1998.10.29

Live 1966:
The "Royal Albert Hall"
Concert

Bob Dylan
(Columbia)


 これ、過去のライヴ音源の発掘なのだけれど、内容的にはもしかすると、ディランの全アルバム中トップ5に入る充実作なんじゃないかな。すんごい気迫。すんごい緊張感。あちこちの雑誌に紹介記事を書いたので、その中から『ミュージック・マガジン』誌の“コンパクト・ディスカバリー”のために書いたものを転載しておきましょう。


for Music Magazine, Oct. 1998

 出るぞ出るぞと、確か95年ごろから盛り上がっていたボブ・ディランの『ロイヤル・アルバート・ホール』がついに公式リリースされる。

 ご存じ、ブートレッグでおなじみ、66年のイギリス公演の模様を収めた2枚組ライヴ。アコースティックなフォーク・ソングから、大胆にエレキ・ギターを導入したフォーク・ロックへと本格的に移行しようとしていた時期のパフォーマンスだけに、ラストに収められた「ライク・ア・ローリング・ストーン」のイントロ部分に、“ユダ!”と叫ぶ観客の声や、それに対して“I don't believe you...You are liar!”と切り返すディランの声が記録されており、“ジュダーズ・ライヴ”と呼ばれたりすることもある例のブツだ。実際にはマンチェスターのフリー・トレード・センターで収録されたものだが、ブート時代のタイトルをそのまま使っての堂々たるリリースとあいなった。“ブートレッグ・シリーズ”のVOL4と銘打たれている。

 ディスク1にはフォーク・ギターによる弾き語りを、ディスク2には、のちにザ・バンドと名前を変えることになるザ・ホークスの面々(レヴォン・ヘルムを除く)をバックに従えての演奏をそれぞれ収録。緊迫した雰囲気の中で、しかし自分たちが信じるフォーク・ロックを見事に演じきるディランとホークスの姿が美しい。ぐいぐい粘り気味に歌いまくる若き日のディランの鋭さと勢いに圧倒される。実はこのライヴの公式リリースが決定した後、ソニーがリミックス/リマスターしたDATがまたまたブート市場に出回り、数年前から何種類かの盤が流通していた。特に97年春ごろ、『Guitars Kissing And The Contemporary Fix』なるタイトルを冠してリリースされた盤のエンハンスト・ヴァージョンは、まあ、音質も含めてほぼ今回の公式盤とそっくりそのまま。熱心なファンはすでに入手していることと思うが。やはりここは正規盤で楽しみましょう。全員、買い直しだ。

 ところで、このライヴ、ブート時代には楽曲自体はマンチェスターで、観客との緊迫感みなぎるやりとりは後日ロイヤル・アルバート・ホールでそれぞれ収録されたものだとも言われていたけど、この盤にもそのやりとり、「ライク・ア・ローリング・ストーン」のイントロにかぶって入ってるよね。てことは、どっちもマンチェスターでの出来事だったってこと?


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