What's New (Jan, 1996)



■1996年1月28日

 行ってきました。ムーンライダース。1月25日、新宿パワーステーション。よかったよー。演奏は相変わらず、噛み合わないところは徹底的に噛み合わないという、とことん奔放かつ勝手なものだったけど。もう、その噛み合わなさ加減、情けなさ具合がムーンライダースならでは。独自。これでなきゃライダースの世界は表現できないって境地にまで昇華しているし。それでいて、近ごろになくパワーも感じさせるステージで。ぐっときました。

 慶一さんは、もちろん歌もよかったけれど、人知れず披露していたギターのオブリガードがけっこうキマってました。白井良明さんなんか、去年の『パルプ・フィクション』以降ハマってるらしいディック・デイル奏法まるだし。デビュー20年目にして、さらに新たな魅力ってやつをライダースに加味していたなぁ。

 ステージは先日の渋谷公会堂でのライヴと違って、まず前半、第一部がアンプラグド・コーナー。過去の名曲の数々を、前日1回のみという、なんともはや、こう、ライダースらしい綿密なリハーサルのもと、アコースティック・ヴァージョンで聞かせてくれて。そのあと、渋公のときの延長線上って感じで、新作『夜のムーンライダース』の収録曲中心の本編へと突入してました。興味ある方のために、曲目表を載せておきますね。

 で、コンサート終了後、楽屋におじゃましてメンバーのみなさんにごあいさつ。そこでですねっ。なんとっ。お会いしちゃったですよ。あのっ、あのっ、あのっ、和田ラジヲさんに! ヤンジャンに連載中の『ここにいます』の大ファンであるハギワラとしてはですね、もううれしくってうれしくって。思わずサインしてもらっちゃいましたよ。オヤジPを。もう、自慢です。自慢したいので

ここ

に載せておきます。みなさん、うらやましがってください。子供のいたずら書きじゃないです。


■1996年1月23日

 最近、ホントにたくさんの方から“ホームページ見ました”ってメールをいただくようになって。ありがとうございます(笑)。

 で、いろんな要望とかも送られてきます。いちばん多いのが“邦楽のことももっと”ってやつ。ぼくも取り上げたいとは思ってるんですけど。以前もここで書いたように、ぼくが心底楽しめる邦楽って、実は今けっこう少なかったりもするわけです。なかなかぐっとこないというか。そのうえ、CD紹介のところは、基本的には好き勝手言うためにお店で買ったCDのみ取り上げていて。いわゆるサンプル盤で聞いちゃうことが多い邦楽アルバムのことは書きづらかったりもするんですよねー。

 でも、今回はウルフルズ取り上げてますから。ちょこっとだけですけど。

 あ、あと最近よかった邦楽アルバムというと、トラットリア・レーベルから出た暴力温泉芸者の『ティーンエイジ・ペット・サウンズ』(タイトルがビーチ・ボーイズ・ファンのぼくの神経を微妙に逆撫でするけど)と、カッティング・エッジから出たキミドリの『オ・ワ・ラ・ナ・イ(OH, WHAT A NIGHT)。暴力温泉芸者って、まあ、サンプリング・コラージュなわけで。死語を使えば“前衛”だよね。そういうのが渋谷の街で女子高校生たちから“かわいいー”とかキュートに愛されちゃってるらしくて。面白いことになってきたなぁ、と感慨にふける今日このごろです。キミドリのも、日本のアンダーグラウンドなクラブ・シーンにおけるヒップホップの急速な成長ぶりをまたまた思い知らせてくれる1枚だな。



■1996年1月5日

 さて、年も改まり、ほんのちょっとだけホームページをお色直ししてみました。参考にしようと思って、そういう目であちこちのホームページを覗いてみると、ホント、みんなかっこいいデザインしてるなぁ、と感心しちゃいますね。センスなんでしょうかねー。まあ、ぼくなりにあれこれ考えたニュー・デザインです。ご意見・ご感想などありましたら、ぜひメールでね :-)

 しかし、ですね。大晦日の夜、ビートルズの特番を見ながら、ときどきチャンネルを変えて紅白歌合戦とかも見て。いいとか悪いとか、そういう論評さえ必要ない程度の、もはや歌番組と考えるのさえアホらしい代物になってるなぁ、という思いを新たにしましたよ。まあ、紅白がつまらない……ってのは、今に始まったことじゃないし、そういうもんなんだと言われてしまえばそれまで。音楽が好きじゃない人に向けて放送される歌番組って感じだもんね。それでも視聴率50パーセントだと。対して、ビートルズは3パーセント。こちらはきっと録画率がべらぼうに高いんだろうな。そうとでも思わないとむなしいむなしい。

 洋楽、それも基本的にはアメリカのポップ・ミュージック好きのぼくからしてみると、いわゆる邦楽ってのは、ほとんど面白くなかったりする。音楽に貴賤はないとか、音楽には絶対的なクオリティなんてない……という理想論をよく耳にするけれど、どうなんだろう。疑問だぞ。絶対的なクオリティは、やっぱりあるような気がする。たとえば、今日的なダンス・ビートをベースにポップな展開を見せているアメリカのTLCと、日本のtrfと。クオリティの違いは確実にあるもん。TLCのほうが千倍は質がいい。もちろん感動の分量ってのは質には比例しないから。聞き手それぞれの好みによって全然変わってくるわけだけど。

 でも、たとえば天然のイクラのうまさを知らずに、合成のイクラをうまいうまいって言って食ってる人も多いわけでしょ。そういう人に「あのね、イクラのうまさってのはそんなもんじゃないの。天然のを食わないでイクラがうまいとか、言わないでくれる?」と言いたくなっちゃうんだよねー。言ったところで、大きなお世話だとは思うけど。でも、きっとそういう人だって天然のイクラのうまさを体験したら、合成のイクラじゃ満足できなくなるんじゃないかとも思うし。カビによく効くジョンソンのお風呂掃除洗剤のCMじゃないけどさ。「教えたい。でも、それっておせっかい?」的、複雑な気分ですよ。

 あ、でも、そうか、たとえばクラシック・ファンとかジャズ・ファンも、ロック・ファンとか歌謡曲ファンに対してそういう、ある種“尊大”なおせっかい心を抱いていたりするのか。60年代のロックを好きなオヤジどもが若いやつらに抱いている“まったく近ごろの音楽ってやつは”的なナニも同じ根っこを持ってるのかもしれないし。むずかしいね。やめた。また今度考えよっと。





(c)1996 Kenta Hagiwara
kenta@st.rim.or.jp