ヴィック・チェスナットの新作だ。以前、やはりピック・オブ・ザ・ウィークに取り上げた前作はキャピトルからの初メジャー作だったけれど、今回はキャプリコーンから。ヴィックがメンバーとして参加しているバンド、ブルートがキャプリコーンからアルバムを出していたから、その流れなのかな。
ぼくは前作で初めてこの人のことを知って。すっかり惚れ込んで。インディ時代にまでさかのぼって、今入手できるCDを全部買い込んで。聞きまくりました。すごいソングライターだと思う。ひどく内省的だけれど、自分個人の心の奥へと深く深く入り込んでいくことで、逆にとてつもない感情の広がりのようなものを表現できる人。彼の過去の作品を全部聞き込んでみて、やはり最新作だったキャピトル盤がいちばんすごいなと感じただけに、そんな彼の新作には思い切り期待していた。
でも、今回はジャケットに“フィクション”とはっきり書かれているように、アルバム全編でひとつの物語を綴ったツクリ。らしい。まだあまり歌詞を把握してないので、そんな気がするだけだけど(笑)。バンド名義の流れを受けているのか、サウンド的には前作よりも少し開かれた感触がある。が、やはりヴィックならではの深い深い洞察力のようなものにどの曲も貫かれていて、ぐいぐいと引き込まれていく。そしてぼくたちは、この“フィクション”の中にも、まぎれもなくヴィック個人の様々な思いが渦巻いていることを知るのだ。マイケル・スタイプあたりと肩を並べるすぐれた新世代のストーリーテラーとして、その底力を発揮した一枚ってところだろう。
エミルー・ハリスの客演もグー。
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