林道へ入るとは。

あいあんさんもコンちゃんも姿が見えないので、すでに登っているのだろう。林道のヤナギを見ると、「やっと芽吹いたところ」という感じで、青々と生い茂るところまでは行っていない。植物とそれにつく昆虫の活動時期は寸分狂わず一致しているという話だが、それからすると、やっぱり早すぎると思った。

途中、林道の中央まで倒木がはみ出しており、それをよけて進んでいると、なぜか車が動かなくなった。先程の2台の車が停車し、

「おめえら、いつまでそんなとこ乗ってるだあ。早く降りるべ」

と言っている。気づいてみると、助手席のLちんが下の方に見える。(^_^;) ようやく自分の置かれた状況に気づいた。車の左側が崖に落ちて傾いている。(^_^;) 慌てて二人で降りて見てみると、車は大きく傾き、何とかバランスを保っている。路肩が弱くなっており、タイヤを取られたようだ。X軸とY軸だけでなく、Z軸まで利用した、通行の邪魔にならない究極の路上駐車だ。(;_;)

途方に暮れるLちん

四駆とはいえ、もはや自力での脱出は不可能な状態である。引っ張れる車もいなかったので、あいあんさんとコンちゃんの本名を伝え、林道で見かけたら来てもらうように伝言して、誰か通り掛かるのを待つことになった。ちゃっかり材割り用のオノを車から持ち出したあ〜は、ほんとにアホである。(^_^;)

それにしても、よくここで車が止まったものだ。恐怖感こそ全くなかったが、実はここは強烈な急斜面の崖だ。あと少しで奈落の底に転落するところであった。


仕方なく、Lちんと二人で誰か来るまでそのへんのルッキングをすることにした。寒い。(^_^;) 近くのブナの倒木を削ってみると、大きな食痕が何本も出てきたが、クワガタは入っていなかった。アカアシかヒメオオか、どちらかだろう。

待てど、暮らせど、あいあんさんもコンちゃんも下りてこない。だんだん不安が大きくなってくる。数台の車が通過する。みんな親切で、声をかけてくれるのだが、残念ながら車を引き出せるような装備を持った人がいない。それはそうだろう。(^_^;) 携帯なんて100km手前から圏外だし、いちばん近い民家でも数十kmは離れている。人工建造物すら視界に入らない。最悪の事態だ。(;_;)

「ランクルかサファリじゃないと、どうしようもないなあ。来ないかなあ、ランクルかサファリ」と言った途端に、奇跡のようにランクルとサファリが登ってきた。サファリの方にはウィンチが着いている。降りてきたおじさんはウィンチの使い方がわからないと言いつつも、やる気満々で、やっとあ〜も助かったと思った。

ところが、そのおじさん、

「兄ちゃん、これ失敗したら車は崖に落ちるけど、それでもいいよなっ?、なっ?、なっ?」

などと言っている。(^_^;) 後に引かないと落ちるとか、前じゃないとダメだとか、意見も分かれている。(^_^;) どーしようと思っているうちに、ウィンチがからまって引き出せなくなってしまったため、何もせずに終わった。ある意味助かったのだが、この方たちには大変な迷惑をかけてしまった。そして、峠の上にあいあんさんとコンちゃんを探しに行くために、乗せて行っていただくことにした。


頂上に着いて愕然としたのは、二人の車がなかったことである。まだ来ていない。(;_;) 約束もしていないのだから、来かどうかもわからない。(;_;) Lちんと二人でとぼとぼと延々林道を下った。こうなったら、林道を下りる人に公衆電話まで乗せて行ってもらって救助を待つしかないという結論に達し、下りの車を待つことにした。

しかし!!下りの車が全く来ない!いつの間にか地面に座ったまま二人で寝てしまった。脱輪して3時間を経過したころ、また1台車が来た。自信満々で「俺が引き出してやる」と言って下さった。ちゃんと出るか、奈落の底か、一発勝負だ。5人がかりで車を押すが、車はただ滑るだけで全く上がらない。あまりにも怖くなったので、途中でやめることにした。すでに車は45度傾いた。状況は悪化してしまった。ちょっと動かしても車は崖から落ちるだろう。

しかし、ここで救世主が登場した。あいあんさんとコンちゃんである。とりあえず、あいあんさんを残し、コンちゃんに救援を求めに乗せて行っていただくことにした。車で舗装道路を走れるなんて夢のようだ。だが、問題は救援が見つかるかどうかだ。いちばん近い村でも20km走らないといけないし、そこに救援できる業者があるかどうかもわからない。

林道を抜けたところでレッカー車とすれ違った。慌てて追いかけて声をかけたが、残念ながら建設会社の車であった。(;_;) 一番近くの建物まで行って、事情を説明すると、自動車整備工場の電話番号を電話帳で調べてくれた。どうやらこの村には整備工場はないらしい。隣とその隣の整備工場を教えてくれた。

だが、そこにある唯一の公衆電話は衛星電話で、天候が悪く繋がらなかった。(;_;)

仕方なく、またコンちゃんに運転していただいて村の中心部まで下りることになった。山道を十数km走る。コンちゃんは一度燃料補給でここを余分に1往復しており、疲れているに違いないのに、本当に申し訳ない。(;_;) ようやく村にたどり着き、公衆電話を発見。整備工場に電話をかける。繋がった。(^○^) だが、あ〜の車を吊すだけの車を用意していないとのことで、×となった。(;_;)

