THE LEGEND OF HOME CIRCUIT
 モデルカー・レーシングとは、1960年代後半において、唯一子供から大人までが遊べる室内競技ホビーゲーム(?)でありました。歴史をたどると、元々は家庭で遊ぶ児童用玩具であったのが本当のところではなかったかと思われます。1950年代の後半にイギリスで発売されたといわれる模型機関車用レールをコースとし、その上をモーター付き模型自動車が走るというレール・レーシング(?)が元になってその後のモデルカー・レーシングに発展していったのだというのが発祥の定説になっています。
 そんな中で、家庭で手軽に遊べる“ホーム・サーキット”をキャッチフレーズに一大ブームを起こしたのは、イギリスの“SCALEXTRIC”をおいて他にはないでしょう。スケーレクストリック社は、1957年から、スロット・レーシング業界に進出し、数々のモデルカーを世に出し続け、特に1/32スケールでは、他の追随を許さないほどの人気を誇っていました。
日本においては、1965年当時「KK国際貿易」が正規代理店となり、沢山のホーム・サーキットやモデルカー、そしてパーツを輸入販売しておりました。また、“エアー・フィックス”社もホーム・サーキットを発売しておりましたが、日本には正規代理店がなく、ほとんど見ることが出来ませんでした。

 “MODEL MOTOR RACING”という名称で呼ばれていたスケーレクストリックのホーム・サーキットは、良き60年代のイギリスを想像させるすばらしいものでありました。日本で売られていた価格は、ホーム・サーキットで6,500円、8,000円、9,500円、11,000円、そして20,000円の5種類で、モデルカーは、1台2,400円から、3,500円程度で売られておりました。それもすべてが完成車でありました。
 日本でのホームサーキットの歴史は、そんなに古くはなく、私の記憶では、小学校3年生(1963年)の時に近所の子供が親から買ってもらったホームサーキットもどきを自慢げ(?)に持っておりました関係上、よく一緒に遊ばせてもらった記憶があります。よって、日本での普及は、その頃が最初ではないかと想像出来ます。私は、その当時Oゲージ鉄道模型に夢中になっておりましたので、動くものには目がなく、いつかはこの“車が動くセット”を…と幼心にも欲望が渦巻いていたことが思い出されます。
 上の写真は、1987年ネコ・パブリッシング発行の「カー・マガジン増刊号ー60’sGOODS」から引用させていただきました。
まさしく私がかつて持っておりました「Oゲージ鉄道模型」そのものであります。ブリキ(?)の3本レールの上を、電気機関車の下部にある銅製(?)のコレクターから電流を受けてモーターを回して動くこのOゲージ鉄道模型は、絶品でありました。同じ頃売り出されていた“ホーム・サーキット”もどきのレーシングカー・セットとOゲージ鉄道模型とを比較してみると、格段にOゲージ鉄道模型の方がすばらしいという印象を持っておりましたので、まさか何年か後にモデルカー・レーシングに夢中になるとは当時まったく考えてもおりませんでした(ちなみに、このOゲージ鉄道模型も、後発の16番ゲージの精密鉄道模型に猛追されて衰退していくのでした)。鉄道模型とモデルカー・レーシング、何か合い入れない感じのする両アイテムではありますが、よく考えてみますとかつての「天賞堂」や「宮沢模型」、そして現在の「さかつう」などは、元々鉄道模型を手がけていたり現在も販売製造をしているメーカーであり、一概に別世界のアイテムとは言い切れないメカニズムや趣味性をお互い持ち合わせているところからみて、どこかに共通性があるのではないかと思われます。
 そんな時、少しづつではありましたが、日本製のレーシングカーセット(ホームサーキットという言葉はまだその頃はありませんでした)が玩具メーカーから発売され始めました。“米沢玩具”や“バンダイ”、それとプラモデルの商標権を当時持っていた“マルサン商店”などがそうです。それらは、幼児対象のおもちゃ的内容であり、ほとんどがHOスケールでありました。
そんな1965年当時、コグレや日本模型などが本格的にモデルカー・レーシング業界への参入を開始、次々と本格的なホーム・サーキット(モデルレーシングセットと呼んでいた)を発売し始めたのでした。それも1/24スケールのものがほとんどであり、1万円前後で売られておりました。
 爆発的ブームが起きた1965年から66年にかけて発売された「ホーム・サーキット」はどんな内容だったのでしょうか。手元の資料だけですがリストアップしてみました。
市販「モデルカー・レーシング・ホーム・サーキット」会社別リスト(例外:レベル社)
 
NO メーカー 全長 価格(円) その他
今井科学 4m 7,700 1965発売 1/32モデルカー2台付き
大滝製作所 4m 11,000 1965発売 1/24F−1 2台付き
学研 5m30cm 9,900 1965発売 1/32モデルカー2台付き
コグレ 3m 8,800 1965発売 1/24モデルカー2台付き
田宮模型 6m 11,000 1966発売 1/32モデルカー2台付き
日本模型 4m 9,900 1965発売 1/24F−1 2台付き
マルサン商店 5m 8,250 1965発売 1/32F−1 2台付き
マルサン商店 7〜8m 14,850 1966発売 1/24モデルカー2台付き
童友社 2m17cm 7,700 1965発売 モデルカーなし
10 東宝模型 4m 4,900 1965発売 モーターなしモデルカー2台
11 アメリカ・レベル社 4m 14,850 1/32フェラーリGTO 2台付き
12 アメリカ・レベル社 4m 19,800 1/32フェラーリ、スティングレイ付き
13 アメリカ・レベル社 6m70cm 27,500 1/32モデルカー 2台付き
  ホームサーキットといえば忘れてはならないのがコントローラーです。では、各社のコントローラーと実戦向きのコントローラーを比較してみましょう。
 これ以外にも、数社がホーム・サーキットを発売していた記憶はあるのですが、手元の資料にありませんので省かせていただきました。また、当時の少年雑誌等で盛んに掲載されていたモデルカー・レーシングについての特集や私も応募した覚えのある“ホームサーキットが当たる懸賞”などの詳細が詳しく書かれている大変興味深い内容のホーム・ページがありますのでリンクさせていただきました。この「60年代通信」は、“「くるま」村のリンク館”でも紹介させていただいている私の尊敬するホーム・ページであります。60年代にこだわりをお持ちの方は、ぜひ一度立ち寄られることをお勧めいたします。 
 いずれにしましても、私にとってホーム・サーキットでのレースとは、幼年期を代表する一大決戦の場でもありました(当時は、ドッチ・ボールよりも真剣でした…笑!!)。それと私ごとですが、このページを書いている間に、当時のレース結果などを、手書きやガリ版印刷を使って、モデルカー・レーシング・ニュース会報という形で作っていたなという記憶もだんだん蘇ってまいりました。
 また機会があれば、自分のモデルカーをホーム・サーキットで走らせたいなという欲望が、もぞもぞと沸いてきましたので、その時は皆様よろしくご指導お願いいたします。
 ご意見・ご感想お待ちしております。


 
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