国公立も受けよう!              2009. 2.

 

大学入試というのは、大学がこれから一緒に研究活動をする仲間を募集するイベントだ。だからどういう資質を持った学生を欲しいと思っているのかが試験問題に現れる(※1)。大規模な大学では作問者は毎年違うはずなのにどこかその大学らしさが匂うことがあるのはこのあたりに起因するのだろう。

 とはいえ、そういう学校毎の個性はあっても、ペーパーテストで測れる「研究に必要な資質」などある程度決まっている。大学入試で柱になるのは英語や国語に代表されるコミュニケーションの能力と、数学や理科に代表される論理的な思考能力であろう。そしてこの両者こそ大学が新人に最も要求したいことなのだ。だからこそ入試はペーパーテストが中心なのである(※2)。

 

 しかし、それは大学側の都合であって、個々の受験生の立場からすれば分野による得意・苦手はある。苦手なことばかり出題されてはたまらない。

残念ながら結構な割合の日本の高校生たちは数学や理科のような記号的論理を駆使する分野が苦手であり、数学や理科はみるのも厭だという人口は多い。しかし、それだけで彼らの受験生活は暗黒にはならない。私大の文系があるからだ。私大の文系というのは大抵は外国語と日本語と社会だけで受験できる。言語の中での論理性は勿論必要だが、数学的な論理性は要らない。

 一方で言語の方が苦手な人もいる。しかし、こちらの方は文系を避けて理系にしてもなかったことにはできない。私大の理系でも大抵外国語はある(※3)。だから理系の受験生は放棄しない限り(※4)は理数の勉強と並行して英語もやることになる。

 一般に私大は必要な科目が少ないので受験が楽だと思われがちだ。しかしだ。

国公立文系      →外国語、日本語、社会+控えめに数学、理科を要求。

私大文系         →外国語、日本語、社会を要求。

国公立理系      →数学、理科、外国語+控えめに日本語、社会を要求。

私大理系         →数学、理科、外国語を要求。

文系の場合、国立と私立の差は大きい。いくら控えめ(センターのみ)とはいっても、数学や理科は苦手な人間にとってはどうしようもない科目だからだ。修得には膨大に時間がかかる。私大にすることで勉強の負担は大幅に減らせる。

だが、理系の場合はそうではない。私大にすることで免除されるのはセンターの国語と社会だけだ。確かにこれらの科目が得意でない人も多いだろう。でも試しにセンター試験をやってみよう。いきなり3~4割は出来ないか?これらの科目は理数と違って「常識」だけで処理できるものも多い。ちょっと過去問を解くだけで6割ぐらいは行けそうにないか?理系の場合、殆どの人はこのへんの科目にあまり勉強時間を割いていない。8割もとれば御の字だ。だからたとえ殆ど準備をせずに半分しか出来なかったとしてもセンターで90点差つくだけだ。東大の場合だと二次試験で11点分に過ぎない。こう考えると、理系では私大限定にしても勉強の負担はそれほど変わらない。そして大した対策をしないままセンターを受けても大差はつかないのだ。

 勿論国公立を受けるなら国語や社会の準備もセンター過去問を解くぐらいはしたほうがいい。しかしそれだけならかかる時間は知れている。5年分ずつなら復習こみで30時間ぐらいで済む。数学や理科ばかりやって疲れた頭にはちょっとした息抜きにもなる。とりわけ国語のセンターは記号的ではないだろうが論理性を要求している点は数学や理科と大差ないので、他科目を学ぶ上でも無駄にはならない。

どう?「国公立は負担が重いから私大限定」っていうのがあまり意味をなさないと思わない?勿論私大も受ければよい。しかしセンターも国公立も受けようぜ!受験料も安いし学費も安い。もし下手な鉄砲だとしても数撃ちゃ当たるかも知れないよ。その上で受かった中から進学先を決めた方が確率は上がるんじゃないかな?

 

【まとめ】

    理系の場合科目を減らしてもあまり負担は減らない。

    あまり準備をせずに受けても理系の国語や社会では大差はつかない。

    どちらかというのではなく、国公立も受けて私大も受ければいいだけだ。

    どこに行くかは受かってから悩もうぜ!

 

 

※1 そりゃ、中には大手予備校にまるごと作問を投げてしまうような大学もある。しかし君はそういう学校に行きたいわけではないでしょ?

※2 よくペーパーテストなどでは人間の本当の力など判らないという人がいるし、それはその通りかも知れないが、こと入試に関してはペーパーテストの得点こそが本当の力である。研究活動はペーパーテストもできない人間には適さないのだ。

※3 僕は外国語がまるでダメなので、受験生のときは「俺は理科をやりに大学に行くのにどうして外国語ができなきゃいけないんだ」と思ったものだが、いざやってみると英語ができないと研究活動は非常に困難を伴うことが判った。理系でもできなきゃいけないんです、英語。

※4 僕は放棄したので受験生活はとても楽しかったけど、英語の試験がなくなるわけではないので数学と理科で普通の合格点より大幅に稼がないと合格できないという間抜けなことになってしまいました。あなたはちゃんと放棄せずにやりましょう。