Shop Around List: 12/25/1995


■"Aglio E Olio" Beastie Boys (Grand Royal / Capitol)
 新作フル・アルバム? と思ったら、全8曲、トータル・タイム11分ちょっと……みたいなミニ・アルバム。なんでも、95年10月にニューヨークでスタートした新作レコーディングのドアタマ、景気づけにぶちかましたハードコア・パンク・セッションの模様なんだとか。やー、相変わらずやることがテキトーだな、こいつら。ヒップホップ色は一切なし。ドギャギャギャギャギャ……と短距離を一気に駆け抜け、おしまい(笑)の1枚です。かっこいいっ。96年の2月に出る日本盤には、もう1曲、ボーナス収録があるそうですが、それ入れても12分くらいらしいよ、トータルで。  今回も、もちろんジャケットにはグランド・ロイヤルのホームページ・アドレス入りだっ!

■"How Long Has This Been going On" Van Morrison with Georgie Fame & Friends (Verve / Exile)
 95年5月、ロンドンのロニー・スコッツ・クラブでライヴ録音されたグッド・タイム・ミュージック集。ヴァン・モリソンとジョージー・フェイムという、まあ、趣味人どうしが集まって、さらにピー・ウィー・エリスとかまで巻き込んで、彼らの憧れの存在でもあるモーズ・アリソンをはじめ、レイ・チャールズやらキャノンボール・アダレイやらレスター・ヤングやら、なんとフランク・シナトラまで、偉大な先達の曲をリラックスした中でカヴァーしまくった1枚です。楽しいっす。

■"Intimacy" Bruce Roberts (Atlantic)
 うひゃー、久々だなぁ。その昔、あれは70年代の終わりごろだったか80年代のアタマだったか、輸入盤屋さんを中心にこの人のソロ・アルバムが一部ポップ/AORファンの間で話題になったことがあった。もともとキャロル・ベイヤー・セイガーあたりと組んで良質な曲提供をしていたソングライター。モーメンツに書いた「アイ・ドント・ウォント・トゥ・ゴー」の名セルフ・カヴァーを含むアルバムあたりは、ぼくも、まじ入れ込んで聞きまくっていたものだけれど。パフォーマーとしてはさほどの反響を呼ぶこともなく、その後もジェフリー・オズボーンに佳曲を提供したり、そっち方面での活動に専念していた。そうそう、ジェフリー・オズボーンのLAの自宅スタジオを訪ねたとき、そこでばったり出くわしたこともある。で、そんなブルース・ロバーツさんが、またまた久々にソロ・アルバムをリリース。デヴィッド・フォスターとの共同プロデュースのもとで、オール4ワン、ルーサー・ヴァンドロス、エルトン・ジョン、ブレンダ・ラッセル、ジェームス・イングラムらをバックに迎え、のびのびと手堅い名曲を自演してくれた。  いや、別に、どうってことないアダルト・コンテンポラリー・ヴォーカル盤で。特に万人にすすめたいってものでもないですけど。ぼくと同じように、かつて彼の存在を気にしていたことがある人は、ぜひチェックしてください。あと、ボーイズIIメンやオール4ワンとかのバラード系の曲が好きな人にもすんなり楽しめるかも。薄味だけどね。

■"Free As A Bird" The Beatles (Apple / Capitol)
 日本じゃ1月1日に出るというシングルです。ぼろいスキャナーで読み取ったら、ジャケット、何が何だかさっぱりわかりません(笑)。例の『アンソロジー1』からのシングル・カット。もう、どあたま、リンゴの“ダンッ・ダンッ”ってスネアだけで一気にアドレナリン大放出状態に突入しちゃう“新曲”っすね。共同プロデュースしているジェフ・リンが、過去いろんなアルバムであのテこのテを使って再現しようとしていたあのドラム・サウンドを、しかしリンゴはただ叩くだけで出しちゃうんだろうなぁ……という感じ。はやっていただきましょう。表題曲以外に、「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」のテイク9、「こいつ(ジス・ボーイ)」のテイク12と13、ファンクラブ向けのクリスマス・メッセージ・ソノシートから66年と67年のぶんを収録。すべて『アンソロジー1』には未収録のものばかりだけど、ブート盤マニアにはおなじみのアウトテイクかな。

■"We Got It" Immature (MCA)
 ガキっちょソウル・ヴォーカル・グループの、えーと、第2弾だっけ? ジャケットを見るとちょっと育っちゃった感じもあるけれど、声にはいまだ“青さ”が漂うよき仕上がりです。ハンク・ショックリーがらみの、これまた手堅いブラック・ポップ。クリス・ストウクスがいい曲をたくさん書き下ろしてます。

■"Don't Try This At Home" The Dangerous Crew (Jive)
 トゥー・ショート、エリック・サーモン、デジタル・アンダーグラウンドのショック・Gをはじめ、ゴールディ、ショーティー・B、ガール・グループのアバウト・フェイス、ファーザー・ダム、スパイス1、ガキ・ラッパーのベイビー・Dなどなど、ジャイヴ/ゾンバがらみのラップ/ヒップホップ・ソウル系アーティストが結集したコンピレーション・アルバム。トゥー・ショートがやっぱり貫禄の音作りを聞かせるけれど、ベイビー・Dもガキのくせしてなかなかごきげんにルーズなビート感を披露していて、新鮮。トゥー・ショート相手に“Bad ass!”とかぶちかましたりしてさ。今どきのガキってすごいね。日本にもいるかな、このくらいルーズなビート感を叩き出せるガキが。いたら教えて。

■『空からの力』キング・ギドラ(Pヴァイン)
■『ヘイ! ヤング・ワールド』(トーラス)
 日本のヒップホップ盤を2枚。キング・ギドラのほうは、今いちばん勢いのある日本のヒップホップ軍団、カミナリの一翼を担う連中。95年の超名作オムニバス『悪名』にも参加していた。Kダブのクールな味とジブラのたたみかけるような味とがいいコントラストを聞かせてくれる。まだちょっと歌詞がフォーマットを一歩抜きんでていない気もするけれど、期待度は高い高い。ランプ・アイ、マイクロフォン・ページャーに続く存在としてでっかくなってってね。  『ヘイ!…』のほうは、若手・中堅入り乱れてのオムニバス。カミナリ系あり、LBネーション系あり、今の日本のヒップホップ・シーンの手軽なカタログって感じだ。やっぱりツイギーの切れ込み鋭いラップに惹かれるなぁ。東京ナンバーワン・ソウルセットのトシミ君がバックアップした女の子3人組、セクションSのキュートな味とか、同じくソウルセットのカワナベ君が参加したスリー・ワン・レングスの“おとぼけ”と“叙情性”とが入り乱れるムードとかも楽しい。


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