1999.2.4

Birthday
The Association
(Warner Bros. Japan)


 日本では“ソフト・ロック”と呼ばれてこのところ人気を博している60年代アメリカの洗練されたポップ・ミュージックを代表する存在といえば、アソシエーション。彼らのオリジナル・アルバム群のCD化再発がついに実現した。これが世界初CD化だと言うのだから、信じられない。日本先導による素晴らしい再発だ。各盤ともにボーナス・トラックとしてシングル・ヴァージョンなどを満載しているし。心からうれしい。

 特に68年に出た4枚目の『バースデイ』。これはまじに名盤だ。このアルバム、ナイアガラーの方々にとっても、少なくともタイトルだけはおなじみのものじゃないかな。はっぴいえんど結成以前の若き大滝詠一師匠が、ある日、細野晴臣さんのお宅に向かう途中、工員ふうの少年がアソシエーションの『バースデイ』を持って歩いているのを見かけた。それが鈴木茂さんだった……という、例のエピソードを演出する重要な小道具でありました。

 このエピソードが披露されていたのは、確か75年か76年のライト・ミュージック誌だったと思う。こうしたコメントとともに、大滝師匠お気に入りのアルバムの1枚として本盤がセレクトされていたわけだ。それまで、ぼくにとってアソシエーションは「チェリッシュ」とか「ウィンディ」とか、そういうヒット曲のみで認識していたシングル・オリエンテッドなグループだったのだけれど。この記事に出くわしてアソシエーションのイメージが変わった。そうか、アルバムもいいのか……って感じ。


And Then...
Along Comes
The Associaion

1966

 それから本盤を探しまくって、入手。以降、ぼくにとってもめでたくお気に入りの1枚となったわけでした。

 今回同時にCD化されたのは、66年、才人カート・ベッチャーをプロデューサーに迎えたファースト・アルバム『チェリッシュ(And Then...Along Comes The Association)』、67年にジェリー・イエスターがプロデュースした『ルネッサンス』、同じく67年、名手ボーンズ・ハウがプロデュースした『ウィンディ(Insight Out)』。どのアルバムもアソシエーションならではの清々しいサウンドとクールなハーモニーを堪能できる内容だが、やっぱりアルバムとしての仕上がりが突出しているのは『バースデイ』だ。


Renaissance
1967

 プロデューサー別に彼らの歩みを大ざっぱに振り返ると、まずコーラス・ワークに関して素晴らしい才能を発揮するカート・ベッチャーのもとで制作されたファースト・アルバムで彼らならではのハーモニーに磨きをかけ、ジェリー・イエスターのもとでハーモニーの幅を広げつつ過渡期とも言える少々混乱したセカンド・アルバムを作ったのち、当時タートルズやフィフス・ディメンションの名盤を作り上げていたボーンズ・ハウを起用したサード・アルバムでサウンド面をより充実させ、実にバランスのいいアソシエーション・サウンドを作り上げた、と、そんな感じだろう。


Insight Out
1967

 で、サード・アルバムの体勢をほぼそのまま受け継いだ本盤も、だから同じく実に豊かな内容。アルバム1曲目「カム・オン・イン」から、いきなりみなぎる彼らの自信のようなものに圧倒されてしまう。本盤のあと、アソシエーションはベスト盤をリリースして第一期の活動をとりあえず総括してみせることになるわけだが、そういう意味でもオリジナル・アルバムとしてはこの4枚目こそが初期アソシエーション・サウンドの集大成。洗練されたメロディ・ラインと、持ち前の流麗なハーモニー・ワークと、そしてフォーク・ロック、サイケデリック・ロックなど当時の最先端感覚を絶妙に取り入れたビートのきいたバッキング・サウンドとが一体となった理想的なポップ・アルバムに仕上がっている。

 アソシエーションはこの後も残るオリジナル・アルバム群の再発が予定されているので、ファンはぜひご注目を。


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