1999.2.4

Love Thinketh
No Evil

Peter Himmelman
(Six Degrees/Koch)

 子供向けのものとか、いろいろやってはいたけれど、まともなスタジオ・フル・アルバムとしては5年ぶりくらいになるんじゃないか。どんなことになっているのか、少々不安に思いつつ聞いてみた。

 で、仕上がりはOK。余計な心配でした。これまででもっとも外向きというか、ポップというか、そういう手触りがある。もちろん、基本的な作風は内省的かつシニカルなものなのだけれど、曲によってチェロを使ったり、メロトロン使ったり、ムーグ使ったり、ミュート・トランペット使ったりしつつ、さらに最新のビートにも目配りしたアレンジもほどこされていたりして。悪くない。

 なにやらアウトテイクやライヴを収めた未発表音源集のリリースも予定されているのだとか。久々にアクティヴになるのか? 楽しみ。



Get Down!
The Hi-Fives
(Lookout!)

 97年アタマに出たセカンド・アルバム『And a Whole Lotta You!』が面白くて。けっこう気になっていた連中。去る10月にサード・アルバムを出していたんだそうです。これなんですけどね。

 で、遅ればせながら買ってみました。相変わらずの60年代ブリティシュ・インヴェイジョンに影響を受けた当時のアメリカン・ガレージ・パンク・バンドのりが全開で。要するにナゲッツですが。前のアルバムではソフト・セルの「テインテッド・ラヴ」をそれふうにカヴァーしたり、遊び心を発揮してたけれど、今回はなんと我らが加山雄三の傑作エレキ・インスト「ブラック・サンド・ビーチ」をカヴァー。むちゃくちゃ荒っぽくぶちかましてます。笑った。

 作曲者、コウサク・ドンって書いてあるけど(笑)。ドンじゃねーだろ。



Live At
Luther College

Dave Matthews / Tim Reynolds
(Bama Rags/RCA)

 デイヴ・マシューズって、根本的には嫌いじゃない。ずっと気になる存在だ。ギターもうまいし。でも、なんかバンドでやっていると、どうもジャズ/フュージョン色みたいなものが前面に出ちゃって。個人的には今ひとつ入り込めないまま現在に至っている。

 その点、バンドのセカンド・ギタリスト的な立場で活動をともにしているティム・レイノルズとのアコースティック・デュオによるこの2枚組ライヴ盤は、そんなぼくにもけっこうまっすぐ楽しめた。もちろん、ここでもジャズ色がないわけじゃないけれど、より歌に寄り添う形での二人のインタープレイぶりが生々しく味わえる分、シンガーとして、あるいはソングライターとしてのデイヴ・マシューズの魅力が素直に浮き彫りにされている感じ。まあ、逆に言えば、通常のバンドでの演奏が好きな人には物足りない音なのかもしれないけれど。

 96年のデュオ・ツアーからの音だそうです。客の盛り上がりぶりも聞き手の気分を煽ってくれますわ。



The Best Of
Tom Paxton

Tom Paxton
(Rhino/Elektra)

 64年から71年まで、トム・パクストンがエレクトラに残したライヴも含む7枚のアルバムからセレクトされた代表曲集だ。

 日本のリスナーにとって、この人とかフィル・オクスとかってちょっとわかりにくい存在だったりするよね。そうでもない? 少なくともぼくにとってはそうだった。特に70年代初期、ジェームス・テイラーあたりを筆頭とするシンガー・ソングライターの音楽にどっぷりつかっていた身としては、なんだかこの人とかは地味な感じがして。

 でも、こちらも年齢を重ねるにつれてだんだんわかってきた。要するにストーリーテラーとしての存在感、ね。ウッディ・ガスリー以来、ディランあたりも含めて連綿と流れるアメリカン・フォークの魅力ってのは、この“ストーリーテラー”って部分を抜きにしてはぜったい正当に語ることはできないのだろう。ついサウンドの手触りとかをメインに聞いてしまいがちなわれわれが見逃しがちなポイントだけど。

 なもんだから、今、このアンソロジーで改めてパクストンの歌世界に接してみると、ストリングスやホーンなども導入した68年以降の音よりも、それ以前、ポール・ロスチャイルドのプロデュースのもと、ギターとベースだけのシンプルなバッキングで歌ってた彼の姿にこそ胸が震えたりするわけです。当時のニューヨークのコーヒー・ショップの気分満載……なんだろうな、たぶん、とか思いながら。



It's A Happening
World

The Tokens
(Warner Bros. Japan)

 今回ピック・オヴ・ザ・ウィークに選んだアソシエーションとともに日本独自に再発されたトーケンズのアルバム。ワーナーに残された唯一のアルバムに、残るワーナー音源すべてをぶちこんだ1枚だ。

 この時期の彼らのヒット曲としては、マット・モンローやスティーヴ・ローレンスのヒットとして知られる曲のカヴァー「ポートレイト・オヴ・マイ・ラヴ」と、バリー・マン&シンシア・ワイルのペンによる「イッツ・ア・ハプニング・ワールド」。シングル曲以外のオリジナル・アルバム収録曲のほうには、正直言って少々聞き劣りするものもあるけれど、そのぶんボーナス曲が魅力。個人的には、特に「ザ・ワールド・イズ・フル・オヴ・ワンダフル・シング」とのカップリングで世に出た「サム・ピープル・スリープ」かな。のちにブッダからも出た曲だけど、後半のアカペラが好きでねぇ。ほんと、うれしいCD化です。

 実に柔軟に様々なヴォーカル・スタイルを次々披露しながら、しかし根底にはきっちりとイーストコーストのホワイト・ドゥーワップ出身というアイデンティティを滲ませているトーケンズ。アソシエーションばかりでなく、こっちも再評価よろしく。

 ほんとは“トークンズ”って書くべきなんじゃないかと思うんだけど。今さら無理か(笑)。




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