1998.1.23

Wonder-Wear
Boy Wonder
(Cherrydisc)
 去年の9月くらいに出た盤だそうで。

 知らなかったんだけど。12月に国内盤がリリースされたのをきっかけに知って、面白そうなので輸入盤を買ってきました(笑)。ややこしい。

 しかし、こりゃごきげんなガーリィ・パワー・ポップだねー。ビーハイヴ調の紅一点、ギター&ヴォーカルのポーラ・ケリー嬢を中心とするボストンの4人組のデビュー・アルバム。曲も、1分台が2曲、2分台が6曲、3分台が6曲という全14曲で。時にエルヴィス・コステロみたいだったり、時にブロンディみたいだったり、時にナックみたいだったり、時にロネッツみたいだったり、時にマーサ&ザ・ヴァンデラスみたいだったり。

 まあ、60年代ガール・グループ・ミーツ・ギター・ポップといいますか。コンセプトとしてはずいぶんわかりやすいバンドではあるけれど、そこそこいい曲もあったりして、あなどれない。ポーラちゃんの声もかわいいっす。ジャングリィでチーズィで……って、何言ってんだか、俺。


Money, Power
& Respect

The Lox
(Bad Boy)
 大当たりしているメイスに続いて、またまた登場、パフ・ダディがらみのザ・ロックスのデビュー・アルバムだ。パフィはゲスト参加、プロデュース含め、ここでも大活躍。また大儲けしようってんだね。なんでも、パフィはレストラン事業にも乗り出してるんだってね。映画にも手を出すみたいだし。すごいね。ヒップホップ界のビル・ゲイツってとこでしょうかね。

 つーわけで、マイクロソフトの製品同様(笑)、とりあえず間違いのない1枚。パフィが作った現在のヒップホップ市場における親和性は当然ながらばっちりだ。ルー・ドナルドソンのフレーズをループさせたオケとか、むちゃかっこいいのもあるし。なーんかなぁ……と思いながらも、やっぱりよくできてるからインターネット・エクスプローラ使っちゃうのと同じ心境で、けっこう愛聴してます(笑)。


Dig My Mood
Nick Lowe
(Demon)
 4年ぶりの新作。アルバム・タイトルから匂い立っているように、今回はぐっと渋いミディアム〜バラード集だ。

 60年代のエルヴィス・プレスリーのバラード・アルバムあたりにも通じる、こう、すっと力を抜いた歌い回しが随所に見られて。この人のロックンロール・センスの確かさを思い知らせてくれる。日本だと大滝詠一師匠がさすがにこの味を会得しているけれど。よっぽどエルヴィス好きでないと、この感じはなかなか出せるもんじゃないし、聞いてわかるもんでもないからね。そうそう、ニルソンあたりの手触りもあるか。

 アップテンポものは一切ないけれど、ジョニー・ティロットソンやらロイ・オービソンっぽい古きよき60年代アメリカン・カントリー・ポップ系オールディーズの味と、マージー・ビート系の味とが絶妙にクロスする仕上がりで。そこにジャズのニュアンスも加わった、まあ、大人のアルバムだね。

 アイヴォリー・ジョー・ハンターのカヴァーをしているところなんかも、エルヴィスと同じセンスだなぁ。


100 Year Thing
Chris Stills
(Atlantic)
 輸入盤屋さんで、すっかり話題騒然。ザ・ホーボー・キング・バンドさんたちも大のお気に入り盤だとか。スティーヴン・スティルス&ヴェロニク・サンソンの間に生まれた息子さん、満を持してのデビューだ。

 プロデュースをしているのが、これまたグリン・ジョンズの息子だとかで。いやー、ポップ・シーンも見事なまでに世代変わりってことだね。で、音のほうはといえば、これがジュリアン・レノン並みというか(笑)。親父さんの往年のサウンドを見事なまでに自分なりに消化した仕上がり。似てるよぉ。似てるけど、やっぱり今どきの若者ならではのオルタナ感覚なんかもうまい具合に混じり合っていて。

 考えてみりゃ、近ごろのオルタナ感覚と70年代アメリカン・ロックの感覚にはもともと奇妙な共通項があるわけで。それを体現するには絶好の個性ってところだろうか。ボブ・ディランとウォールフラワーズの組み合わせにも近い、うれしい二世代同居感覚です。

