11月の半ば過ぎ、ニュー・メキシコのホテルでダグ・サームが亡くなって。FMで追悼特集をやったり、雑誌に追悼記事を書いたり…。彼がどんなにごきげんな音楽を作り続けてきたのか、喜びも悲しみも切なさもすべてを呑み込んだような彼のしゃがれ声がどれほどかけがえのないものだったのか、そんなもろもろを再確認しながら、でも、59歳での他界は早すぎるな、と淋しい気分になったばかりだったってのに。
リック・ダンコが亡くなった。現地時間で12月10日の朝。ニューヨーク郊外の自宅で。前日に56歳の誕生日を迎えたばかり。ダグ・サームのとき同様、死因について詳しい情報はまだ発表されていない。ここ数カ月、ソロ・アルバムのレコーディングを続けており、作業は順調に進んでいたとか。
ザ・バンドの最大の魅力というのは、やっぱり3つの極上の歌声が様々な形で交錯していたことだと思う。カントリー的な粘り腰の泥臭さと、ブルーグラス的な白さと、R&B的な黒っぽさとが軋みをあげて混ざり合うリヴォン・ヘルムとリチャード・マニュエルとリック・ダンコの歌声。彼ら3人、強力なリード・ヴォーカリストたちが、それぞれの持ち味で曲を歌い分けるさまは、本当にスリリングだ。
でも、ぼくたちはまずリチャード・マニュエルの歌声を失った。そして今度はリック・ダンコだ。嘘だろ…って感じ。リチャード亡きあと、それでもレヴォンと2人で受け継いできたあのハーモニーは、とうとう聞くことができなくなってしまった。心から冥福を祈ります。
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