Pepperland P.A. Stuff

小林祐二氏インタビュー

普段あまり話しをする機会の少ないP.A.という職業の人たち。
今回は岡山ペパーランドの小林さんにインタビュー!エンジニアの側から見たLIVEに対する思いなど、普段は聞けないようなためになるお話をたくさん聞かせていただきました。
 バンドやお客さんと同じようにエンジニアやスタッフもライヴを楽しんでいる、そんな嬉しいお話です。
★★★★★★★★★★★★★★★★

一同:よろしくお願いします。
武市(893):今回は横田君のたっての希望で…
横田(Shintoka):そうなんですよ、実は。「小林さんのインタビューはしないんですか?」って。
小林:笑
武市:ではとりあえず、ペパーに来られる前に小林さんがやられてた事っていうのは…
小林:もともと生まれは大阪で、で高校卒業して東京に行って。で、音響の専門学校に入って、そのころから東京のライブハウスでアルバイトみたいな感じで入って。そこからズルズルと。
横田:東京のなんて言うライブハウスで。
小林:はじめねTAKE OFF 7っていうライブハウスがあって渋谷に。まあ、QUATTROと同じ系列で。PARCOの中に入ってて。で、QUATTROができる前からそこで働いてて。でまあPARCOがQUATTROを作ろうかってなって、だからQUATTROがオープンの時から。立ち上げた頃から…
由紀(893):何年ぐらいいたんですか?
小林:8年とか9年ぐらいかな。でその後フリーになって1人でいろいろ、東京で。
武市:ペパーに来た経緯は。
小林:いやほんともうとびこみ。こっち(岡山)もどって、もどってっていうかまあ親が出身がこっちで。でまあ色々あってこっちに住むことになって。じゃあどうしようかなって感じで。でポっと電話して…
武市:じゃあたまたまなんですね。ぼくはてっきり伊勢雄さん(PEPPERLANDオーナー)が引き抜いて来たのかと思って。
小林:ハハハ…
横田:それまでペパーランドには行ったことがあったんですか?
小林:ううん、全然。岡山のライブハウス全然知らなくて、でタウンページ見て。
一同:笑
武市:小林さんの中でペパーに来て変わった事ってありますか?
小林:あのねえ、ペパーに出てる人たちの音楽はあんまり俺は聞いてきてないから。だからすごい新鮮だったよね。あとやっぱり年齢差っていうか、そういうのもあって。やっぱりちょっと離れてるから、通ってない音楽をペパーではずいぶん聞かしてもらってる。
武市:QUATTROっていうのは打ち込みとかなんかそういうイメージがあるんですけど。
小林:いや、結構オールマイティになんでもやってる。だからSOBの初期の頃とかもQUATTROとかでやったりとか。ボアダムズもやってるし。

