北村事務所 騙されたア! 上へ


1.公的年金の欺瞞性
 60歳で定年を迎えたら,年金を貰って悠々自適の年金生活……かと思いきや,現在の法律では年金支給開始年齢は65歳だそうだ(生年月日による経過措置あり)。
 
 自分は年金を幾ら貰えるのかと,社会保険事務所の相談窓口へ行ったら,25年の受給資格期間に足りないから,年金は貰えないと宣告される。この受給資格期間に不足する期間の年金を遡って支払う術も,現時点ではもうない,という。
 「じゃあ,給料から毎月控除されていた19年5ヶ月分の年金保険料は返してくれるのか?」
 「お返しできません。」
 「何っ!金儲け主義の保険会社だって,これほどあくどいやり口はしない。途中解約したって,保険会社は,雀の涙,猫の額程度の金額だったにせよ,幾ばくかの返戻金はある。」
 
 <某年金生活者との会話>
「高校を出てから65歳までお勤めだったら,年金は結構貰えるでしょう?」
「いや,とんでもない。60歳になった時,60歳で年金を貰うより,65歳で貰った方がたくさん貰えると云われたので,65歳まで勤めて,厚生年金保険料を支払ってきましたが,結果的には,60歳で(年金を)貰った方が得でした。」
「おや,どうしてですか?」
「その後,法律が変わって,支給率が下がったからです。あの時,貰っておけば良かった。今更,(愚痴を)云っても詮無いことですがネ……」

2.法科大学院と司法試験
 「法科大学院では、その課程を修了した者のうち相当程度(例えば約7〜8割)の者が新司法試験に合格できるよう……」になるはずで,今年の4月に法科大学院が開校した。ところが,開校してたった半年後,法務省は,法科大学院卒業生の司法試験の合格率は2割程度と発表した。今まで貯めてきた預貯金と退職金とで法科大学院生としての2〜3年を乗り切れば,司法試験に合格し,晴れて司法修習生になれると計算し,勤めを辞めて法科大学院に入学した人たちも多いという。彼や彼女たちはこの法務省の発表を聞いてどのような気持ちだろうか。推して知るべし。更に,運命は追い打ちをかける。司法修習生の給与は貸費制とされる方針だそうだ。理由は,要は,財政難の折り,国家は3,000人もの司法修習生の給与は払いきれないということだ。結果的には,あの法曹養成に関する司法制度改革審議会の答申は,何千人もの優秀な人材を詐欺の被害者に仕立てあげてしまった。来年は,法科大学院を擁する学校法人が被害者となる。この法務省の発表によって,来年以降の法科大学院の入学者は激減し,経営難に陥る法科大学院が続出するだろう。裁判官や検察官を辞めて法科大学院の教授に招聘された方々は,どうなるのだろうか。弁護士資格は有しているはずだから,弁護士登録して開業することは可能だが,大都市では弁護士は飽和状態である。

3.よって書き(-_-)
.政治や行政が上記のような仕儀だから,巷には「オレオレ詐欺」や「架空請求」が跳梁跋扈する。決して,「オレオレ詐欺」や「架空請求」を容認するものではないが,上記の政治・行政の欺罔に比較すれば可愛いものだ。それ程,政治と行政の罪は重いということだ。

 社会保険事務所での年金相談を受けた帰り,「期間が足りないから(年金は)貰えないんですって…」と途方に暮れた表情でテレビのインタビューを受けていた初老の女性の顔が今も脳裏から離れない。