’71FUJI GRAND CHAMPION SERIES No.3
富士500キロスピードレース
2ヒート制 (1971年8月15日)
 
 
 
 1971年8月15日、大学の夏休みを利用して、私と親友“ハマ”は、はじめての“富士スピードウェイ”のグランド・スタンドに立っていました。夢にまで見た“グランチャン”をこうしてオートスポーツ誌の招待券(この後1973年まで、なんと私たちは、招待券が当たりつづけ、実費で行ったレース観戦はついになかったのでした?!今考えてみると、本当にラッキーでした)により、見に行けたことは私たちにとって実に満足のいく出来事でした。ただし、パドック・パスは高くて買いませんでした。今考えると無理してパドック・パスを買って入っておくべきだったと思ってしまいます。 
 この「富士500キロスピードレース」は、6kmのフルコースを2ヒートに分け、それぞれ41周するとても長いレースでした。憧れのマクラーレンM12とポルシェ908を目の前にして、私たちは、しばらく呆然と立ちすくんでおりました。そして、前日行われた予選において、マクラーレンの酒井正が1分46秒98という1969年の日本グランプリにおいて北野元が叩き出した1分44秒77に匹敵するような記録を出したのには正直いってびっくりしたました。 
詳しい予選内容は、当日ゲートで配られていたわら半紙にタイプ印刷された予選表をご覧ください。
 
 
 当日は、炎天下に恵まれ(?)、私たちもあまりの暑さにびっくりしていました。そんな時、いよいよスタートが迫り各車ローリングに入りました。今回は、マクラーレン対風戸・ポルシェとは別に、ヨーロッパ2リッタースポーツカー選手権に出場している“シェブロンB19”と“ローラT212”がそれぞれ田中弘と高原敬武によりデビューしたことも注目の1つでした。ところが、それら2リッターマシンたちが意外に速いのです!特に田中のシェブロンは、予選でなんと1分52秒台を記録し、必ずしも“ビッグ・マシン”が速いのではないことを証明しました。 
 そしてスタート!!まず、ビッグパワーの酒井のマクラーレンがトップで30度バンクへ突っ込んで行きました。それを風戸のポルシェと田中健二郎のもう1台のブルーのマクラーレンが追います。私たちは、自慢の“ペンタックスSP”と“キャノンF1”を持ち、ヘアピンに出てくるトップ・グループを待ちます。 
長い沈黙の後、トップで出て来たのは、やはり酒井のマクラーレンでした。続いて風戸のポルシェ、そして田中のマクラーレンでした。はじめて聞く生のシボレーV8エンジンの野太い音に迫力を感じながらも、たかが1.8リッターエンジンのシェブロンやローラの速さにも目を見張るものを感じずにはいられませんでした。
 酒井と風戸のトップ争い!
 
 私は、以前より田中健二郎選手のいぶし銀なドライビングには憧れており、あの69年日本グランプリにおけるポルシェ908のドライビングは、ワークス・ドライバーだったハンス・ヘルマンより確実に速く、当時ちょっとした話題となりました。そんな田中健二郎を目の前に見てその走りにまだまだ年齢を感じさせない力強さがあるのを感じました。ところが、第1ヒート終了後2位でゴールした田中のマクラーレンがいくら待っても帰ってこないのでした。第1ヒートの表彰式にも顔を見せず変だと思っている所に、やっと顔を見せた田中健二郎の口から信じられない言葉が出てきたのでした。「体力の限界を感じて…、たった今引退を決意しました!」と・・・・・・・。 
第1ヒート優勝は、今までの不振はどこえやらという感じで、酒井正のマクラーレンM12が念願の優勝を果たしました。
 田中健二郎最後の勇姿!!
 
 ところで、私たちには、普通に見えても田中健二郎選手からしたら、とてもつらいレースであったのです。レース後、炎天下で酸欠状態となりゴール後30度バンクの下に車を止めて休んでいたと語っていました。そして、目の前が二重に見えたり力が入らないなどが続き、オレもここまでだなと悟ったいうことでした。 
 レースは、第1ヒートで、いいところなくタイヤ・バーストでリタイヤした風戸のポルシェと、大クラッシュした津々見友彦のベルコ72Dなどを除き、長い長い第2ヒートがスタートしました。
 第1ヒートでの風戸裕のポルシェ908−2
 
 第2ヒートにはいっても酒井の調子はいっこうに崩れず、レースは終盤を迎えなんと田中のシェブロンB19が酒井を追っかけまわし始めたのでした。酒井は、耐久性に難があるシボレー・エンジンをかばいながらの走行でありその差が縮まったのだと思われます。しかし、酒井はかろうじてシェブロンとローラの追撃を振り切り総合1位でこの「富士500キロスピードレース」を制したのでありました。いずれにしましても、今回のシェブロンとローラは、共に総合2位と3位には入り将来のグランチャンを暗示するに足りる軌跡を残したのだと私や友人“ハマ”は実感したのでありました。
 
 
 「富士500キロスピードレース」総合成績 (上位10位まで) 
 
順位 ドライバー  マシン ヒート1成績 ヒート2成績
優勝 酒井 正 マクラーレンM12 1位 1位
2位 田中 弘 シェブロンB19 3位 3位
3位 高原敬武 ローラT212 4位 2位
4位 浅岡重輝 ベレットR6 5位 4位
5位 川口吉正 ポルシェ910 6位 5位
6位 鯉沼三郎 フェアレディZ 7位 8位
7位 清水 弘 ダッカスSPL 10位 6位
8位 田中健二郎 マクラーレンM12 2位
9位 H.シュラー フェアレディZ 12位 7位
10位 石村靖雄 フェアレディZ 11位 10位
 
 
 
 ご意見ご感想お待ちしています。 
次回は、いよいよ生沢徹のポルシェ917Kが登場する「富士マスターズ250キロレース」です。 
お楽しみに!! 

(GO TO TOP) (GO TO MENU) (GO TO WEB MASTER)