■"R. Kelly" R. Kelly (Jive)

 ここ最近の新譜の中では最高の出来じゃないかな。今やぼくのお出かけの友、M
Dプレイヤーにはこの盤が入りっぱなしだ。えぐくてスケベなヒップホップ・ソウ
ル野郎、R・ケリーの新作。のっけの「イントロ〜ザ・サーモン」からして、かつ
てのキャノンボール・アダレイの「マーシー・マーシー・マーシー」や、クルセイ
ダーズのライヴ版「ウェイ・バック・ホーム」や、あるいはマーヴィン・ゲイのこ
れまたライヴ版「ディスタント・ラヴァー」あたりで存分に味わえたゴスペル感覚
あふれるトーキング調の煽りが、もうかっこいい、かっこいい。シングル・カット
されて大当たりしている「ユー・リマインド・ミー・サムシング」もごきげん。ク
インシー・ジョーンズの新作でも共演していたロニー・アイズレーがこちらにも参
加。「ダウン・ロウ」って曲で、これまたセクシーな名唱を聞かせている。歌詞に
関しては、何やら路線変更の噂もあるが、まだちゃんと聞き取れてません(笑)。


■"Dogg Food" Tha Dogg Pound (Death Row)

 ドクター・ドレがらのギャングスタ・ラップ。ギャングスタもの久々の正攻法っ
て感じ。やっぱかっこいいや。先日、近田春夫さんとテレビでご一緒したときに、
“ドレ周辺のやつらが作る音って、どうやってるのかわかんなくて興味が尽きない。
サンプルしてるネタとかはわかるんだけど、なんだかオリジナル盤より音がよくな
ってる気がして。不思議で不思議で……”みたいなことを言っていた。この盤もま
さにそういう感じ。「リスペクト」って曲が最高!


■"Liquid Swords" Genius / GZA (Geffen)

 対して、近田さんが“ちっとも面白くない”と言っていたのが、ウータン・クラ
ン系のアルバム群。“ネタが何かって興味しかないじゃん”というのが理由だそう
だけど。ぼくはやっぱりウータン系のプロダクツが今いちばん面白いなぁ。今年の
ベスト・ラップ・アルバムはオール・ダーティ・バスタードのアルバムだと思うし。
というわけで、これも気に入ってます。ウータン系の1枚。悪ふざけぎりぎりのサ
ンプリングと最新の都会のビート感がたまりません。ルーズさとソリッドさとをあ
わせもつグルーヴ、ね。アルバム・タイトル曲と「インヴェスティゲイティヴ・リ
ポーツ」って曲が好き。


■"Mr. Smith" L. L. Cool J. (Def Jam)

 これ、失礼な話だけど、ほとんど期待してなくて。なのに、かなりよかったです。
すんません。ヒット中のメロウ・グルーヴ「ヘイ・ラヴァー」もいいし、ずばり
「ヒップホップ」って曲もよいです。底力を再認識しました。


■"III (Temples Of Boom)" Cypress Hill (Ruffhouse / Columbia)

 相変わらずナニの煙でモクモクしてる感じの音。くすみまくってます。リリース
が何度も何度も延びたぶん、待ちくたびれちゃって、逆にあんまり感動がなかった
りするんだけど。「スロウ・ユア・セット・イン・ジ・エア」とか「ストーンド・
レイダーズ」とか、やっぱりかっちょいい。


■"Curb Servin'" WC & The Maad Circle (Payday / London)

 アイス・キューブのプロデュース。「ウェスト・アップ」とかアルバム・タイト
ル曲とか、重い重い。ファンキー!


■"Soul Food" Goodie Mob (Laface)

 シングル「セル・セラピー」がヒット中の4人組ラッパー。とことんがさつなく
せしてけっこう切なかったり。妙な魅力を持っている。もうちょっと聞き込んでみ
ようかなって感じ。


■"The Natural" Mic Geronimo (Blunt)

 アルバム・タイトル曲と「ライフチェック」が気に入ったぜっ。わりと今いちば
んフツーのラップものだけど、そのフォーマットの中でよくできてるって感じ。


■"Ben Folds Five" Ben Folds Five (Caroline / Virgin)

 ニルヴァーナ・ミーツ・ビリー・ジョエル、クイーン・ミーツ・ジョー・ジャク
ソン、エルトン・ジョン・ウィズ・アーリー・トッド・ラングレン……など、いろ
んなキャッチコピーで語られている。なるほどね。どれも当たっている感じ。小山
田が入れ込み、スパイラルが盛り上がり、ローリーが感心した驚異の新人バンド。
今年の夏、ヴァージン傘下のインディーズ系レーベル“キャロライン”からデビュ
ーした3人組です。トリオなのにファイヴ。ちゃんばらトリオの逆パターンだな、
これは。秋口に日本の大型輸入盤屋さんに入荷して、ほどなく新しもの好きの口コ
ミで人気が高まり、特設コーナーに平積みされるに至り、ついには早くも来日まで
決定。中心メンバーのベン・フォールズのピアノに、ドラム、ベースという、まさ
に初期のエルトン・ジョンの編成でがしがしハード・ポップをきめてくれる。メロ
ディ感覚の中にクイーンの要素も聞き取れる。トッドっぽい手触りも強い。しかし、
そんなふうに昔の要素を感じさせながらも、彼らの音楽は明らかに90年代のロック
ンロールに仕上がっている。ここがいい。音像の種類はまるで違うが、G・ラヴあ
たりに通じるダイナミズムがあるみたい。ガーシュインのフレーズを引用したりす
るピアノの腕前もなかなか。けど、全体のサウンドの要を担っているのはぶいぶい
とグルーヴするベースだ。なんと頼もしいやつらが登場してきた。これだからアメ
リカは面白いね。ちなみにフォールズ君は自らの音楽を“泣き虫のためのパンク”
と表現しているのだとか。ふーむ。


以下、買ったものの特に書くべきことがないCDたち、及び未聴もの(笑)。

■"Labcabincalifornia" The Pharcyde (Delicious Vinyl / Capitol)
■"Words" The Tony Rich Project (LaFace)
■"Livin' Proof" Grouphome (Payday / FFRR)
■"The Ghost Of Tom Joad" Blues Springsteen (Columbia)
■"Guru Presents Illkid Records" Various (Payday / FFRR)
■"Pride" Living Clolur (Epic)



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