1998.5.5

Tear Off!
The Box Tops
(Last Call)

 フランスのレーベルから突如リリースされたボックス・トップスの新作だ。もちろん、アレックス・チルトン入りのオリジナル・ラインアップ! もちろんメンフィス録音!

 パーシー・スレッジの「イット・ティアーズ・ミー・アップ」、サム・クックの「スーズ・ミー」、ロイ・ヘッドの「トリート・ハー・ライト」、ライチャス・ブラザーズの「リトル・ラテン・ループ・ルー」、ボビー・ウーマックの「アイム・イン・ラヴ」、ジェントリーズの「キープ・オン・ダンシング」、エディ・フロイドの「ビッグ・バード」、コ・コ・テイラーの「ワング・ダング・ドゥードル」などなど。ごきげんな選曲で聞かせてくれる。曲によってメンフィス・ホーンズも客演している。

 アレックス・チルトンもオリジナル・ボックス・トップス時代よりも渋く成熟した歌声を披露。「ザ・レター」のリメイク版なんか、なかなかの出来だ。あんまり期待しないで買っただけに、なんだか得した気分っす。ビリー・リー・ライリーの曲とかもやってるしなぁ。いかしてるぜっ。



Push The Button
Money Mark
(Mo Wax)

for Music Magazine, May 1998

 2年ぶり? 3年ぶり? かなり待たされたものの、ともあれ、とてつもなくかっこいいセカンド・アルバムの登場だ。宅録っぽいチープな音像のもと、60年代ソウル・ジャズのロー・ファイ解釈とでもいうべきファンキーかつコズミックな世界を作り上げてみせた傑作ファーストの手触りも随所に残しつつ、しかしより外に開かれた仕上がり。90年代のドナルド・フェイゲンと評した人もいるようだけれど、なるほど、ジャズやブルース、R&Bなどを独自のフィルターを通して再構築するアイデア豊かな手腕には、まじ、目を見張らされる。今回はヴォーカルも大きくフィーチャーされ、これがまたいい味。この人の場合、たとえミュージック・コンクレートふうに展開するインストものであっても、楽曲自体の構成にせよ、アレンジにせよ、その根底には深い“歌心”が流れているのが最大の魅力なわけで。そうした持ち味が存分に味わえる。

 マニー・マーク流ヘヴィ・エレクトロ・ファンクもある。パワー・ポップふうの胸キュン・メロディもある。クイーカーの代わりにムーグを鳴らしたような短いポサノヴァものもある。アーチー・ベル&ザ・ドレルズのドラムン・ベース展開とでも言いたくなるような、コンパクトながら破壊力に満ちた曲もある。深いな、この人は。日系ハワイアンの父とチカーノ系の母。デトロイト生まれ。様々なキーワードがとてつもなく魅惑的に渦巻く。



Watkins Bold As Love
Geraint Watkins
(Bluefive)

 ニック・ロウやデイヴ・エドマンズのバック・バンドの一員としてもおなじみのキーボード・プレイヤー、初ソロ・アルバムだ。彼を含むスワンプ系バンド、バラム・アリゲイターズのアルバムも何枚か出ているけれど、さすがソロ盤だけあって、よりリラックスした仕上がり。

 ニューオリンズものやら、グッド・タイム・ジャズもの、ロックンロールもの、R&Bもの、マージー・ビートふうの切ないメロディもの、カントリーものなどを、ひょうひょうとプレイ。ニック・ロウも全編ベースでバックアップしている。

 ほのぼのしますよ。



Cornerstone
Richard X. Heyman
(Turn-Up)

 10年近く前、確かサイアーからアルバムをリリースしていたニューヨークのパワー・ポップ系シンガー・ソングライター。久々の新作だ。

 昔の音をよく覚えていないのだけれど、だいぶ熟成したというか、タイトに持ち前の甘いメロディ・センスを活かしているというか、そういう印象。エルヴィス・コステロ、トム・ペティ、ジェイソン・フォークナー、マーシャル・クレンショー、トミー・キーンといった名前にぐっときてしまいがちな人には、たまらん1枚でしょう。古くからの仲間、ナンシー・レイ、アンディ・レズニック、そしてフリーディ・ジョンストンともやっていたアンディ・バートンなどがバックアップ。



Little Honda
Yo La Tengo
(Matador)

 企画ものカヴァーEP。

 タイトル曲はもちろん、ビーチ・ボーイズ。そのほか、ウィリアム・デヴォーン、サンディ・デニー、キンクス、ガン・クラブ、グラム・パーソンズといった連中の曲を独特の腰くだけロックで見事にリメイクしてみせる。特にアル・パーキンスのペダル・スティールを交えてカヴァーされたグラム・パーソンズの「ハイ・マッチ・アイヴ・ライド」とか、ちょっと刺激的です。

 隠れトラックとして、「ウィー・アー・ザ・チャンピオン」もやってます。ライヴです。



Anthology
The Monkees
(Rhino)

 モンキーズのベスト盤ってのは、本当にたくさん出ていて。ライノからも何種類か、ボックス・セットも含めてリリースされているけれど。充実度、お買い得度など、コスト・パフォーマンス的に最良と思われる2枚組の登場だ。

 シングル・ヴァージョン、ライヴ・ヴァージョン、TVヴァージョンなどを盛り込みつつの全50曲。ブックレットには1曲ごとの詳細なミュージシャン・クレジットも載っている。ブライアン・ウィルソンが「ブレイク・アウェイ」を作るときモンキーズを意識したって話とか、様々なミュージシャンからのコメントもある。当時のキャラクター・グッズをちりばめたレイアウトも楽しい。

 と、そんなわけで、これからモンキーズのベストを何か、とりあえずゲットしておくかと思っている方には、間違いなくこいつがおすすめです。ジャケットの写真の粒子が粗いのは、なんと飛び出す画像になっているからなのでした。




[ Home | Pick Of The Week | Kenta's Review ]
[ Features | What's Up Archives ]
[ Kenta's Chart | Fav Links | e-mail]


Kenta's
Nothing But Pop!

To report problems with this site or
to comment on the content of this site:
e-mail kenta@st.rim.or.jp


Copyright ©1998 Kenta Hagiwara