1997.11.17

Lovers Knot
Jeb Loy Nichols
(Capitol)
 カサンドラ・ウィルソンや k.d.ラングとの仕事で知られるクレイグ・ストリートがプロデュース、メデスキー・マーティン&ウッドのジョン・メデスキーがハモンド&エレピ、タックヘッドやリヴィング・カラーでおなじみのダグ・ウィンビッシュがベース、イギー・ポップやルー・リードの縁の下の力持ちであるダギー・ボウンとジェリー・マロッタらがドラム、そしてジャズ・パッセンジャーズがホーン……と、なかなか刺激的なバックアップを受けたシンガー・ソングライターの、たぶんメジャー・デビュー盤。

 R&B、フォーク、カントリー、レゲエなどをごった煮にしながら、ザ・バンドあたりにも通じるソウルフルなサウンドを作り上げている。ニコルスさんの内向的なつぶやき声にも不思議な吸引力があって。けっこうハマります。画家、作家としても活動しながら、ネネ・チェリーとかとクラブ遊びしてた人みたい。

 なーんか、70年代にベアズヴィルから出た、ちょっとブルー・アイド・ソウルっぽいシンガー・ソングライターの幻の名盤聞いてるみたいな気分になりました、私。


National Chain
White Hassle
(Matador)
 レイルロード・ジャークのメンバー2人によるサイド・プロジェクト。マーセラス・ホールがギターとハーモニカを弾きながら歌って、デイヴ・ヴァレンカがバケツとかビンとか(笑)を叩きながら歌う、と。すごいね、こりゃ。

 むちゃくちゃプリミティヴかつハイブリッドなフォーク・ブルースってとこでしょうか。オリジナル曲以外に、ハンク・ウィリアムスの「泣きたいほどの淋しさだ」とかレイ・チャールズの「リーヴ・マイ・ウーマン・アローン」とかもカヴァーしてます。


10 Cent Wings
Jonatha Brooke
(Refuge/MCA)
 ザ・ストーリーを解散後、2枚目のソロ・アルバム。

 ちょっぴりジャズの香りが入ったフォーキーもの……って手触りは変わらず。アレンジが若干、ミッチェル・フルーム寄りというか、まあ、最近のスザンヌ・ヴェガ系のグルーミーな肌触りになっているところもあるけど(笑)、こちらも旦那さんのアレン・マレットがプロデュース/アレンジを担当。間違いなく仮想敵はヴェガ&フルームなんだろうね。

 ただ、スザンヌ・ヴェガよりも直截な歌い口がジョナサさんの魅力。力のあるアーティストだと思う。ソングライターとしても魅力的ではある。ミックスをボブ・クリアマウンテンが担当しているのが、なんだか懐かしいね。


Slip Stitch and Pass
Phish
(Elektra)
 またライヴかよ? と思ったけど。

 去年出た『ビリー・ブリージズ』を間に挟んで、またまたライヴ盤が登場したフィッシュ。去年の春、ハンブルクのライヴ・クラブで収録された1枚だ。さすが“新世代のグレートフル・デッド”だね。

 詳しくは、今月出る『ミュージック・マガジン』のアルバム・ピックアップに書いたのでそちらを参照してください。前ライヴ盤に比べてよりスロウに、よりファンキーに、より粘っこく変化したグルーヴがかっこいいです。トーキング・ヘッズやZZトップのカヴァーもあり。


Tibetan Freedom
Concert

Various Artists
(Grand Royal/Capitol)
 今年の6月、休暇でハワイに行ったとき、MTVを通して見たチベット支援コンサートのライヴ盤。ビースティ・ボーイズを筆頭に、ジョン・スペンサー、パティ・スミス、レディオヘッド、ア・トライブ・コールド・クエスト、ソニック・ユース、ポルノ・フォー・パイロス、フー・ファイターズ、KRS1、ビズ・マーキー、マイティ・マイティ・ボストーンズ、ペイヴメント、ブラー、アラニス・モリセット、ビョークなどが2日にわたって出演して、それぞれ熱演を繰り広げていたけれど。その模様を2枚のCDにダイジェストし、さらにベックやチボ・マット、フージーズ、デ・ラ・ソウル、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンが出演した去年の同コンサートの模様をエンハンスト仕様のCD3にぶちこんだ、ボリュームたっぷりの3枚組だ。

 ぼくが見た中ではアラニスのアンプラグド・セットがむちゃくちゃかっこよかったんだけど、各アーティスト、メドレーも含めてそれぞれ1トラックずつしか入っていないのが残念。全部聞きてーなぁ。


LSG
Levert.Sweat.Gill
(EastWest/Elektra)
 すんげえ組み合わせ。ジェラルド・リヴァート、キース・スウェット、ジョニー・ギルによるスーパー・ヴォーカル・グループ。曲によってはフェイス・エヴァンス、SWVのココ、ミッシー・エリオット、LLクールJ、バスタ・ライムズ、リル・キムなども参加して、豪華に、しかし、まあ可もなく不可もなく、心地よいコンテンポラリーR&Bを聞かせてくれる。

 ヴォーカル版のザ・ファームってとこでしょうか。いや、悪くないですよ。発見はないけど、ぼーっと聞くには最適な1枚。ボーイズIIメンみたいにヴォーカルも“アゥアゥ”してないし(笑)。


Deuces Wild
B. B. King
(MCA)
 ヴァン・モリソン、トレイシー・チャップマン、エリック・クラプトン、ミック・ハックネル、ボニー・レイット、ディアンジェロ、ジュールズ・ホーランド、ドクター・ジョン、マーティ・スチュワート、ディオンヌ・ワーウィック、ポール・キャラック、ローリング・ストーンズ、ズッケーロ、ジョー・コッカー、ヘヴィ・D、デイヴ・ギルモア、ウィリー・ネルソン。

 すごいね。脈絡ないね。カントリーからラップからカンツォーネからポップスからソウルからロックから……。とんでもない振り幅の中から選ばれたシンガー/ギタリスト17組を相手に、御大B・Bが貫禄たっぷりのデュエットを聞かせる1枚だ。ニューヨーク、ハリウッド、ニューオリンズ、ロンドンなどを転戦しながらのレコーディングだったそうだけど、とにかく参加者みんながB・Bへの敬意を全面に押し立て、ちょっと控えめに共演しているのがたまらない。

 さほど意外な企画盤ではないものの、好感度はばっちり。



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