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司法書士試験受験生の目的は? | 上へ | |
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法務省のホームページに今年の7月4日に行われる司法書士試験の受験案内が掲載されている。昨年の合格率(2.8%)だけから判断すると昨年の司法試験の合格率2.58%と比べても遜色なく,超難関の試験に分類されるようで,何年も浪人して(無職で)受験勉強に専念している人も多いと聞く。 本人が「司法書士になりたい!」,「司法書士事務所を開きたい!」という希望に燃えて日夜受験勉強に精を出している姿は,フリーターと称して勤労から,社会から逃げている一群の人々と比較して立派だと思う。しかし,司法書士になって何をしようというのだろうか? 1. お金を儲けようとするなら,司法書士は辞めた方がよい。お金を儲けようとする人は,事業を興して(所謂1円会社も可能です),実業家になるべきだ。1件何万円の申請書を作成しているより,1枚何千円の書類を作成しているより,30万円で仕入れた商品を150万円で売り飛ばす方が儲かる。所謂バブル経済当時は,猫も杓子も「土地転がし」に夢中になっていたから,弁当持参で朝から銀行に出勤して,連日5〜6件の立会を処理したという司法書士もいたが,こういう美味しい仕事の話しは,今は昔だ。 甲銀行のA支店から登記の仕事を請けていたが,A支店が廃止されてしまった司法書士。乙銀行のB支店から登記の仕事を請けていたが,乙銀行が丙銀行と合併して丁銀行となり,旧乙銀行のB支店は旧丙銀行のC支店に統合されてしまった司法書士。旧丙銀行のC支店から登記の仕事を請けていた司法書士は旧乙銀行B支店関係の登記が増えたが,旧乙銀行のB支店から登記の仕事を請けていた司法書士は,固定的発注先をひとつ失った。 司法書士受験予備校の宣伝にある所得金額は,売上だろうか,それとも所得税法に所謂課税所得金額だろうか。年齢にもよるが,サラリーマン当時の手取金額を稼ぐのは難しいだろう。 2.本当に法律が好きで法律の仕事をしたいなら,法学部の助手になるか法科大学院へ行くべきだ。法理論の論理性に惹かれた人には,司法書士は物足りないだろう。因みに,今年開講の法科大学院へ入った司法書士もいるという。 司法試験は,法曹に必要な「学識及びその応用能力を有するかどうか」を判定するのに対して,司法書士試験は,「憲法,民法……に関する知識」の有無を判定する。登記申請書を作成するには,学識や応用能力までは要せず,知識がある程度で良いのかもしれない。 因みに,司法書士の主たる業務である登記申請の本質は,行政書士の行っている各種営業許可の申請と同じである。何れも,定型書式に必要事項を記入し,申請に必要な書類を収集添付して提出するものであって,行政書士会の味方をするわけではないが,業務の本質論から分類すれば,登記申請は行政書士の業務であるといえる。 3.安定した収入と自尊心を求めるなら,司法書士ではなく,公務員を目指すべきである。 公務員も最近は,外部監査やオンブズマンの目が厳しいため,嘗てのように空出張やヤミ手当は貰えなくなったが,それでも,良い上司に巡り会えれば,幸せの花咲く職場ではないだろうか。元公務員がいうのだから,間違いない(^_-) 因みに,公務員には雇用保険(失業保険)制度は適用ない。こういう職場を途中で辞めるバカはいない,という前提があるからだろうか。ところが,中には途中で辞めるバカもおり,こうして司法書士事務所を開いている。 4.「自分は,宮仕え(組織)は向かないから司法書士を目指す」と考えるのは間違いだ。人は,絶海の孤島に一人で生活している以外は,大は国家から小は町内会や趣味のクラブまで,何らかの組織に組み込まれ,組織のルールに縛られている。組織を抜きにしては社会生活は送れない。人生のある期間,会社や役所という組織に所属して,組織のルールを身を以て学ぶことが必要だ。組織に属することによって,六法全書に書いてない人間社会におけるしきたりや慣習を体得できる。その当否の判断は別として,世俗的社会の垢を全身につけてから,司法書士になった方が社会が求める司法書士になれるのではないだろうか。 5.経済合理性や費用対効果の観点からすれば,2.8%の狭き門を潜り抜ける努力を人事院のT種試験や地方の上級試験に充てた方が正解である。細かい話になるが,司法書士は国民年金であるが,公務員は共済年金である。共済年金も昔ほどのメリットはなくなってきたが,それでも国民年金より遙かに有利である。 |