 ギターもうまい。血は争えない。親父さんの「4+20」を思わせるオープンDチューニングとか使ってたりするしさ。マナサスみたいなアレンジもあるし。まあ、さすがに曲によってはさすがに集中力を欠いているようなところもあって、ちょい残念だけれど。今後に期待しましょう。ジュリアン・レノンみたいに消えてなくなるなよ。


Another Stoney Evening
Crosby-Nash
(Grateful Dead Records)
 Sに続いてはCとN(笑)。スティルスが登場したので、ちょっとむりやりデイヴィッド・クロスビー&グラハム・ナッシュも登場させちゃいましょう。

 名作ブートレグの誉れも高き『ア・ヴェリー・ストーニー・イヴニング』が収録された1971年のデュオ・コンサートの模様。最新リミックスでついに公式リリースが実現したわけだ。「ウドゥン・シップス」「デジャ・ヴ」「ティーチ・ユア・チルドレン」などCSN関係の曲も含みつつ、実にリラックスした雰囲気の中で二人の代表曲が次々と披露される。クロスビーが“地球上でもっともルーズなライヴ”と表現した当夜の様子が、いい感じで追体験できる。

 このデュオでの最大のヒット「サウスバウンド・トレイン」はホントいい曲だわ。


Dangerous Place
Duke Robillard
(Pointblank)
 元ルームフル・オヴ・ブルース、現ファビュラス・サンダーバーズのギター&ヴォーカル、デューク・ロビラードの新作ソロだ。これも実は出たのは去年の中頃だったみたい。出たことさえ知らずに、ほぼ半年遅れで入手しました。

 相変わらずホーン・セクションを従えてごきげんにジャンプするブルース/R&Bを聞かせてくれる。もう、それ以上でもそれ以下でもないアルバム。彼が在籍していた70年代のルームフル・オヴ・ブルースが好きだった人なら嫌いなはずもない1枚です。

 いかすぜっ。あーんど、ホームページ発見!


Slant 6 Mind
Greg Brown
(Red House)
 これもちょっと遅れて入手した1枚。去年の10月ごろのリリースです。

 アメリカのフォーク/カントリー系スモークハウスの雰囲気をぷんぷんたたえたシンガー・ソングライターの新作。多くのアメリカのシンガー・ソングライターたちが、意識的にせよ、無意識のうちにせよ、常に立ち向かわざるをえない“アメリカの神話”の世界に、以前よりも深く踏み込んだ仕上がりになっているようだ。

 かなりまじなアプローチだけれど、ブックレットについている歌詞眺めながら聞いてはじめてぐっとくるタイプのものかも。そういうの好きな人にはよろしいか、と。


60's Girl Groups
Various Artists
(Warner)
 ウルトラ3あたりでよく見かける(笑)60年代ガール・グループもののオムニバスのひとつですが。ワーナーの“ブラック・ミュージック・オール・スクール”シリーズからのリリースというのが、ちょっといい感じ。

 といっても黒人グループばかりじゃなくて。ハニーズ、レヴロンズといった白人ガール・グループも含めてのコンピレーション。ダーリーン・ラヴが在籍していたことでも知られるブロッサムズをはじめ、アポロズ、ロイヤレッツ、スリー・ディグリーズ、クッキーズ、パールズ、シフォンズ、ドールズ、シュガー&スパイスといったラインアップ。62年から68年までにワーナー、リプリーズ、ロマといったレーベルに残された音源をあれこれ収録している。けっこう隠れた名曲ばかり。

 ブライアン・ウィルソン作のハニーズの「ヒーズ・ア・ドール」とか、バリー・マン&シンシア・ウェイル作のブロッサムズの「グッド・グッド・ラヴィン」がいい音で楽しめるのはうれしい。その他にも、アシュフォード&シンプソン、リチャード・バレット、ヴァン・マッコイなどなど、当時の有能なソングライターたちの力量も楽しめる。



[ Home | Pick Of The Week | Kenta's Review ]
[ Features | What's Up Archives ]
[ Kenta's Chart | Fav Links | e-mail]


Kenta's
Nothing But Pop!

To report problems with this site or
to comment on the content of this site:
e-mail kenta@st.rim.or.jp


Copyright ©1998 Kenta Hagiwara