北村事務所 司法と行政 上へ


 司法書士だから「司法」の世界に身を置いている訳だが,前身は「行政」に身を置いていた。したがって,両者の比較ができる希有な存在である(^o^)。

 登記官も行政マンであるが(法務「行政」という),法務省はその前身が戦前の司法省だという沿革からも,またその組織(民事局,刑事局,矯正局,保護局,訟務局,人権擁護局及び入国管理局)からも「司法的」であり,他の行政官庁とは本質的差異があるように思える(因みに,現在の法務大臣は,参議院議員の南野知惠子先生である)。

 学生の頃は「司法」を目指していたのだが,日々「司法」の実務に携わっていると,「行政」の方が面白かったな,とつい「昔」を顧みるときがある。行政の場合,無から有を創り出すという面白味がある。「政治」の意思を受けて事業を企画立案し,予算を獲得し,事業を実施する。何十億円の事業を担当できる醍醐味は「三日遣ったら止められない」代物である。今は昔であるが,事業費の予算には「会議費」や「食料費」や「旅費」が含まれる。これで官官接待や官費旅行ができる。裁判所や法務省の予算の内容は調べていないが,「事業」を所管していないから,潤滑油的な予算は無いはずだ(調活費の話題はあったが)。

 また,退職後の天下り先についても,「行政」の方が幅広く,特殊法人から公益法人まで選り取り見取りであり,さらに,一流企業の役員のポストもある。これに対して,「司法」の場合,天下り先は殆どない。司法試験組は弁護士登録するか公証人になるくらいであろうか,……近年は雨後の竹の子のように法科大学院が設立されたから,その教授に転身した司法官も多かったようだ。司法試験組でない一般職員は……司法書士を開業する途しかないの(^^;)

 戦前の官吏登用試験は,高等文官試験と言われていたが,司法科より行政科の方が上だったようで,優秀な学生は行政科と司法科の両方合格して行政官庁へ入省し,行政官としての道を進んだようである。

 因みに,わが尊敬する我妻栄先生は,1919年22歳で高等文官試験行政科合格とある。