観光センターで事情を説明し、別の整備工場を紹介してもらう。今度は大丈夫そうだ。昼過ぎに出動してくれるとのことでようやく助かる見込みが出てきた。一旦あいあんさんの待つ林道へ延々戻ることにした。


あいあんさんと助手席さんは、なんと昼食にカップラーメンを用意して下さっていた。わざわざロッジまで水を汲みに行って下さり、お湯を沸かしてラーメンをいただいた。美味い。(;_;) おまけにコーヒーまでいただいた。

左からあいあんさん、Lちん、コンちゃん、後ろがあ〜

13時半ごろ整備工場が到着するというので、それまで近くでルッキングすることにした。

13時半になっても、14時半になっても車が来ない。この頃になってようやく下りの車が頻繁に通り始めた。1台残らず声をかけて行ってくれる。本当にいい人たちだ。整備工場が来ることを伝えると、みんな心から喜んでくれた。缶ジュースまでくれるおばちゃんまでいた。(;_;) あまりにも遅いのであ〜は再び林道に座ったまま眠ってしまった。

それにしても、あいあんさん、助手席さん、Lちんは、あ〜につき合ってず〜〜〜っと救援を待ってくれている。こんな遠くまで来てクワガタも採りに行けない。とても心苦しいあ〜であった。(;_;)


15時ごろ、遠くからエンジンの唸りが聞こえてきた。この瞬間を何と表現すればいいか、言葉が見つからない。みんなで万歳三唱だ。ようやく整備工場の人が到着した。

が、その人たちも車の状態を見て、途方に暮れているような様子。あ〜は顔面蒼白である。一か八か、車を吊って引き上げることとなった。片方が崖なので、命がけでロープを通す。一触即発で車が転落するのでみんな緊張している。あ〜の足もガタガタ震えている。

かなりの時間を費やして、ついに車は引き上げられた。奇跡的に屋根の角が少し変形しただけですんだ。みんな心から喜んでくれた。


何とか一件落着したころには、すでに日は西に傾いている。(;_;) ここまで来たら何か採りたいとの一心で、林道を上がる。助手席さんの運転で、あいあんさんがルッキング。コルリ狙いだ。

コルリを狙うあいあんさん

我々もあとを追いかけるが、コルリなんて見たこともないし、取り方もわからない。ブナの新芽というイメージと飛ぶというイメージしかない。(^_^;)

頂上で車を停めて、本格的にルッキングだ。ほどなく、あいあんさんが何かを持って満面の笑みで走ってくる。どうやら採れたようだ。(^_^)

これがコルリだ

それにしても、今日の状態でクワガタが採れるとは思わなかった。逆転サヨナラホームランで、あいあんさんに大感謝だ。(^_^) 気温は12度で肌寒い。コルリは元気だ。ブナの新芽に体を突っ込んでいるか、芽の裏側に隠れているかということだったので、さっそく真剣にルッキング開始だ。採れたと聞けば気合は俄然乗ってくる。

いきなりコンちゃんが立て続けに2頭を見つける。そして当然のように1頭を落とす。(^_^;) 「落としのコン」は健在だ。(^_^)


ここであいあんさんと助手席さんとはお別れだ。別の林道を攻めるらしい。あ〜たちはヒメオオとアカアシを求めていつものコースに入ることにした。

しかし、林道の様子を見て愕然。全くヤナギは茂っておらず、冬の風景であった。(;_;)

アカアシポイント。夏は遠い

下の方なら大丈夫だと思っていたが、甘かった。


仕方なく、頂上へ引き返し、再びコルリを狙うことにした。

コルリポイント

対象が小さいので、ヒメオオ・アカアシとは若干探し方が異なる。ほどなくブナの新芽にとまる影を発見、これまで全部カミキリだったので期待はしなかったが、網に落ちた虫を見て、思わずにんまりしてしまった。クワガタ特有(でもないが)の、あの「気をつけ」をして転がっている。コルリだ。(^○^)

帰宅して撮影したコルリ

やはり福島は楽しい。(^_^) まさか自分の採集記にコルリが載るとは思わなかった。(^_^)

コルリを探すコンちゃんとLちん

Lちんもこのあとコルリをゲット、全員がちゃっかりゲットしてしまった。コンちゃんもLちんも大喜びだ。(^○^)


すでに暗くなってきたので、温泉へ行くことにした。露天風呂は気持ちいい。ポツポツ雨も落ち始めたし、気温も低い。今日はどう考えても灯下は無理だ。焼き肉を食べて帰ろうということになった。

焼き肉屋を探して延々走る。インターまで行っても見つかるはずがないと思っていた焼き肉屋が、何と舘岩村で見つかった。21時前であったが営業中であった。そしてこれが美味い。(^○^) お世辞抜きでとても美味い。久々にとろけるような肉を食った。完全に病みつきになりそうだ。店の方とも仲良くなり、近いうち来店する約束をした。間違いなく、今後1つの拠点となるだろう。


Lちん宅にたどり着いたのが2:00AM。ジャスト24時間の福島の旅であった。よくぞ生きて帰ったものだ。

それにしても、今回は思いっきりみんなに迷惑をかけてしまった。本当に心苦しい。あ〜のような人を出さないためにもここでH林道の注意事項を再確認しておこう。

・路肩は弱いので、寄りすぎないように

・困ったときは道行く人に声をかけよう

・いちばん近い電話はロッジの公衆電話だが、衛星電話なので天候により不通になる

最後に、多大なる迷惑をおかけした、あいあんさん、助手席さん、コンちゃん、Lちんにこの場をお借りしてお詫び申し上げます。すみませんでした。