横田:もともとどんな音楽が好きなんですか?
小林:う〜ん。
武市:音響を志した時やっぱりなんか…
小林:やっぱり高校の時とかも音楽好きでよく聴いてて。で友達のバンドとかもライブハウスに見に行ったりとかしてて。でも楽器ができなかったから…、楽器は向いてないなと(笑)。じゃあ音楽に携わるにはどうしようかなと考えた時にエンジニアっていうのを見て面白そうだなと思って。で東京の専門学校に行った。
由紀:その時よく聴いてたのは何ですか?
小林:結構ミーハー。(笑)邦楽はあんまり聴いてなくて。ちょうどMTVとかそういうのが流行り出してた時期。かなり古いよね、80年代。だからCDを買って聴くような感じじゃない。レコードの時代で、高いから買えないし。レンタルレコード屋さんていうのがあって、まだビデオもVHSとベータがあった時代で(笑)あんまり情報も今みたいに仕入れられない。だからMTVとかをすごい見てたりとか。一番ショックを受けたのはねえ、ドナルドフェイゲンっていう人。スティーリーダンっていうバンドをやってた人で、どっちかっていうと職人的なレコーディング命みたいな人で。
武市:音楽以外の趣味はありますか?
小林:最近ねえ、あんまり趣味はない。何か見つけたいなとは思ってるんだけど。
由紀:よく飲みに行かれたりするんじゃないんですか?
小林:うん、だからそれが趣味みたいなもんかな。
武市:じゃあ打ち上げとか誘ったらどんどん来る感じですかねえ?
小林:(笑)どんどんというわけにはいかないかもしれないけど、行きますよ。
武市:PAっていう仕事の面白いところはなんですか?
小林:面白いところはやっぱりもうバンドの人たちと一緒。一発勝負でライブを楽しむみたいな。そんな感じはある。レコーディングとはまた違う。レコーディングは形に残ってしまうでしょ。責任が出てくる。まあPAも責任があるんだけどその場のノリで…。それだけじゃないけどやっぱりそういうところもあって、失敗が許されないみたいな。レコーディングは形に残るけどやり直しがきく。ライヴはもうやり直しがきかない。
武市:じゃあ逆に大変なことは?
小林:いろんな機材があってどんどん新しくなってきて、それに対応していかなきゃいけなくて。バンドの形態とか音楽の趣向性とかそういうのが変わっていくのと同じようにやっぱりPAも変わっていってるから、それに対応していかないといけない。日々勉強みたいな。
横田:ライブ中にされて一番困る事は?
小林:いい加減にやられると困る。上手いとか下手とか、まとまってるまとまってないとかじゃなくて、いい加減にやられると何もできないし、何もやりたくない。適当にステージ上がって適当にやられると見てる方もつまんないし。やってる方もつまんないでしょ?やっぱりバンドの人たちが楽しそうに演奏してて、お客さんも同じように楽しく観てて。で、こっちも自分の好きな気持ちいい音が出てて…。
武市:やっぱりだからそこはバンドと一緒ですよねえ?
小林:そうそうそうそう。
横田:例えばノイズとかっていういわゆるやっちゃいけないことって言われるような事をペパーでやる人ってすごく多いですよね。舞台でゲロ吐くひととか(笑)あれはやっててむかついたりしないですか?
小林:たまにある。
一同:笑
小林:みんな楽器を大切にするでしょ?それと一緒。マイクとかってやっぱりうちらにとってはすごい大切なもので落すとそれで音が変わるから…。音がもう悪くなっちゃうから、落すだけで。
もやし(yakuzalove):無意識にマイクを覆ってしまうんですけど、困りますか?
小林:困ります。だからまあ音楽性にもよるんだけど、覆うのはいいんだけどそのままモニタースピーカーに向けられる
とどうしてもハウってしまう。あれは何故ハウるかっていうのは、耳に手をあてるとすごくよく聞こえるでしょ。そういう状況なの。
横田:持っちゃうことで余計音を拾うんですよね。
小林:持たない方が音が綺麗にとれる。歪んだ感じのこもった感じのボーカルを出したいんであればやっても構わないだろうけどね。
由紀:何を言われたらむかつきますか?結構バンドって要求してきません?
小林:それは全然。逆に言わない方がつらいかな。言わないで終わってからあーだこーだ言うんだったら、じゃあ最初っから言ってよみたいな。だからリハとかでこうして欲しい、あーして欲しいっていうのはどんどん言って欲しい。こだわってその表音のバランスを作りたいんであればやっぱりリハとかでちゃんとやってないと、いきなりぶっつけ本番だったら作れない。リハ無しで本番やるって言う時は、やっぱりこっちの考え方としてはとりあえず中で演奏する人たちが無難に演奏できるような環境を作るのが最重要で、それから表音を考えていくから。リハやっとけばそれが両方できるかな。あとはPAシートに細かく書いてくれればそれを見て。
横田:マイクの持ち込みとかされるのはどうなんですか?
小林:いや全然。自分の声に合ったマイクを持って来てると思うから、全然ありがたいと思う。
もやし(893):マイクってそんなに違うんですか?
小林:アンプが変われば音が全然変わるのと一緒で、やっぱりマイクが変われば全然音が変わるし…
横田:お気に入りのマイクとかありますか?小林:お気に入りのマイク!?あのねベイヤーっていう会社があってフィル・コリンズとかが良く使ってるマイクで、すごく繊細な音がする。ペパーとかでは使えないんだけど(笑)。
武市:今ペパーはPAを3人でやられてて、音作りに対するこだわりみたいなものが一人一人違うんじゃないかって思ってて。小林さんの音作りのこだわりってありますか?
小林:俺はどっちかっていうと出てくるものをそのまま出す。加工はしない。そのまま増幅してあげるだけみたいな感じかな、最近特に。その場所とか、出てるバンドとかにもよるんだけど、ペパーとかでやるぶんにはやっぱりどうしても生音もかなり重要なポイント占めてくるから。客席で聴いてて生音がガツっときてそれのフォローみたいな感じで上のスピーカーから出てるっていう感じだから。そのギャップはあんまり付けない方がいいのかなって。生音とPAの音は同じような感じで出す。
斉木(893):音がでかすぎると困るとかってありますか?
小林:いやでかいのはでかいでいいんだけど、全体がでかくないと。ギターだけがでかいとか、そうなるとやりにくい。バランスがとれない。ギターがでかいならドラムもベースもボーカルもでかくして欲しい。
由紀:中音でバランスがとれてると思う時はそれでいいんですか?
小林:うん。それがそのバンドのバランスだから全然OKですよ。
横田:僕はもともとDJをやってて。DJで曲を作るっていうのがあまりよく分かってなくて。HIP HOPから入ったんですけど、サンプリングで誰かが作った音を使って、さらにそれを加工して出してみたいな感じだったんですけど。音がどういうふうに変わるんかっていうのを学べたらいいなと思って専門学校行ってたんですけど、だからといって全く別の音にはならなくて。だったら別にサンプリングしなくてもいいなって思って。で、好きな音とかグっと来る音ってあるじゃないですか。音の質感とか。で、こういう音が作りたいって思うから曲を作るんですけど、小林さんはドナルド・フェイゲンとかを聴いてこういうふうな音が作りたいなあとかっていうのがあったんですか?
小林:こういう音とか音質とかじゃなくて、空気感。空気の音がしっかりとれたらいいなあとは思う。そのバランスとか音質とかそういうのって、エンジニアが作るもんじゃないと思ってて。全体のバランスとか音を作るのはやっぱり演奏してる人たちだと思ってて。あとはその空気感。演奏する前の、一瞬、フっていくところの緊張感みたいなのが録れてればいいなっていうか、録りたいな…っていう感じかな。武市:ペパーに出てるバンドの人たちに何か言いたい事があれば。
小林:まあこういう音響的な事を、分からないよりは分かってた方がいいと思うんだけど、それよりはやっぱりのびのびとやってくれたほうが。なんかこじんまりとやられるよりは、ハっちゃけてたほうが…。
武市:あー、それは安心しました。
小林:そのかわり壊さないでねっていう(笑)。
もやし:ハっちゃけたらマイク落す(笑)
小林:だから何をやるにしても意味を持ってやって欲しいかな。その場のノリとか雰囲気とかに流されるんじゃなくて、自分たちのバンドのカラーとか、やりたい事とかっていうのが、意味合いを持ってそういうパフォーマンスをやったほうがいいと思うなあ。
武市:ステージに上がりたくなったりはしないんですか?
小林:しない。もう恥ずかしくて。転換の時に行くのも恥ずかしいもん。
一同:笑
小林:お客さんがいる時とか、ジーっと見てるでしょ?もう客席の方に向けないもん。

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