北村事務所 簡裁代理権・特別研修T 上へ


 司法制度改革の一環として,平成15年4月に司法書士法が改正になり,(簡易裁判所限りであるが)司法書士にも訴訟代理権を与えて,全国津々浦々までリーガルサービスが提供できるようにしようと云うことになった。しかし,訴訟代理権を与えられるのはすべての司法書士ではなく,法務大臣が指定する100時間の研修を受け,かつ,法務大臣が行う考査(筆記試験)を通った者にだけ訴訟代理権が与えられる仕組みである。

 平成15年度第2回の考査の合格発表が3月1日にあり,無事,茨城司法書士会関係65名の合格者の内の一人になれた。第1回の考査問題の配点から推測して50点から60点は取れている筈なので,40点の合格基準点には充分達しているものと思っていたが,勝負は下駄を履くまでは分からないの喩えの如く,法務省のホームページで確認するまでは一抹の不安があった。

 3月2日に申請書を出すために法務局へ行くと,司法書士のHさんに出会った。お互いの合格を祝福し合ってから,「見に行こうか」と頷き交わし,庁舎を出て道路沿いにある法務局の掲示板に歩いていった。掲示板にはA4版の用紙にワープロで打った合格者名簿が張り出してあり,二人して自分たちの受験番号と氏名を懐かしそうに眺めた。

 自分の名前を発見し,改めて安心すると,勝手なもので余裕が出てきて「やっぱり,○○さんの名前はないですね」と他人の考査結果に関心が移る。
「法務局のOBは別として,われわれ(司法書士)試験合格組は,簡裁代理権をとらなくちゃあネ」
「そうですねエ」とHさんは頷く。
 掲示板の前を去り,緩い坂を上って駐車場までに戻り,別れ際に
「今度は,法廷で会いましょう」と笑いながら云うと「どうぞ,お手柔らかに」とHさんも笑い返す。

 今度の特別研修の成果は,これなのです。各々が事務所を構えた多忙な毎日の中で,研修の課題を,ノルマを共に果たした,模擬裁判で共に闘ったという連帯感が生まれたのです。